フローレス (1999) »レビュー

デ・ニーロは本当に名優か?!

40点 2002/08/30 by 倉島穂高

 デ・ニーロが存在感のある、そこそこいい役者であることは認めます。ほんの数年前にビデオで『タクシー・ドライバー』を観た時なんか、若き日の彼のハンサムぶりとギラギラした若者の不毛なエネルギーの表現に驚倒したくらいです。だけど……
 このヒト、本当に世間がもてはやすほどの演技派の名優なんでしょうか? 彼の場合、「カメレオン役者」という称号よりも「変身病(C)中野翠女史」の方がふさわしいような。彼が太ろうが痩せようが毛ェ抜こうが、私の目にはまるっきりおんなじ顔、おんなじ表情、おんなじ演技にしか見えないんですけど……むしろ基本的な演技力がないからこそ、カタチから入るんじゃないのかなあ。
 思いっきり顰蹙買いそうで、今まで誰にも言ったことがないのですが、ロバート・デ・ニーロとキアヌ・リーブスって、とてもよく似たタイプの役者なのではないかと、つねづね感じています。なんだか、並べて論じるのが恥ずかしいような気さえしますけれど。この2人を直接知っているわけではもちろんないので、私の勝手な邪推なのですが、どちらもアイデンティティのほとんどが「オレの仕事は役者(≠スター)だぜ」というところにあって(キアヌの場合は音楽活動もそこに含まれますが)、プライベートでの本人は、あたかもワーカホリックのサラリーマンのごとく、つまらない人間なのではなかろうか。実は天性の才能に恵まれているわけではないのだけれど、やはりワーカホリックのサラリーマンのごとく、自分の仕事にはとことん入れ込む。外野の評価とか、自分がどう見られているかなんてことには全然興味なくて、とにかくやりたい仕事にだけとことん入れ込む。仕事のために外見を変えることなんぞ何とも思わない。そのワーカホリックぶりが、一種の芸の域にまで昇華している……そんな感じを私は抱いているのであります。で、世間から過分の評価をいただいて安泰のデ・ニーロよりも、いつまでたっても若造扱いで毀誉褒貶の激しいキアヌの方に深ーい愛を注いでおります。
 『フローレス』でのデ・ニーロなんて、今思い出そうと思っても全然印象に残ってないんですよ。フィリップ・シーモア・ホフマン(この人も変身病のケがありそうな)の方が断然よかったという人は少なくないと思います。『アナライズ・ミー』でも彼の演技に全然笑えなかったので、もうデ・ニーロの出演作は観る気が起こらない今日この頃……

 

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  • デ・ニーロの最高作

    2002/08/30 by 未登録ユーザ まあ

    意外です。
    僕はこの映画はデ・ニーロの最高作だと思っているんです。
    演技って言うのがどういうものか、論じる能力は僕にはありません。
    ただ僕はこの刑事の心情の変化に非常に感動をしました。
    デヴィッド・シーモア・ホフマンとほとんど二人芝居。
    しかも、ほとんどアパートの中と言う密室空間。
    そんな舞台のような画面で、実に自然に、非日常を演じきっているって思いました。
    頑迷な刑事の心が少しずつ動いていって、泣くに泣けない表情で泣いていたデ・ニーロが忘れられません。
    確かに彼は器用な俳優さんではないんでしょうねえ。
    そして、いろいろな作品に出すぎているとも思います。
    その中でフローレスは彼の新境地を開拓したんじゃないですか。
    しかも、今まで培ったバイオレンスものの演技をもとにそれを凌駕する形で。
    よく言われることですが、笠智衆さんは名優なのでしょうか。大根なのでしょうか。

  • Re: デ・ニーロは本当に名優か?!

