いま、会いにゆきます (2004)
»レビュー
TV鑑賞・・・原作未読・・・
2006/04/20
by
OUTSIDER
これは、完全なる寓話、おとぎ話である。
行き来する時間と空間、家の造りを初めとする環境、ゆったりと描かれる自然と風景、幾つもの小道具、とにかく柔らかいセリフ・・・。小さなハンディのある主人公の男とまだ幼い素直な男の子、そして二人を見守る人々は押し並べて温かくいい人ばかり。ゆえに・・・生活感、皮膚感は全くといっていいほど感じない。
全編に優しさが満ち満ちていて、変に構えているとこちらが気恥ずかしくなるくらいだ。この手が苦手な人なら、画面前から逃げ出したくなる世界観だろう。
当方は、個人的には、ここまで徹底してくれるとむしろ心地よく、割り切って作品の世界に浸れた。
主役の二人は、面白みはないが実直に演じていて好感が持てる。(というより、この内容ならこう演じるしかないだろう)。特に竹内結子。不足の女優が下手に手を出すと空回りして観るに堪えないものに成り果てる可能性すらあるキャラを、実にあっさりとこなしていた。ちょっとした表情、仕草、実に大したものだと思う。(他の誰かが演じたと想像しねえ。首筋が寒くなる)。
他の登場人物は、どれもキャラが均一化されていて、あまり印象に残らないのが惜しまれる。
妻が、確固たる意志をもって自ら進む道を決める。それが今作のキモであり感動を呼ぶ主流だが、これは冷静に別の面から見ると、彼女の身勝手なワガママでありエゴでもある。(愛してくれている夫とかわいい息子のためという自己弁護はあるにしても、いずれ二人を悲しませることは彼女自身にもわかっている筈なのだから)。
が、同時にまたそれは、彼女が自分の思い、愛情に忠実に生きた証しでもあって、元来、自己発信の愛情というのは多分に利己的なものだ。その潔さ、まっすぐさに、観客は胸を打たれるのだろう。(まあ、そうじゃなければ、映画にもならないわけで)。
終盤で繰り返される若い頃のそれぞれの視点による回想。
赤い糸伝説ではないが、現実ではあいまいだからこそ誰もが夢見あこがれる唯一絶対の相手との遭遇。運命。導き。こうしたドラマチック性を巧みに織り込んでいる。そうしたくすぐりが根底にあってこそ、よりピュア度が増すというもの。
ということで、こうした足が地に付いていない物語を、実にさりげなくシナリオに構築し映像に仕上げた作り手の細かい配慮と努力に感心した次第であった。(ま、原作読んでないんで、小説のテイストがどこまで料理されているのかはわからないのだけどね)。
このレビューに対する評価はまだありません。
※ユーザー登録すると、レビューを評価できるようになります。
-
彼女の覚悟
2006/04/20 by
STAYGOLD
なかなか的確なご意見だと思いました。
> 妻が、確固たる意志をもって自ら進む道を決める。それが今作のキモであり感動を呼ぶ主流だが、これは冷静に別の面から見ると、彼女の身勝手なワガママでありエゴでもある。(愛してくれている夫とかわいい息子のためという自己弁護はあるにしても、いずれ二人を悲しませることは彼女自身にもわかっている筈なのだから)。
そうですねー。ここは見方や恋愛観によって印象が随分変わってくると思います。確かに先にアーカイブ星に旅立つと言う意味では「彼女の身勝手なワガママでありエゴ」かもしれません。
しかし、彼女は自らの命を賭して「彼との分身をこの世界に招くこと」を選び、「短い時間の中でも彼を愛すること」を選び、「残された時間を愛すべき家族と暮らす」ことを選んだのです。
その選択によって彼や分身がこころに消えない痛みを刻んだこともたしかです。でも同じぐらい大切な想いを残したこともたしかなのです。出会わなければ、それはないから。
「雨の季節に戻ってくる」
彼と分身に残した、このことばの意味と重さ。彼女の覚悟の意味。その出来事が現実になった瞬間に彼の、分身の、そして彼女の、それぞれの抱えた痛みは失意や絶望や喪失から、未来へ、希望へと昇華した。私はそう感じました。ここが、この作品の背骨かと思います。
まあ、主演の二人がファンタジーをリアルに変えてしまった魔法がこの作品にはあったと言うことでしょうね。
> が、同時にまたそれは、彼女が自分の思い、愛情に忠実に生きた証しでもあって、元来、自己発信の愛情というのは多分に利己的なものだ。その潔さ、まっすぐさに、観客は胸を打たれるのだろう。(まあ、そうじゃなければ、映画にもならないわけで)。
