容疑者 室井慎次 (2005) »掲示板

☆なしの理由

2005/09/04 by 理屈屋

容疑者 室井慎次

「この作品のどこがそんなに…」というご意見があるようなので、その理由を探るべく、この作品のテーマと作りを振り返ってみます。
まず容疑者室井慎次という物語は、大きく3つのパーツから出来ていると思います。
1つめが、殺人事件で、被疑者の巡査が取調べ中に死亡しますが捜査続行になります。
2つめが、室井に対する公務員特別暴行陵虐罪の共謀共同正犯事件で、主人公の室井が逮捕されます。
3つめが、上の2つ以外の全部のエピソードです。

で、この作品のメインとなるべきなのが2番で、室井が自らにかけられた「公務員特別暴行陵虐罪」という犯罪の嫌疑を晴らすというところにある、というのは異論がないだろうと思います。つまり、現場の刑事が被疑者に暴行・拷問を行って死亡させ、それが室井の指示・命令(共謀)によると疑われている、要するに室井の信念「現場を信頼し、責任は俺が取る」が真っ向から否定される危機を迎えているわけです。
ですからこれに対して、どうやって室井が自分の信念の正しさを主張・立証するか、自らと現場の刑事達の両方の無罪を証明するために奔走努力するか、というのが話の中心でなければならないはずです。
テーマも本来ここにあるべきです。製作者もそう考えてこのパーツを入れたと思われます。
にもかかわらず、メインであるはずの公務員〜罪の話は中身がほぼ完全にカラッポです。検事の取調べがあった後は何も起こらず、誰も何もしないのに、なぜかラストで「不起訴になりました」で終わっています。
いかに「誰も」「何も」していないか、例を挙げて全部書くことも出来ますが、是非、記憶をたどって確認してみて下さい。きっと驚きます。
(余談ですが、室井の不起訴は当たり前なんです、それほどひどい不当逮捕なんですよ、あれは。法律監修のデタラメさを激しく物語ってます。)
次に、殺人事件についてはどうか見てみましょう。いやはや、こちらも負けないくらいカラッポでした。捜査続行が決定した後、誰も何もしない(やろうとしたのは認めますが、それはこちらのパーツでなく敵弁護士の妨害のエピソードの方に入っちゃいます)のに、突然ラストで公安警察が密かに捜査していたことになってて、唐突に解決してしまいます。口あんぐり、でした。これも記憶をたどってご確認下さい。
結局、以上のことにより消去法で、この作品は、テーマとは全然関係ない、なくてもどうって事のないエピソードで満たされているということになっております。
警視庁と警察庁の対立、インチキ弁護士の理由不明の捜査妨害や嫌がらせや誣告(ブコク:無実の人を無実と知りながら刑事告発する犯罪)、駆出し女弁護士の警察嫌いとその過去、室井の過去の恋人の話といったところでしょうか?
これらはハッキリいって全部なくても話が成立します。つまり必然性も必要性も全くなく詰め込まれてます。
これも記憶を辿ってご確認下さい。

以上、テーマとプロットという点から、この作品が何から何までからっきしカラッポであることを確認致しましたが、それ以外にも、法律監修がデタラメであるとか、人物設定が一貫してないとか、人物の演出が幼稚であるとか、観客をバカにして「この程度に作っとけ」という声が聞こえてきそうな程の、手抜き・怠惰が満載で、積極的に評価できる点がほとんど見当たりません。
長くなるので具体例を挙げずに、記憶を辿って下さいでごまかしてますが、リクエストがあれば具体例を別の文章にして挙げたいと思っています。
役者さんや音楽を担当した方など、罪がないと思われる方々には誠に申し訳ないと思いますが、作品全体としては0点以上になりえるものではございません。
私個人的には、怒りを感じるレベルです。こういう作品を今どき見かけるとは、全く思いがけないことでした。

 

  • リクエストします

    2005/09/04 by 未登録ユーザあまのじゃく

    私も同感です。
    何と言っていいのか、残尿感のようなものすごくイヤ〜な気分でした。
    どこがどう、というようにはっきりと言えないので、余計に悔しいです。
    ゼヒ文章にしていただきたいです。