    2002/08/30 by 倉島穂高

     まあさん、ほとんど妄言のような拙文にレスをいただきましてありがとうございます。
     『フローレス』については、すでに前述のような先入観をたっぷり持った状態で観てしまったので、多分平明な判断力は失われていたと思います。それにしても、印象に残らなかったというのは正直なところ。だけど、まあさんのようにデ・ニーロの芝居に心打たれた方がおられるのは当然だし、むしろそのお気持ちはわかるような気すらするのです。
     私が何をもって「演技力」と呼ぶのかと申しますと、端的な例は、現在ぞっこん入れ込んでいるホアキン・フェニックスとか、ファンではないけれど大いに評価しているジョン・タトゥーロです。彼らは外見ももちろん変えるけれど、何よりも目つきが、顔つきが、しゃべり方が、たたずまいが役柄によってガラリと別人に変わってしまう。私が勝手に定義する「演技力」とは、このような「役柄になりきる能力」のことです。主演賞よりも助演賞の対象になるようなタイプ。ダスティン・ホフマンなんかもかなり演技巧者という評価が高く、私もうまいとは思うのですが、彼の場合も「なりきっている」というよりは「うまく演じている」の域です。このあたりの評価は人によってかなり違うと思いますけれどね。
     演技力が役者の唯一絶対の価値というわけではないことは、言うまでもありません。例えばニコール・キッドマン。彼女は演技力という点では箸にも棒にもひっかからない大根だし、カリスマ性にも乏しいし、生まれながらのエレガンスも今ひとつだけれど、あの他を圧する美貌は、それだけでダイヤモンドのような希少性を持ちえていると思うのです。笠智衆さんも、あの茫洋とした御前さまのたたずまいそのものに存在価値があるわけで、他の誰になる必要もない。
     デ・ニーロの役者としての価値もやはり、あの重厚な風貌と存在感ではないかと。キアヌを引き合いに出すのでは説得力がありませんが、例えば茶目っ気を抜き取ったショーン・コネリーのような……誰もショーン・コネリーに完璧ななりきり演技なんて期待しませんよね?
     他の役者より少しばかりよけいに変身に力を入れるというだけのことで(そもそも変身は役者の仕事の一環なのに)「演技派の大御所」みたいに彼を持ち上げてありがたがるという使い方および消費のされ方が、私は嫌いなんだと思います。デ・ニーロ本人に罪はありません。

  • キッドマンが「大根」って・・・(^^;;

    2002/08/30 by 未登録ユーザ 最大素数

    倉島穂高さん、初めまして。
    このようなレスで"初め"るのはちとなんだかなあとも思うのですが、ま、仕方ありません(笑)。

    『フローレス』は未見でして、デ・ニーロにも興味はないのですが、まあさんへの返信を読んで、これは、わたしがアル・パチーノに抱いている感じとよく似ているような気がしました。
    この人いつも「取りあえず歳は喰っているけれど、今一うだつの上がらない中年○○」と言うか、「馬齢」と言う言葉が似合いすぎ・・・。『エニー・ギブン・サンデー』なんか、彼でなければもうちょっと"切れ者"風のコーチ像になったと思うし、『インサイダー』だって、なんかどっかラッキー?みたいな印象は微塵も無くなっていた筈だし、『フェイク』での異常なハマリ具合に、これは彼の自伝かと間違われたりすることだって無かった(元々無いって、んなもの・笑)と思うのです。あ、A・パチーノが「演技派」と呼ばれているかどうかはこの際置いといて下さいね。
    でもでも、なぜかわたしは彼が大好き(馬齢つながり?笑)で『インソムニア』は速攻で観に行くつもりであります。

    と、ここまでは、ま、"カッコつけ"の序論であります(笑)。
    本論は、ニコール・キッドマン。

    > 他を圧する美貌

    同性の評価はやっぱりそういうあたりなんですよね。同居人(女性)も全く同意見です。
    しかし、わたし(及び、多分大多数の男性)にとっては単にキレイというようなことではありません、彼女の魅力は。
    太めの二の腕、発達した大腿、豊かな背筋、締まった足首、なんという「エロ」!歩く猥褻!!
    > 「女」という「性」が匂い立つよう
    とは『アザーズ』での拙稿中の表現です。

    > 箸にも棒にもひっかからない大根

    彼女の「演技力」を云々するのはラードの栄養価を言及するのと同じ(か?笑)、嗤われても仕方ありませんよ。
    ・・・ま、なんと言いましょうか、「演技力」を語る方が、実際にいらっしゃるという"現実"を目の当たりにして、あ、そうか、アイツ役者だったんだと、ちょっとビックリしてしまいました。
    大変失礼致しました。

  • 名優の条件

    2002/08/31 by 未登録ユーザ まあ

    いろんな意見があって面白いですね。

    僕は名優って言うのは「一人の人」であることだって思っています。
    どんな役柄でも、その俳優が演じたら、すべてその人になってしまうっていうことです。
    俳優の身体が人生を表現するっていうのかなんと言うか。
    ちょうど、美空ひばりが歌えば、何を歌ってもひばりの歌になったように。
    俳優の生き方とか信念とかが、彼の身体を通して役柄に重なった(と思う)とき、
    僕はその俳優に強く惹かれます。

