ニュー・シネマ・パラダイス (1989)
»掲示板
筋書きの穴(ネタバレです)
2004/01/19
by
倉島穂高
田中絹代は本名だそうです。15歳でデビューして世間に顔と名前をさらすにあたり、お兄さんだったっけ(うろ覚え)、身内に行方不明の人がいるので、その人にわかるように本名で仕事したそうな。尋ね人がいるならば、そうする方が理にかなっていますよね。それなのにトトはなぜ本名を名乗らなかったのか? 「自信がなかった」とかなんとか言っておりましたが、そんなの理由になるかしらん?
まあいいや、百歩譲って、何か思うところあって本名を名乗らなかったことには目をつぶりましょう。すると……あれぇ?! なんかおかしくない?
故郷の村に戻ってきたら、見も知らぬ若造が「ナントカさんですよね?」と寄ってきてサインを求めましたね。つまりおっさんになったトトはそれだけ顔と芸名が世間一般に知られた有名人なんですよね。ローマに戻ったら、なんだかすごい賞を受賞していたようですし。なのになんでエレナは「もしかしてこの映画監督はサルヴァトーレでは?」って思わなかったのかしら。
まあいいや、百歩譲って、30年も離れていたから顔がわからなかったということにしておこう。すると……あれぇ?! ますますおかしくない?
故郷の村人たちは彼の成功をちゃんと知ってましたよね。ずっと年上のおじいさんたちが「あなたは偉くなられたから」なんて敬語使っちゃって。トトがその成功を故郷にはひた隠しにしていて、帰郷とともにワッと「あの映画監督は実はトトだった!」って知れ渡ったの? お母さんや妹や立派になった実家の様子からして、それはありえないでしょう。アルフレードだって「お前の噂を聞きたい」って言ってたんだし。しかも、エレナの夫もバリバリの地元民で、一家して地元に根をおろして暮らしているではありませんか。いくら深窓の奥様だからといって、地元出身の成功者の噂がまったく耳に入らないなんてことがありえるでしょうか? 「あなたの作品は全部観ている」と言っているのに。
たとえ上記の穴全部に目をつぶり、「エレナはかの映画監督の作品をくまなく観て顔も知っていながら、彼が昔の恋人などとは夢にも思わなかった。地元でも彼の噂からは完全に隔絶されていた」ということにしたとしてもですよ、彼の作品を観て「もしかして?」という思いが全然わかなかったのは変だと思うのです。作家がみな自分の体験を赤裸々に描くとは限りませんが、作り手の実体験は実にさまざまな形で作品に投影されるものです。トトが本名を隠して活動しているならなおさら、死ぬほど会いたい人の面影を宿したヒロイン、自分たちの思い出をなぞるプロットなどが作中に立ち上がってしまうものなのではないか? 同じ監督の作品をいくつも観れば、あるいは同じ作家の作品をいくつも読めば、その人の好みとかトラウマの影などがとてもよく見えます。そもそもこの映画自体が、監督の実体験や想いを如実に反映しているであろうことは、裏話なんか読まなくたってはっきりと感じ取れるではありませんか。
エレナが彼の映画を全部観て何も気づかなかったとしたら、よほど鈍いのだとしか思えませんね。このヒトってば、30年間も何考えて生きてたんでしょう? しかし、そこに文句をつけてしまうと彼らの別れと再会のプロットは総倒れ……ダメだ。私はとうてい感動できません。私も初恋や忘れられない恋の思い出は大事に大事に胸の奥にしまってあって、まあまあ幸福な生活を送っている今でも、「偶然の再会のシーン」なんかを頭の中で作ってウルウルしたりすることありますよ。消息不明のモトカレの名前をネット検索しちゃったりとか。モトカレに顔が似ている芸能人にイジョーに入れ込んだりとか。モトカレでなくても、有名になった元同級生のことは常に気になりますしね。だからこそ、ずさんな筋書きに興ざめさせられてしまったのかも。やっぱり、一般大衆に公開する映画なんだからさ。ひたすら観客の情感に訴えるだけでなく、冷静な計算のもとに人心を操る部分が少しでもあってほしいわけですよ。
唐突ですが、『インファナル・アフェア』にも穴はあったのですが、満点をつけました。シナリオ上の小さな穴くらいとるに足りない、と思わせてくれたから。でもこの映画は残念ながら、そう思わせてはくれなかったということです。
-
Re: 筋書きの穴(ネタバレです)
2004/02/20 by
a> 田中絹代は本名だそうです。15歳でデビューして世間に顔と名前をさらすにあたり、お兄さんだったっけ(うろ覚え)、身内に行方不明の人がいるので、その人にわかるように本名で仕事したそうな。尋ね人がいるならば、そうする方が理にかなっていますよね。それなのにトトはなぜ本名を名乗らなかったのか? 「自信がなかった」とかなんとか言っておりましたが、そんなの理由になるかしらん?
