浮雲 (1955)
»レビュー
女の体温を感じさせる名演!
2008/05/11
by
星空のマリオネット
成瀬巳喜男監督、1955年の作品「浮雲」。
黒澤監督「七人の侍」、小津監督「東京物語」、木下監督「二十四の瞳」等とともに日本映画史上のベストテンには必ず選ばれる、『女と男の物語』。
長い間ずっと観たかったのですが、なかなか機会がなく、やっと数年前に初めて観ることができました。それだけ期待感が膨らんでいたのです。しかし、よく理解できなかった。
私はその監督固有の映像感覚に惹かれるケースが多いのですが、成瀬監督の映像感覚が先ず分かりませんでした。それから、流されていく自堕落な女と男を演じた高峰秀子と森雅之の良さも。
今回、再度チャレンジしてみました。数日前に観た成瀬監督の「流れる」に好感を持てたので。
高峰秀子と女と森雅之の男。この二人がとにかく素晴らしかった!
以前観たときから高峰の巧さは感じましたが、森はつまらなかったのです。
ところが、あれから数年しか経っていないのに、今回、感じ方が全く違いました。
黒澤映画や溝口映画にもよく登場する優男の渋い二枚目森雅之。
冷たい印象を持たせつつ女を惹きつけてしまう罪な男。女が好きなだらしない男であり、成り行き任せの男であるけれど、生活に疲れた陰のあるニヒルな横顔が、この物語に救いようのない陰影を与えていました。彼の淡々とした演技が巧いのかどうかはよく分かりませんが、女が惹かれる男の存在を演じきっていたと思います。
高峰秀子さんは巧いけれど特に好きな女優さんというわけではありませんが、本作での彼女が演じた「女」は素晴らしかった。
原作(林芙美子)、脚本(水木洋子)とも女性の手になる本作を成瀬が監督をすることで、女の目と男の目の双方から描かれた「ゆき子」という女性像。その女性像に渾身の演技で見事に応えた哀しい瞳の高峰。
充たされない愛に生きた女の体温を感じさせてくれる名演でした。
成瀬監督の映像からは、溝口、黒澤、小津のような固有の映像美の存在を感じることはできませんでしたが、等身大の女と男が醸しだすやるせない空気感にどっぷり浸かることができた2時間。
いい歳になってからでも、感じ方は変わるものですね。
PS
ベストテンの常連には、他に、内田監督「飢餓海峡」、山中監督「人情紙風船」、川島監督「幕末太陽伝」、溝口監督「西鶴一代女」(残念ながら未見です!)等々、時代を乗り越えた名作がそろっています。それぞれに、独自の映像美学と世界観を持っている映画だと思います。
ベストテンとなるとどうしても古いモノクロ映画ばかりになる傾向がありますが、いま初めて観ても十分面白いと思いますし、何かを発見することができるのではないでしょうか。
このレビューに対する評価はまだありません。
※ユーザー登録すると、レビューを評価できるようになります。
返信を投稿
Copyright©2008 USEN GROUP All Rights Reserved.