  • リクエストにお応えしましょう(長くてゴメンナサイ)

    2005/09/05 by 理屈屋

    あまのじゃくさん、コメントありがとうございます。

    リクエストされてしまいましたので、長い文章の上、意図として非建設的な内容なのですが、止むを得ません、具体例を挙げさせていただきます。
    何かをしてない具体例って、言い方がおかしいんですが、本来するべきことをせずに、こんな変な事は一生懸命にしてますよって具体例ですね、それを挙げます。

    1殺人事件について
    まず釈放後の室井が、この殺人事件の捜査を指揮する意味は全くない、ということを強調しなければなりません。
    なぜなら、この殺人事件の犯人を逮捕しても、室井が暴行・拷問に共謀していないという証明には全然ならないばかりでなく、むしろ真犯人の逮捕によって室井が死なせたとされる被疑者の巡査の殺人について無実が証明されてしまい、室井の罪はより重大になってしまいます。
    だから室井は釈放後には、自らにかけられた嫌疑を晴らすために、弁護士と共に証拠集めや証人捜しや起訴された場合の裁判対策をするか、もしくは自らの事件について単身独自の捜査をすべきであって、自分の首を絞めることになる殺人事件の捜査を指揮するのはおかしいのです。また、室井の逮捕後、捜査が中止になったかどうか作品中では判然としませんが、彼はこの事件の監理官では既になく、事件に手を出すのは越権行為の捜査妨害ですらあり、優秀な警察官であるはずの室井の人物像とも矛盾するところです。
    とにかく、室井が何を考えているのかさっぱり理解できないとは言え、始めてしまった捜査がどんなものだったか振り返ります。
    まず、室井は殺人現場に行って殴られます(殴った奴はなぜ殴ったんでしょう?自分が殺人の真犯人だとワザワザ言ってるようなもんですね。それに室井が警察官だとどうして分かったのかな?)。
    その後彼は、私的捜査会議を開き、参考人の女性の存在の報告を受けます。
    (刑事達は少しですが捜査を進めてましたね)
    次に、その参考人の女性を尾行・尋問します。
    ですが、ここで敵弁護士の妨害にあい、捜査は頓挫し、ラストまで長い空白が生じます。
    そしてラストで、室井が意を決して参考人の尋問を再度行いますが、結局上手く行きません。
    しかし、ここで突然、公安警察が誰にも(観客にも)知られないところで密かにこの事件を捜査していたことが明かされ、唐突に真相が判明して女性も自白し、急転直下事件が解決します。
    以上が事件の顛末です。文章にしてせいぜい10行、映像で表現するのに25分と言った程度の内容だと思います。
    余談ですが、ラストの尋問の舞台は新宿北署のはずなのに、なぜか擬似裁判になっているのが、笑えます。そしてその中で室井が参考人の女性に謝っているのが意味不明でした。その直後に彼女が殺人を自供したのを見て、室井の頭に金タライが落ちて、全員がコケるんじゃないかと思ってしまいました。
    とにかく、この殺人事件については、もともと手を出すべきでないものを、なぜか解決にこだわって手を出し、何かをしようとしたけれども、結局本来それをするべき者が何もしないのに突然解決した、という事になっていると言えるでしょう。