> まあいいや、百歩譲って、何か思うところあって本名を名乗らなかったことには目をつぶりましょう。すると……あれぇ?! なんかおかしくない?
> 故郷の村に戻ってきたら、見も知らぬ若造が「ナントカさんですよね?」と寄ってきてサインを求めましたね。つまりおっさんになったトトはそれだけ顔と芸名が世間一般に知られた有名人なんですよね。ローマに戻ったら、なんだかすごい賞を受賞していたようですし。なのになんでエレナは「もしかしてこの映画監督はサルヴァトーレでは?」って思わなかったのかしら。
> まあいいや、百歩譲って、30年も離れていたから顔がわからなかったということにしておこう。すると……あれぇ?! ますますおかしくない?
> 故郷の村人たちは彼の成功をちゃんと知ってましたよね。ずっと年上のおじいさんたちが「あなたは偉くなられたから」なんて敬語使っちゃって。トトがその成功を故郷にはひた隠しにしていて、帰郷とともにワッと「あの映画監督は実はトトだった!」って知れ渡ったの? お母さんや妹や立派になった実家の様子からして、それはありえないでしょう。アルフレードだって「お前の噂を聞きたい」って言ってたんだし。しかも、エレナの夫もバリバリの地元民で、一家して地元に根をおろして暮らしているではありませんか。いくら深窓の奥様だからといって、地元出身の成功者の噂がまったく耳に入らないなんてことがありえるでしょうか? 「あなたの作品は全部観ている」と言っているのに。
> たとえ上記の穴全部に目をつぶり、「エレナはかの映画監督の作品をくまなく観て顔も知っていながら、彼が昔の恋人などとは夢にも思わなかった。地元でも彼の噂からは完全に隔絶されていた」ということにしたとしてもですよ、彼の作品を観て「もしかして?」という思いが全然わかなかったのは変だと思うのです。作家がみな自分の体験を赤裸々に描くとは限りませんが、作り手の実体験は実にさまざまな形で作品に投影されるものです。トトが本名を隠して活動しているならなおさら、死ぬほど会いたい人の面影を宿したヒロイン、自分たちの思い出をなぞるプロットなどが作中に立ち上がってしまうものなのではないか? 同じ監督の作品をいくつも観れば、あるいは同じ作家の作品をいくつも読めば、その人の好みとかトラウマの影などがとてもよく見えます。そもそもこの映画自体が、監督の実体験や想いを如実に反映しているであろうことは、裏話なんか読まなくたってはっきりと感じ取れるではありませんか。
> エレナが彼の映画を全部観て何も気づかなかったとしたら、よほど鈍いのだとしか思えませんね。このヒトってば、30年間も何考えて生きてたんでしょう? しかし、そこに文句をつけてしまうと彼らの別れと再会のプロットは総倒れ……ダメだ。私はとうてい感動できません。私も初恋や忘れられない恋の思い出は大事に大事に胸の奥にしまってあって、まあまあ幸福な生活を送っている今でも、「偶然の再会のシーン」なんかを頭の中で作ってウルウルしたりすることありますよ。消息不明のモトカレの名前をネット検索しちゃったりとか。モトカレに顔が似ている芸能人にイジョーに入れ込んだりとか。モトカレでなくても、有名になった元同級生のことは常に気になりますしね。だからこそ、ずさんな筋書きに興ざめさせられてしまったのかも。やっぱり、一般大衆に公開する映画なんだからさ。ひたすら観客の情感に訴えるだけでなく、冷静な計算のもとに人心を操る部分が少しでもあってほしいわけですよ。
> 唐突ですが、『インファナル・アフェア』にも穴はあったのですが、満点をつけました。シナリオ上の小さな穴くらいとるに足りない、と思わせてくれたから。でもこの映画は残念ながら、そう思わせてはくれなかったということです。
がんばったね -
Re: 筋書きの穴(ネタバレです)
2007/06/02 by
.>「ナントカさんですよね?」と寄ってきてサインを求めましたね。
・・・・・・まさに、そのシーンこそが最重要点なわけなんだが。
返信を投稿
Copyright©2008 USEN GROUP All Rights Reserved.





![DVD「ニュー・シネマ・パラダイス [SUPER HI-BIT EDITION]」](http://ecx.images-amazon.com/images/I/519SSKKVVHL._SL75_.jpg)