概ね同感です。更にプラスして「自己犠牲」が内包されているかと思います。
私は原作で「いま会い」に出会い、その後原作者のホンを乱読(笑)しました。この原作者の描き出す世界は、どれもこのパターンのオハナシですね。いい意味で世界観が確立されている。別の意味ではワンパターン(笑)最近の新作「弘海」あたりでは、さすがに飽きてきましたが…。
ただ、秋に公開される「ただ、君を愛してる」は、映画製作者サイドが「いま会い」を深く研究して丁重に創りあげた作品でした。似てる画が多いのは、ちと残念ですが。原作では「おいおい(笑)」の部分も映画として、うまくまとめています。現在最後のブラッシュアップ中の模様。「いま会い」を飲み込める方ならご覧になるのも良いかもです。
あと、私はオンエアは観ていないのですが、かなりのシーンがカットされていた様です。非常に残念です。この作品には失くしていい時間などありません。ささいなシーンにも大切な意味があるのだから。 -
機会があればNCで
2006/04/21 by
OUTSIDER
STAYGOLDさん、初めまして。
レスありがとうございます。
あなたのお名前は、私がこちらにお邪魔するようになり、何かの作品で拝見してからずっと気になっておりました。(理由は言わなくてもおわかりですよね?)
そうなんですよね。本当にその人の今日までの生き方や考え方、暮らしてきた周囲の環境などによって、映画などの多面的芸術は意見や感想が異なってきます。でもまあ、人としてはその方がむしろ自然なのであって、作り手側は、どうしたら観客の大多数に感動を共有して貰えるかに腐心するわけです。(最初からそれを狙わないにしても、です)。
そういった意味では、普遍的なテーマを捉え、薄く広く(これは非難しているのではありませんので、念のため)世界観を拡げた本作は、憎らしいまでにそれに成功した作品だと言えるんではないでしょうか。学生時代のシーンひとつとっても、非常に浅いです。ですが、その浅さゆえに観客に自身の当時を懐古させる。これが、登場人物にあまり深く突っ込みすぎると、そのキャラ固有の世界観が全面に出て来ます。更にこれも、浅すぎると今度は軽くなる。そうではない微妙なバランスでもってこの映画は構成されている。学生時代だけではありません。極端な話、各シーン、各セリフにまで非常に気を遣っている。
間違いなくプロの仕事で、ちょっと悔しいながらも作り手の思う壺に私もはまってしまったようです。
こうなると気になるのは、STAYGOLDさんの言われているカットされたシーンですね。とても丁寧な創りの作品なので、機会があればぜひ全編をNCで観てみたいと思います。 -
ぜひノーカット版で。
2006/04/24 by
STAYGOLD
こんにちは。お返事どうもです。
そうですね。ぜひノーカット版をご覧になって欲しいなあ。
できれば劇場でご覧になるのが一番良いのですが…。
おそらくDVDやTVで観るとの全く違う感覚を感じると思います。
この映画は不思議な映画です。
おもしろいとか楽しいとか、そういう感じ方ではなく、なんかその空気に、その空間にずっと漂っていたいような、そんな作品です。なのでできれば映画館のような閉鎖された囲い込まれた空間でご覧になると、よりその感覚を感じるんじゃないかと思うのです。
私は映画を小難しく考えるよりはお気楽にエンタメとして楽しむ方のタイプですが、この作品では全く違う感じ方を掘り起こされてしまいました。故に思い出深い、想い深い作品のひとつです。
まあ、今は劇場鑑賞は厳しいですね。企画モノ館の上映とかじゃないと。ひょっとしたら秋の原作者の新作に合わせてイベント公開があるかもしれませんけど…。
機会があったら、ぜひノーカット版をご鑑賞ください。 -
そんなのあるのですか?
2006/05/30 by
水野秋雄
>機会があったら、ぜひノーカット版をご鑑賞ください。
いま 会いのですよね。
そんなのでてるのですか? -
ここでのノーカットの意味。
2006/05/30 by
STAYGOLD
民放でオンエアされた際にかなりカットされていた様なので、ここでのノーカットは「劇場公開状態(DVDも)で一切無意味なカットをされていない作品」のことを差しています。
もし「ディレクターズカット版」や「未公開シーンを加えたバージョン」があるなら発売(できれば公開)して欲しいですけどねー。
返信を投稿
Copyright©2008 USEN GROUP All Rights Reserved.