    2公務員特別暴行陵虐罪の共謀共同正犯事件について
    前にも書きました通り、この事件がこの物語の骨子だと思っています。
    ですから、ここに最も力を入れて描写してもらいたいのですが、なぜかこっちの方が殺人事件の話より更に空っぽです。
    まず、室井のしたことから。
    室井は検事の取調べで「現場は…、現場では…。」と言っただけで、その後はこの事件に関することを、文字どおり全く何もしません。本当に何もしていません。敢えて言うなら最後に不起訴になったと「聞いた」のが、唯一の行為でしょう。
    この人は自分が起訴されそうだと分かっているのかな?と心配になりました。弁護士に「頼みます」とは言ったものの「自分は無実だ」とか「やってない」とさえも言ってなかったと思います。リアリティとかいうレベルでない滅茶苦茶さを感じました。
    次に検察官。
    存在感がそもそも薄いのでどうでも良いのですが、無理な逮捕をしたわりには、通り一遍の取調べをしただけで、最終的に不起訴処分を決め、特に起訴するための証拠固め等まったく何もしていません。圧力をかけられて釈放させられたときも、別に抵抗するでもなく怒るでもなく、やる気なさそうに釈放しています。
    本気で起訴する気があるとはとても思えない態度でした。
    なぜか運良く、警察と検察の間に摩擦が生じないで済んだようですが、警察庁は警視庁との対立で手一杯で、検察庁に抗議の電話の一本も入れなかったのでしょうか?佐野史郎さんの演じた検察官が、クビを賭けるつもりもなく行ったであろう警察幹部の不当逮捕を起訴に持って行けず、今ごろ僻地に飛ばされていない事をお祈り申し上げます。
    最後に、田中麗奈弁護人。
    彼女には驚きました。彼女は「この事件」の室井の弁護人ですよね。なのに彼女はこの事件のために必要な事を、ま〜〜〜ったくしないんですよ。そう言うと「ちょっと待て」と思う人もいるかもしれませんが、彼女が「この事件の」弁護人としてすべき事はですね、何をおいてもまず、室井本人に会って「やったかどうか聞く事(罪状認否)」です。これによってその後やるべき事の方向が全然変わってしまうからです。
    そして次にやるべき事は新宿北署の刑事達にあって、共謀の事実があったかを確認する事です。そして暴行・拷問をしたのかを詰問することです。いずれか片方の事実がなければ、室井の犯罪は成立しません。もし裁判になっても楽勝できるはずです。
    まずこの2つをやることで弁護方針や主張立証すべき内容がある程度見えるでしょうから、その次には予定する主張・立証のための証拠集め・証人捜しをし、判例を当って(なぜかこれだけ少しやってましたね)裁判の準備万端となるはずです。
    それらが彼女の「仕事」のはずなんですが、なぜか彼女はそれらをほとんど何もしてません。もし起訴され裁判になっていたら彼女は何を主張立証するつもりだったのでしょう?大変な弁護過誤事件になってしまいそうです。
    ただし、運良く不起訴になり、彼女は命拾いをしました。彼女が「この事件」で果したのは最初に接見に行った事と最後に「不起訴になりました」と室井に告げたことだけだと言っても過言ではないかも知れません。
    ところで、彼女は意外とあちこちに行っていて、何もしてないなんてトンデモナイと怒られそうですが、怒られないためにその点に言及しましょう。
    まず、沖縄に行った事ですが、彼女は被害者の巡査の遺族である母親に告発の理由を聞きに行きました。如何にも弁護士という感じですが、実はこれはほとんど意味がありません。検事が告発を受けて逮捕状をとり、既に逮捕までしてしまっている(これがそもそもどうかとは思いますが)ので、もし告発者が告発を取下げたとしても、刑事事件はそのまま継続します。告発取下げはその時期を既に逸しています。裁判になった時に、告発者の真意を明らかにし情状を訴えるためなら少しは役に立つかも知れませんが、この時点で告発者に会うのは全く無意味です。しかも告発の取下げをお願いするわけでも、もし裁判になったら証人として出廷してくれるようにお願いするわけでもなく帰ってしまうのは、依頼人の金で沖縄旅行に行ったのか?(旅費・宿泊費・日当を依頼人に請求できますからね)と勘ぐってしまいます。
    東北へ行ったのも「この事件」には無関係です。預かった日記は公務員〜罪を覆す証拠力は皆無です。
    彼女は室井の友達ですか?彼の無実を信じて応援している素人ですか?
    彼女は「この事件」の「弁護」のために「雇われた」プロの弁護士のはずです。駆け出しにしてもお粗末過ぎました。

