HERO (2007)
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大衆映画として「軽快」、法曹映画として「軽薄」
2007/09/26
by
ヘビメタさん
1.総論
一般大衆を対象とした娯楽映画としてはそれなりにテンポもよく、悪くない作品だと思います。別の見方をすれば、検察官を主役に据えている割には法律的なマニアックさやストーリーのHard Coreさはなく、深い感動やシリアスな法廷モノを期待する向きには物足りない作品となりそうです。詳しくは(5.脚本)で述べますが、「軽快」ともいえるし、「軽薄」ともいえそう。
2.ストーリー
6年ぶりに東京地方検察庁の某支部に戻ってきた型破りなイケメン検察官、久利生(キムタク)はある青年の犯した傷害致死事件の公判検事(起訴後の法廷における攻撃防御を担当する検察官)を担当することになる。当初、自らの犯行を自白していた被告人は法廷で一転して自白の強要・無罪の主張を始める。どうやら背景には(ありえない偶然さながら)大物政治家の贈収賄事件のアリバイ工作が…。(何故だか警察の力は借りずに)専ら自分で犯罪の追加捜査・証拠集めを始めるキムタクと同僚検察官・検察事務官たち。
3.演技
物語の終盤、例の大物政治家が出てきたときにはさすがに違和感と言うか、配役に「これは冗談なのか?」との思いも芽生えたけれど、全体を通じて演技に問題はなさそう。キムタクは確かに格好いいし、シリアスな映画ではない分、演技の「深み」云々を論じる必要はあまりなさそうです。
4.音響・映像
いきなり本編が始まるので驚いたけれど、さすがに「映画らしい」映像です。但し、例によって「邦画らしい」映画的映像であって、ハリウッドのそれのように映画のカットをそのまま絵葉書に出来そうなほどの芸術性は見受けられませんでした。蛇足ですが、最初のダンスホールの床に検察庁のロゴっぽいマークが描かれているのにニヤッとさせられます。
また、映画館で観る分には申し分のない音響です。特に派手な爆発があるようなアクション映画でもないので、DVDなどで観る分にも問題はなさそう。
ところで、何故だか僕が見た映画館では「日本語字幕つき」が上映されていました。洋画を英語字幕で見ることはあっても、邦画を日本語字幕で見たことはこれが初めてで、最初若干の違和感がありました。と言うのは、映像よりもワンテンポ早く台詞が頭に入ってきてしまったり、効果音(「ガチャ、扉の開く音」)を無意識に「読んで」しまったり。慣れてしまえば、そんなにDisturbingではなかったですが。でも、「公訴」と「控訴」はちゃんと使い分けましょう。
5.脚本
冒頭にも書きましたが、脚本はあくまでも「大衆向け」であって、個人的には物足りなさを感じます。難しい話をしているようでいて、実際には誰にでも分かるように単純に構成しているのはある意味でお見事と言えるかもしれませんが、深みのある素材だけに勿体無い。細かい突っ込みを入れ始めたらキリがありませんが(ex.警察が捜査するのが通常だろ?韓国に行く意味はあったのか?合理的な疑問を差し挟む余地のないまでの立証であって0.1%の疑問も残していけないわけではない、いきなり自白を撤回しても検察官面前調書もあれば警察官の録取書もあるし、検察官が報道機関に捜査情報をリークするのは重大問題、刑事事件係争中の弁護士に次席検事が酒をおごってもらっては法曹倫理違反…etc)そんなことよりも、「法曹としてのワビサビ」が描ききれていないのが残念です。扱った題材は傷害致死事件ですが、言葉で言うほどには「一人の人間の命が失われた重み」が描かれていません。(この点、例えば泣きながら判決書を書いた「ビギナー」は大変よかった)また、大衆の関心を惹く為とはいえ、無理やり恋愛要素を持ち込んだのも実にDisturbingでした。残念ながら検察事務官が美人であることは非常に不自然ですし(笑)無理やりそんなオマケを付け加えなくても、法と正義というテーマに深く切り込めば、充分に観客を満足させることが出来たはずです。(この点、恋愛を放って弱者救済を厚く描いた「離婚弁護士」は秀作でした)
6.お勧め
そういう訳で、法廷モノ・検察官映画としては高い評価は出来ませんが、一般的な映画としてはそれなりに面白いです。ですので、法曹や法曹を目指す学生向けの映画とは言えませんが、その分、誰でも特に構えずに観れる映画です。派手なアクションやシリアスな法廷劇を望む人にはお勧めできませんが、たまには邦画も見ようかと思っている方や、邦画は好きだけど巷に溢れるホラーや癒し系邦画には飽き飽き、という方にはうってつけの作品だと思います。
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