博士の愛した数式 (2005) »レビュー

原作変えすぎには感心できぬ

60点 2008/02/24 by nonoyamasadao

博士の愛した数式

 このところ、毎晩DVDを観ている。でも、書くのはおととしに観た映画で、「博士の愛した数式」である。原作の小川洋子さんについてちょっと書く。「冷めない紅茶」から読んではいたけど、不吉な予感が漂う作風で、当初はとても微妙なポジションの作家だった。エッセイなど読むと、恐れ多い感じの人だが。。。まあ、皮肉を書いているのだが、似て非なりの江國香織ほど好きにはなれない。でも文体はスタイリッシュだ。彼女の嫌み加減が気にならなくなったのが、この原作のころからだ。

 小泉堯史監督は「雨あがる」から端正な画面構成で、フィックス・ショットが冴える正統派だ。この作品だとロケがよい。早春の樹木がきれいだ。黄色と白の花が遠景でぼやけて見える。あの黄色いのはたぶん、さんしゅゆ、連翹、むれすずめだろうとか、白いのはあせび、ゆきやなぎかなあとか、低木が気になってしょうがない。それが楽しいのだけど。空も澄んでいる。

 物語作家を峻拒する小川洋子さんだが、この作品だと、ストーリーテリングがうまくいっていて、喪失と愛惜が巧く配合されて暗くはならない。映画の好みなら文句なしだが、客観基準で採点するなら、年間ベストテンの圏外だろう。博士の記憶が80分というのは、短期的記憶を長期的記憶に変換できない失調をもつ「50回目のファーストキス」のドリュー・バリモアと同じである。採点が辛くなったのは、吉岡秀隆くんの回想から始まって、進行してゆくという展開が”あらぬこと”だからだ。その細工で失敗している。博士の寺尾聰、シングルマザー家政婦の深津絵里、少年の√クンだけで十分だ。義姉の浅丘ルリ子の役回りは実は深いのだが、巧く描けていない。

 エンディングの陽だまりのキャッチボールは、「フィールド・オブ・ドリームス」みたいでほほえましいが、やっぱり、原作の方がいろんな意味での一幕だったと思う。

 

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