    お粗末と言えば、この事件の結末もまた、お粗末極まりないものです。
    室井に対する公務員〜罪を否定するような新たな事実や証拠・証人は出て来ていません。つまり状況は全く変わってない(殺人事件の解決によりむしろ立場は悪くなっている)のに、逮捕状を取って身柄まで押さえた検察官は、なぜか突然気が変わったのかのように起訴を見送ってしまいました。被疑者に対する暴行・拷問など黙認(もしくは積極的に命令)するような監理官は絶対許せん!という正義感から逮捕したわけではなかったようです。
    起訴する気もないのに、何で逮捕までしたんだろ?とっても大きな謎の残る結末でした。
    室井の事件をまとめます。
    室井慎次は公務員特別暴行凌虐罪の共謀共同正犯で逮捕されます。
    検察官により取調べが行われ、弁護士が雇われて接見します。
    その後この事件については誰も何もせず、最後に検察官は不起訴を決めました。
    以上、メインであるはずの、この室井の事件を表すのに文章で3行、映像で15分といったところでしょうか?

    してみると、殺人事件と室井の事件は、締めて文章で15行程度、映像で40分くらいのものと思われます。この作品は130分ほどの長さなので、残り90分がその他のエピソードということになりますね。そうなるとむしろそっちの方が描きたかったことなのかな?という感じすらしますが、それらは飽くまでも、本筋に付随した権力闘争の話だったり、人物描写を補強するためのエピソードだったりで、明らかに傍流でした。

    以上、私の元発言の1番目と2番目の事件について、如何に「誰も」「何も」していないかを見てきましたが、その他となる数々のエピソードの中にも、おかしな事がたくさん見られますし、全編に渡る法律監修やら人物設定やら演出などのおかしさも、具体例を挙げたいところです。
    が、文章にだんだん怒りが込もってきてしまうのを感じ始めましたし、不毛な内容が長くなり過ぎましたので、ここでいったん止めにします。
    強い要望でもありましたら、それらについては、いずれ書くかもしれません。

    最後まで全部お読み下さいました方には、御礼申し上げます。お疲れ様でした。

  • 恥ずかしながら「特別」に訂正

    2005/09/08 by 理屈屋

    > 室井に対する公務員特別暴行陵虐罪の
    「特別公務員暴行陵虐罪」ですね。
    今日に至るまで、勘違いして覚えていました。
    きゃーッ、こっ恥かしい!

  • なるほど

    2005/09/27 by 未登録ユーザふるふる

    テレビ放送の第一回からずっと踊るシリーズを見続けているので、容疑者 室井慎次も観なければっと思っていたのですが、やっとこさ昨日観る事ができました。

    漠然と面白くなかったと感じ、妙なお金のかけてなさに失望していたのですが、論理的にこの作品の面白くなさが書かれていて、非常に納得がいきました。
    ありがとうございます。

    ただ、
    >公安警察が誰にも(観客にも)知られないところで
    とありますが、途中公安が動くとか何とか、新城さんだったか、副総監あたりが言ってたような気がしましたが、、、

  • 否定的意見も大事だと思っとります

    2005/09/27 by 理屈屋

    ふるふるさん、コメントありがとうございます。

    > 「途中公安が動くとか何とか、新城さんだったか、副総監あたりが言ってたような気がしましたが、、、

    んーそうそう、確かに言ってました。どこで言ってたか、何のために公安が動くと言ってたかは、1ヶ月経った今となっては忘れてしまいましたけど。
    もしかしたら、伏線的なシーンはあったかもしれません。

    > 論理的にこの作品の面白くなさが書かれていて

    あまり楽しいことじゃないですよね、そういうの。
    でも、作品をつまらないと思ったら、つまらないと述べることは必要なことだと思っています。
    ただその場合には、どこがどうつまらなかったかをできるだけ明確に、しかも誠意を持って書く事が、否定的評者の責任だろうと思っとります。
    もしかしたら自分の誤解かもしれませんしね。
    で、作品を肯定的に感じた人と、論点を明確にして良い議論ができれば、自分の誤解に気づけたり、作品をより深く知り味わう事が出来たりして最高だと思いますね。
    おっと、ついオヤジの説教グセが出てしまいました、ゴメンナサイ。

    ともあれ、現実としてこの映画は大ヒットと言って良いようです。
    変かもしれませんが、私としても妙に安心しましたし、嬉しいです。
    踊るシリーズの次回作には実は密かに期待してます。

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