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会う時 は自分で決められない。 ネタバレ

2008/05/11 by 未登録ユーザ 犬のボードレール

ノーカントリー

こんにちは。
とても普遍的な物語を持つ映画だと思いました。

映画中、数多くの多様な人物がシガー氏に会います。共通しているのはいつも、彼に「会うつもりのない者」が、「会うつもりのない時に」彼の訪れを迎えることです。そうした者達だけが、実際にシガー氏と顔をあわせています。
その一方で、保安官男性は彼を追い、彼と「会おう」とします。両者は決して遠く隔たっているわけではありません。保安官の身体のすぐそばに、シガー氏の存在はあります。けれど2人は一度も顔をあわせることなく終わります。
シガーという人物がこの映画中で果たしている役割を考えると、自分にはこれは本質的なことに思えます。
この映画中で保安官とシガー氏との対面が果たされないのは、2人がとても近いところに居ることも含めて、保安官の無力・失敗・しくじり等ではなく、それで正しいのだと思います。
保安官が力及ばずで彼を「取り逃がした」わけではない、と。
それは「会いに行く相手」ではない。いつ、どんな風に来るのかはわからないけれど、いつか来るのを「待つべき相手」なのだと、映画はそう語っている様に思います。

モスという男性は、映画中の言動を見ている限りとても自覚的・意思的に生きている人物に思えました。
彼は上記のことを、知っていたのではないかと思います。だから「会いに来い」と言われても、自分から会いに行こうとはしなかった。
そして、最後のモーテルのシーンでは「来るものを待っている」と言っています。

「金を持って会いに来いと言ったのに、来なかった。奴は選択を誤った」と言われて、モス氏の妻だった女性は「それは違うわ」と返答します。彼女の言う通りだと思います。自分から「会いに行かず」、「来るのを待っていた」モス氏は正しい行動を選んだのだと思います。

会うつもりのない者に、いつ来るかはわからないけれど(多くは思いがけない時に)訪れる。彼自身がそうであるところのものを、映画は最後にシガー氏自身の上にも発生させます(事故)。
扉一枚隔てたすぐ側に居て、いつかは「来る」のを迎えるべき相手。それと「共に」生きるということ。
自分自身にも極々身近なこと、そして大切なことを、語っている映画だと思いました。

 

  • Re: 会う時 は自分で決められない。 ネタバレ

    2008/05/11 by 未登録ユーザ素子様命

    こんにちは。

    私は自分のクチコミ内で、シガーとはなんぞや、を
    はっきり記述してしまったのですが、
    犬のボードレールさんの「ソレを書かない」
    この文章には関心しきりです。

    トミー・リー・ジョーンズさん演ずるところの保安官は、
    主要登場人物の年齢的に
    “シガーにもっとも距離が近い人”であり、
    また仕事柄いつもその影を身近に感じていたことでしょう。
    そしてそれ故、実は慎重に彼に会うことを避けている。
    メキシコ人の死亡事件など
    全部自然死だからまともに調査しなくて良いと、
    若い保安官に説く場面や、
    家に踏み込むにあたって若い保安官を先に行かせる場面など、
    細かい描写が積み重ねられた後、
    彼はシガーが舞い戻っていると考えられた事件現場に、
    当初は「相対するために」赴きます。
    しかし、結局閉じられた部屋の扉の全てを開いてまで
    彼と相対する決断はできずに終わる。
    そう遠くないと分かっていても“ ”が怖い自分を悟る。
    (ああ、私は文章がヘタだ。(^▽^笑)
    ソレに言及せずに文章を組み立てられない。)

    また、シガーはシガーで
    モスの奥さんに「自分とはなんぞや」について
    大きなヒントを与えられた後(まあほぼ答えですが)、
    そのことについて理解を深めざるを得ない出来事に遭遇する。

    あの後彼は(元気で生きていれば)
    コイントスをやめてしまったのではないかなぁ、
    と思います。
    もはや出合ったら最後・選択の余地なしの
    より恐ろしい存在と化しているということですが、
    彼が“ ”の意味を彼なりに理解すると
    そうなってしまいそうな気がします。

