雨月物語 (1953)
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後悔先立たずな男たち
2007/06/20
by
くりふ
フィルムセンター等での上映を知る度、観ようと思いつつ果たせず、結局DVDにて。でも面白かった!
上田秋成の原典はきちんと読んでいないのですが、この映画は怪談というより、怪異の要素を盛り込んだ夫婦哀話といった風ですね。痛い目をみないと懲りない夫と、彼を赦す、というか赦さざるを得ない時代に生まれたばかりに苦労する妻、そんな夫婦二組、それぞれ違ってゆく運命をめぐる物語。
原作に当たる「浅茅が宿」って、要は牡丹灯篭の話なんですね。子供の頃TVで見た、大映だったかの映画版牡丹灯篭がけっこう強烈だった記憶があるのですが、それに比べると本作、怪談臭はあっさりしたものです。怨みや呪いといった負の情念が薄く、後をひきません。
元々、牡丹灯篭って明時代の中国で書かれた物語らしく、その元祖版では、日本で親しまれている物語のさらに後日談があって、何と言うか、さすが中国(?)という風な殺伐とした結末なんですね。日本版はいわば心中物語ですが、中国版はまるでハードSMのようです。そこから比してしまうと本作はホント、怪談サラサラ茶漬けです。怪異現象自体、あまり出ませんしね。でもそれがマイナスとは感じません。恐怖ではなく哀しみを描くお話ですから。
イントロからしばし、状況描写ばかりが続くかに思えてちとダレましたが、船である場所へ旅立つあたり(『岸』が運命を隔てる)から、じわじわ物語がヒートアップしていきます。面白かったのは、サスペンスがずっと持続していること。バラバラになってゆく主役4人の運命が、一瞬先どうなるかわからない不安感に包まれていて、観ている間、文字通りサスペンドな状態がずっと続きます。人物描写の切り替えが巧妙で、この先どうなるの? と思わせてすっと、別の人物へとスイッチし、4者全員の行く末が気になって仕方がない。
ファム・ファタールな若狭役、京マチ子には、初アップ登場時に「顔ブーデーじゃん!」と驚いた。現代の感覚からするとど〜も…。正月にモチ喰い過ぎたキルスティン・ダンストかと思った。乳母が初心な話で彼女を褒め語るけれど、若狭は処女じゃなく、何度も男を『喰って』きたんだろうと思った。その貪欲さゆえの肥り肉があの顔なんだと後から感じ、だとしたらうまいキャスティングと思った。
怪異登場シーンは美しいです。キレイだけど背筋がすこしゾゾゾします。日暮れと共に、しんとした屋敷に蝋燭の火がぽつぽつ灯り、そこが娑婆から彼岸へと移る様子が特撮なしでもきちんと感じられました。サブリミナルのように鈴の音を入れるBGMも効いていた。
何にせよ、本作はこの先も古典として残ってほしいな、と思いました。
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