ボーン・スプレマシー (2004)
»レビュー
フィリピノカリの迫力
2008/05/07
by
牧坂満
記憶喪失のCIA工作員、ジェイソン・ボーンシリーズの第2章。今回のボーンの面白さはインドのゴアに始まり、ナポリ、ベルリンやモスクワ、ロンドン、NYといった世界各国に現れるその神出鬼没ぶりにあります。熟慮した行動と必要最小限の動きで敵を倒すシーンには、フィリピンの格闘技“フィリピノカリ”が使われています。“フィリピノカリ”は私の後輩たちが、フィリピンとベトナムで師範をしていますが、殆んどが日本の空手を取り入れて進化されています。映画の空港で逮捕されたボーンが瞬時に数人をKOするシーンは“フィリピノカリ”というよりも松濤館系か糸東流系の空手の技になります。ボーンのストレートパンチで肘が伸びきっているのがその証拠です。
ハンディカメラのシークエンスは“深作欣二監督”の影響なのか“ぶん回し”による迫力ある映像を生み、ライブを見ているようなリアリティがあります。派手なカー・チェイスも固定カメラだと傍観者の視線でしかありえませんが、マルチカメラとハンディカムによるカメラワークは観客自身がボーンに同行しているような臨場感を与えてくれるのです。また、CGなしのベルリンでの爆破シーンも本物の迫力ならば、台詞の少ないロシアの殺し屋カール・アルバン扮するキリルは“ハードボイルド”を実践していて文句なし。
主人公のボーンはグッドガイでありながら、CIA工作員として過去に実行してきた非合法活動の暗部に苦悩するという二面性を持った新しいヒーローであり、絶えず2つの心が闘っている心情をマット・デイモンが見事に演じています。カーチェイスの後にトンネルの出口に向かうボーンは明るい出口を探っているようでしたが、少女へ事件の真実を告白した後に団地の庭に降り積もった雪の中を一人歩くボーンに彼を取り巻く現実の環境の厳しさを象徴しているようでした。
ボーンの記憶の中で途切れ状態でフラッシュバックする過去のシーンと、ジョーン・アレンが演じる諜報員が独自で調査するトレッドストーン計画の裏にある陰謀。どちら側につくのかわからないジュリア・スタイルズ、CIA高官のミステリアスな行動。それらを直感的行動と冷静沈着な知性で捌きながら、核心部へと迫っていくクライマックスにはボーン・シリーズ独特のカタルシスがあるのです。
【DVD・マイコレクション】鑑賞
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質問・フィリピノカリ
2008/05/08 by
新星
※私はフィリピンの格闘技“フィリピノカリ”に興味を持ちましたが、日本国内で“フィリピノカリ”を教えてくれるジム或いは道場というものはあるのでしょうか。
※ボーンが瞬時に数人をKOするシーンは“フィリピノカリ”というよりも松濤館系か糸東流系の空手の技になります。ボーンのストレートパンチで肘が伸びきっているのがその証拠ですについてもっと詳しく説明をお願いします。 -
新星さん、初めまして。
2008/05/09 by
牧坂満
「新星さん」初めまして。…@フィリピンの格闘技“フィリピノカリ”は同好者の間で行われているようですが、アメリカの第一人者(佐山さとるライセンス所持)を後援している初代タイガーマスクの佐山さとる氏やモントリオールオリンピックのレスリング・フリースタイルの金メダリストの伊達治一郎氏、大相撲の元・関取の荒瀬氏と交流がある、湯本俊夫氏が所沢と横浜の道場で松濤館系空手と一緒に教えています。
A沖縄県から本土に渡った空手は“那覇手”と“首里手”に分かれたものでした。それは、遠距離の間合いから飛び込む“松濤館”“糸東流”と接近戦の“剛柔流”“和道流”に分類されます。これが日本の四代流派であり、“松濤館”“糸東流”の系統は肘を伸ばし切り、“剛柔流”“和道流”の系統は相手にコンタクトした瞬間、肘を少し折りたたむのです。フルコンタクト系の元祖、“極真会館”は始祖の大山倍達氏が“松濤館”の船越義珍氏と“剛柔流”の山口剛玄氏の二人から空手を学んで、ムエタイをMIXしたものです。“極真会館”でもストレート(正拳突き)はヒットさせた後に肘を曲げています。
以上、参考になりましたでしょうか。
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