  • Re: 会う時 は自分で決められない。 ネタバレ

    2008/05/15 by 未登録ユーザ犬のボードレール

    素子様命さん、こんにちは。
    こちらで書き込み度々読ませて頂いてます!
    (う〜ん、マニアックなお名前)。

    コメント有難うございます。
    殺伐として救いのない映画とのもっぱらの評判を耳にして、そのつもりで見に行ったのですが、実際見てみたらひどく意外の感を抱きました。
    見始めてすぐに、この映画が提示する世界に接するのはこれが始めてではない、前にも聞いたことのある話だ、と。
    どこでかと言うと、突飛な連想かもしれませんが、「シートン動物記」の中でです(笑)。
    シガー氏が雑貨店主相手に語る「コイン・トス」。「どの瞬間にも全てを賭けている」というのは動物記を貫く原則です。「野生動物の最期はいつも突然訪れる悲劇だ。安かな死は極めて稀にした見られない」という記述は、まるでこの映画で語られる「ポーチで死んだ叔父」について解説しているかのようです。
    最もその感が強まるのは、モス氏を描く部分で、この人物は動物記の主役(野生動物)がそっくりそこから抜け出して来たかのように見えます。
    知恵を働かせ・工夫をし・用心を配り・推測し・できる限りのことを実行し・追っ手の裏をかき・身を守り・傷を負ってそれを癒す:動物記が描く野生動物達も、正しくこの映画のモス氏と同じ物語を生きています。
    動物記は金や麻薬やモラルの低下とは無縁です。またそこを生きる主役達は虚無や嘆きや後悔・諦念等を知りません。次の一瞬には全てを失うかもしれない生に己の全てを挙げて積極的に参加することが、彼らの知る唯一の生き方です(←モス氏そっくりと思います)。
    そうした世界を動物記は「嘆かわしい世界」としては語っていません。またそこに生きる者達を、荒んだ世界に生きる嘆かわしい者達とはしていません。その生のあり方に、最大級の共感と敬意を送っています。むしろそうした世界から自分達を除外して考えるようになった「人間達一般」に対し否定的・批判的です。
    これと非常に近い姿勢を、『ノーカントリー』にも自分は感じました。映画が語るのは、特定の「場所」や「時代」に限定されぬ、そうしたものの下にあり、普段人間が自分達をそこに含めては考えようとしない、ある根源的な世界である様に思いました。
    殺伐とした救いのない世界どころか、稀にしか見られない、力強いものを自分はこの映画に見た気がします。

    保安官さんはこの映画中では、最も観客一般に近い所にある人物かと思います。
    モーテルの部屋へ踏み込んだ時、彼は本気でシガー氏と「会う」つもりだったのだと思います。が、映画は2人を会わせなかった。保安官さんのおじは「先にあるものがわかるなどと考えるなら、それはVANITY思い上がりだ」と言います。「会おうと思った時に会えるなどと考えるとしたら、それはVANITY思い上がりだ」との映画の姿勢が、ここで保安官さんにも観客にも示されたと思います。人間によるコントロールの力が及ばない存在があることを、はっきり知らしめているのだと。
    (考えてみるとこの仕事人さんは少し前に「会う時は自分で決めるのだ」と宣言したがためにスキャンダルを巻き起こす人その人であったわけで、面白いなと思います。あの映画では信仰上の面が中心のようですが、問われていたのはやはりVANITYか否かという点だったと思います)。
    見終わって考えると、タイトルに言うforOldMenのOldMenとは、「歳とった人々」のことではなくて「人間という年老いた動物」のことを指すのかなぁなどと思いました。
    映画が冒頭に示す光景は、動物記の大舞台のひとつである「カランポー平原」とも近かったかと思います。

    「音の映画」!自分は『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の音が不気味で恐くてしょうがなかったです。上映中、何度も椅子から飛び上がってました(笑)。
    またこちらで書き込み読ませて頂くのを、とても楽しみにしています〜♪

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