座頭市 (2003) »掲示板

クチコミに書いたことのネタばれ版です

2005/10/30 by 理屈屋

座頭市

この作品はとっても陳腐な時代劇ですよね。
あまりにも昔風なので、勝新太郎さんへのオマージュか?と最初は
思いました。違うところは座頭市の髪の色くらいなんじゃないでしょうか。
が、市がその青い目を開き、人々がタップを踊るに至って、その意味が
分かった気がしました。
タップを踊りだす以前の人々は、古き良き日本人の「形」を表現していた
のではないかと思ったのです。
浅野忠信さんの侍も、その妻も、物凄い昔風の侍とその妻「そのもの」
でした。
復讐を誓う姉弟も両親を盗賊に殺された、昔話に出てきそうな可哀想な
兄弟の「姿」そのものです。
ガダルカナル・タカさん演じる博打にはまる百姓のセガレも、時代劇に
必ず登場する「パターン」かもしれません。
もちろん市自体が、時代劇のヒーローの「形式」を踏んでます。
そういった、「そのもの」「姿」「パターン」「形式」以外にも、侍の見せる
剣術や市の居合の技、日本舞踊などもズバリ「型」を見せてくれます。
前半で日本舞踊を長く見せることで、古き美しき日本の「形」というものを
強く意識させられます。
また、それらを含んでいる時代劇自体も、見るからに「時代劇の形」を
守って作ってあるように思ったのでした。
我々日本人は、慣れ親しんだ陳腐を、外国の方は初めてみる
日本の新鮮な形を見ることになりますね。

こうして描かれた形は、昔の日本人が厳しい自然や不平等な社会の
抑圧に耐え、生命力が押さえ込まれてギリギリの境界線を守った結果
形作ったものであったように思われ、現代人の私たちは自ずから強い
郷愁をそれに感じ、何とも言えない「形式美」をそこに見出すのでは
ないかと思うのです。
何とも言えない、切なく必死な、そして堅く強い形であると感じます。
実に小さく固まった、美しく効率的な形だと感じます。
とくに、姉弟が踊る日本舞踊、飛んだり跳ねたりしない日本舞踊を踊る
シーンにそれを感じます。

ところが、市が目を開いてしまった瞬間、「座頭市という形」は完全に
放棄され、人々も自由奔放に飛び跳ね、踊り出します。
市は金髪・青い目で、まるで「日本人ではない」みたいなんです。
勝新太郎さんの座頭市の形式を踏襲して、斬新なアイデアの座頭市を
敢えて持ち込まず、古い時代劇の「パターン」をその時まで採って来た
のに、この豹変は何のためか、と考えてしまいます。

青い目で、金髪で、目を開いている男を、何の説明もなしに座頭市で
あると認識できるでしょうか?
日本人が作り上げ、守って来た様々な形は、今や自由や便利と
引き替えに失われてしまっていないでしょうか?
そんな問いかけが聞こえてきそうな気がします。

とは言え、青い目・金髪の座頭市や、歓びに溢れ躍動的に踊る新しい
日本人達を、決して否定的に見せているようには感じられないことから、
この作品の主張するものが、単なる懐古趣味ではないようにも感じます。
抑圧や不自由であることが良いわけはないので当然であるといえますが、
それでもラストで「目をひんむいても見えないものは見えない」と座頭市
に呟かせているところに、現在の日本人のあり方も決して肯定しては
いないように思えます。

また、市は目を開くことは開きますが、実はその目は見えていないこと
を先の呟きが示唆しているようにも思えます。
日本人は古い形を放棄して、新しい形を取り入れたけれども、それは
形ばかりで
「目を開いたけれど、ものを正しく見られるようになったのか?」
「大事なのは目を開くことではない。
 ものをしっかりと正しく認識することなのだ」
という批判であるかのようにも受け取れます。
座頭市は目を開かないときの方が、物事を良く見抜いている点に
注意が戻ってしまいます。

ただ、不思議な気がするのは、古き良き日本人も、歓びに躍動して
踊る日本人達も、観念的には両方とも自分の中に確かにあるように
感じますし、どちらにも非常に親近感を感じるというところです。
両方が相対立する観念であるとも必ずしも思えません。
そういうところを指して、日本人はファジーだと言わるのでしょうか?
本音と建前を使い分ける、心が二つある民族だ、
などとも言われているようです。

これからの日本人は一体どんな「形」を持ち、
どうなって行くべきなのでしょう?
そんな日本人自身にも分からない「日本人とは?」という疑問を、
疑問のまま、それを見失っているのかもしれない日本人にはもちろん、
世界の人々へも発信したのがこの作品なのかな?という感じがしました。

最後に「外国人受け狙いに」について。
北野武監督に限らず、これからの日本人の監督さん達は、日本人だけを
意識して作品を作ったり、外国人だけを意識して作ったりということはない
でしょうから、自分の作った作品を、普通に世界に向けて理解されやすい
ように作っていくことでしょう。
そういう意味で、自らの価値観を曲げて(外国人の日本に対する誤解を
肯定・助長してしまうような)外国人におもねるような姿勢があらわな作品
ででもない限り、国内向け・外国人受け狙いなどという捉え方や評価は、
もはやナンセンスなのではないかと思います。

 

返信を投稿

名前 ※ニックネーム可
メール ※表示されません
見だし
内容
※個人・作品に対する誹謗中傷はご遠慮下さい。
※レビューはレビュー投稿フォーム
ネタバレ? ネタバレ無し ネタバレあり
オプション この作品のお知らせメールを受け取る(返信をお届けします)
 

掲載情報の著作権は提供元企業などに帰属します。
Copyright©2008 USEN GROUP All Rights Reserved.

ユーザログイン

Mail
Pass


この映画のファン

  • ジョン君
  • なんちゃって拳王
  • orangutan1982
  • 星空のマリオネット
  • りるむやん
  • ゆきんこ
  • あおべか
  • 1971
  • lunasol
  • こんちゃん

 

ユーザ登録をするとこの映画のファンに加わることができます

関連DVD

北野・ざんまい! ~北野武監督作品DVD全集~

  • 定価:47880円(税込)
  • 価格:35910円(税込)
  • OFF:11970円(25%)

座頭市 <北野武監督作品>

  • 定価:3990円(税込)
  • 価格:2993円(税込)
  • OFF:997円(24%)

 

携帯で見る

qrcode

満足度データ

100点
40人(12%) 
90点
46人(14%) 
80点
60人(19%) 
70点
57人(18%) 
60点
38人(12%) 
50点
20人(6%) 
40点
14人(4%) 
30点
11人(3%) 
20点
8人(2%) 
10点
11人(3%) 
0点
7人(2%) 
採点者数
312人
満足度平均
68
ファン
10人
観たい人
42人

 

満足度ランキング

満足度 投稿数 観たい ファン 全作品