ある子供 (2005) »掲示板

クチコミ板の続き

2005/12/11 by 未登録ユーザ アッシュ

……なんですけど、ラストシーンまでネタバレするんで、さらに自己レスに埋めます。

 

  • Re: クチコミ板の続き

    2005/12/11 by 未登録ユーザアッシュ

     僕がこの映画の中で、かなりの衝撃を受けたシーンがひとつある。
     それは、ドライブ中に、ソニアが運転しているブリュノに噛みついてじゃれるシーンだ。運転中だぞ?! しかも後ろにジミー乗せてんじゃないかよ。僕は当然、この後彼らが事故って窮地に陥るというシークエンスになるものだと思っていたのだが、彼らは無事ドライブを続け、その先でも徹底的にじゃれ合うのだ。
     この時点に、僕にとってソニアという女もまた、先を予測して行動することができない、「ブリュノに負けず劣らずのダメ人間である」という評価が確定した。

     子供を売られたうえに、「また作ればいいさ」といわれてしまうソニアが、ブリュノを拒むのは当然の反応だ。
     しかしその拒否っぷりが頑迷で(いや、実際女性がそんなことされたら永遠に縁切るくらいで普通だと思うけど)、物語としては、ふたりの関係は完全に膠着したままラストになだれこむ。
     だから、ソニアもまた不器用で無思慮で同等のダメ人間であるという評価も変えようがない。

     そして、最後のひったくりのシークエンスで、ブリュノがスティーブを救ったのは、彼が愛や命の尊さの価値観を揺るがされたからではないだろう。僕はそのようには受け止められなかった。
     彼がスティーブを救ったのは、ただ筋を通したかっただけである。自分がスティーブを巻き込んだ。スティーブをひどい目に遭わせた。彼だけが罪をかぶって自分は逃げるという小ずるい選択肢を彼は選べなかった。それだけのことではないのか。

     だから、ラストでソニアがぽっと現れて、ブリュノとふたり、まるで愛の尊さを確かめ合おうとでもいうかのように手を取り合ったことが理解できない。
     ソニア、かのダメ人間が、ただただ「母性に目覚めて子供を頑迷に愛する」という立場のまま、ブリュノの前に現れるのが許せない。

     このラストでは、ソニアが一方的に上の立場に見えてしまうのだ。
     彼女が「上」なのは、ブリュノが子供を売るという罪を犯し、ソニアがその被害者であり、「頑迷だった心を解いてその罪を赦す」という立場に無条件に昇華されてしまうからだ。

     でも、そうなの? そういう解釈でいいの?
     僕は、手を取り合うなら、ブリュノとソニアはダメ人間同志愛し合い赦し合う等価な立場であって欲しかった。そう伝わるように作って欲しかった。
     それが残念でならない。

  • Re: クチコミ板の続き

    2005/12/27 by 未登録ユーザFISH

    巷の評判に惹かれ、「子供を売ってしまう」という冒頭の展開だけ頭に入れて本日観てきました。
    大前提として、「子供を売ってしまう」という広告の仕方はミス・ディレクションだったのではないでしょうか?この事件はただの象徴的な発端であり、物語は子供への愛についてではない。これは現実(リアル)と他人の痛みへの想像力がない、子供のままの「ある子供」についての問題提起作品ではないのでしょうか?

    私はアッシュさんの意見にほぼ賛成です。ブリュノが見せる後悔や懺悔の言動はすべて、愛に目覚めたからではなく、自分が犯した行為によって他人に見放されてしまうことへの恐怖によるものでしょう。
    スティーブの件についても同感です。ブリュノはただ単に自分のために筋を通したかっただけでしょう。彼には罪悪感に耐え切れるほどの理由はなかった。罪悪感を感じないほどの悪人でもなかった。そしてやはり、自分の行為の結果を想像する能力が欠如していた。

    特に印象的だったのは、刑事に問い詰められた彼があらゆる方面へ嘘をつきはじめる場面で、そこに私は嫌悪と同情を覚えました。

    ただ最後の場面の解釈については異を唱えてみたいと思います。ソニアがブリュノ同様のだめ人間であるという点では賛成(事故を起こすんじゃないかと私もひやひやしました)ですが、最初に私が書いたように、これは愛に目覚める物語ではないと思っています。そして主人公の二人は、二人そろって馬鹿である。カメラはブリュノの転げ落ちていく人生を追っていますが、ソニアを撮っていてもたぶん同じでしょう。恋人に子供を売られてしまう母親という人生の役なんて、誰がしたがるでしょう?彼女の立場は一見直前までは上のように見えますが、彼より先に自分の状況を理解しただけであり、けっきょく母親としてダメなことには変わりない。母性愛の象徴にはなり得ない。(タバコをやめなよ、と何回思ったことか)
    二人が手を取り合って泣くのは、二人とも自分のために泣き、自分と相手の愚かさと不幸を泣いていたのだと思います。二人は等価に近いのではないでしょうか?
    ブリュノ「なんでオレ、こんなことになっちゃったんだろう?」ソニア「なんで私ってこんなシチュエーションに立たされているんだろう?」二人「ひどいよこんな人生(泣)」。この画に愛と未来への希望を感じるのは、私には無理でした。なにより克明につづられた二人の今までの負の要素が強する。彼らはきっと変わらず、ブリュノはおそらくチンピラの使い走りとして冴えないまま年をとり、ソニアはくたびれた母親となり、ジミーは盗みを覚える、のかもしれない。

    ダメ男とダメ女が愛だと思うものでつながり、お互いに疲弊させながら生きている。テーマソングにはradio headの"fake plastic trees"を、少し年齢が違うなと思いつつ、推したいです。

    もちろん以上の解釈はネガティブ志向の私の主観的なものに過ぎないので、どうぞ読み捨てていただければと思います。長文失礼しました。

  • Re: クチコミ板の続き

    2006/01/05 by 未登録ユーザアッシュ

    今さらですがレスありがとうございます。

    >カメラはブリュノの転げ落ちていく人生を追っていますが、ソニアを撮っていてもたぶん同じでしょう。

    そう、まさしくそこです。
    僕は、ソニアが転げ落ちるシーン、あるいは、たとえ母性に目覚めたとしても自分の愚かさには何も変わりはないと自覚するシーンが……直接的でなくても、そのような心理的影響を予感させる1シーンが欲しかったのです。

    ブリュノに固執せずに(実際、映画の開始時はソニア視点だったわけですし)、この1シーンが組み込まれていれば、ぐっとバランスの良い作品になっていたように思われてなりません。

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