    アル・パチーノもそういう俳優だって思います。
    僕は彼の「リチャードを探して」が大好きです。
    あの声で演劇や演技に対する信念を語るとき、
    彼のかたくなさがよく伝わってきてとても面白かった。

    キアヌ・リーブスは確かに何をやっても同じですね(笑)。
    「リプレイスメント」みたいな、なんでもない映画で、
    この人は真面目な人なんだろうなあって思わせるから好きです。

    ホアキン・フェニックスは、若いので僕にはまだよくわかりません。
    ただ目がとてもきつくて、いいなあって思います。
    「クイルズ」なんかの演技が器用なところなんでしょうね。

    ジョン・タトゥーロは「バートン・フィンク」以来、僕のもっとも好きな俳優の一人です。
    彼が出ているだけでその映画を見に行こうと思います。
    でも、いろんな役をこなせる俳優ではないと思います。
    というのは「耳に残るは君の歌声」で、どう見てもオペラ歌手に見えませんでしたから。
    彼が歌う(しかも吹き替え)たびに映画館で笑いをこらえるのが大変でした。

    ダスティン・ホフマンは好きじゃありません。
    鼻につくんです。
    「わらの犬」とか「クレイマーVSクレイマー」とか「トゥッツィ」とか「レイン・マン」とか、どれをとっても
    「どうだ、俺は上手いだろう」って自慢されているようで白けてしまいます。

    二コール・キッドマンは嫌いです。
    ああいう顔を美人だとは決して思えません。
    彼女の顔からは人の情というものが感じられないんです。とても冷たくて、薄っぺらな感じがします。
    もちろん、そこが魅力だというのもわかるんですが、僕はご免こうむります。
    それに、僕は男ですが、彼女に「性」もまったく感じません。
    感情を持たない人を抱きたいとは思えないんです。
    たとえ素晴らしい肉体を持っていなくても、情感の豊かな、心に潤いのある人が色っぽいと思います。

  • 名優の条件(訂正)

    2002/08/31 by 未登録ユーザ まあ

    シーモア・ホフマンのファーストネームはフィリップでした。
    失礼しました。
    この方も良いですね。「リプリー」もよかったし。
    「セント・オブ・ウーマン」にも出てましたよね。
    これから注目していきたいって思っています。

  • 最大素数さん、場所を移りませんか?

    2002/09/04 by 倉島穂高

     ニコール・キッドマンは演技力ほぼゼロ、という意味で出した例なのですが、それすらナンセンスな「演技力云々」だったのかぁ〜! いやいや、だから私も、彼女の存在価値は演技とは関係ないところにある、と言いたいわけなんですが。
     だけどまあさんが正反対のご意見を書かれているように、彼女の性的魅力への評価はまっぷたつに分かれるようです。同性には同性なりの評価もあります。ちゃんと描きたいけれど、ここでは場違いなのでやめておきます。
     近々『誘う女』の板を立てましょう。彼女の出演作の中ではピカイチだと私は思っていますし、愛するホアキンくんも出ていることですし(*^.^*) そこで心置きなくニコール論をぶちかまそうではありませんか。
     アル・パチーノについての評にも膝を打ちました。ただし、私の場合は彼が嫌い。中傷と受け取られると困るのですが、生理的嫌悪感が……もっともこれは、『ディアボロス』の舌なめずりのせいかもしれません。キアヌ&シャーリズは好きなのに、このパチーノが気持ち悪すぎて、あの映画は二度と観る気になれないもので……

  • Re:場所を移りませんか?

    2002/09/04 by 未登録ユーザ 最大素数

    ときて『誘う女』とは、ちと出来過ぎ?笑

    > 彼女の出演作の中ではピカイチ

    では観ないわけにはいきませんね。観ないと始まらなさそうですし。
    なるべく早々に観るようがんばります(^^)。

    > 「演技力」を語る方が、実際にいらっしゃるという"現実"

    にビックリしたというのは、わりとそのままの印象なんですぅ。

    あ、そう言えば、アル・パチーノですが、

    > 生理的嫌悪感が……

    などと聞くと、お父上との仲を心配してしまいます。大きなお世話?そりはそうです。では"別室"で(^^)。

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