銀河鉄道の夜 (1985)
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静謐の青。
2008/04/06
by
黄金のキツネ
原作から想像していた幻想4次の銀河空間は、映画とは少し異なっていた。プリオシン海岸近くの水晶の砂はもっと美しいものだと思っていたし、アルビレオの観測所ももっと壮麗で輝かしいもの、それこそトパーズとサファイヤの燦然とした輝きを持つものを心に浮かべていた。また赤い蠍(さそり)の火はもっともっと壮大なものだろうと考えていた。原作は、その文章から想像しうる世界が映画よりはるかに自由度が大きく豊穣だ。素晴らしい文学作品だと思う。
またジョバンニがさまざまなシーンで何を思っているのかは、原作のほうがより詳しく描かれている。カムパネルラとの間に割り込んでくるさまざまな人達に対するジョバンニの複雑な感情は、映画だけを観ていると今ひとつ曖昧だが、原作ではそれが詳しく分かり、ジョバンニという少年の繊細さに打たれる。
でもこの映画は映画特有の素晴らしさがある。原作では三人称的目線でジョバンニを描いているが、しかし映画ではジョバンニの一人称で語られる。だからジョバンニへの共感や感情移入は原作よりもはるかに自然で容易だ。これが映画というメディアの特徴なのだろう。
銀河鉄道が進んでゆくにつれ、次第に濃密になってゆく死の香り。観ている内に心の底が徐々にざわめき、息が苦しくなってくる。ジョバンニのカムパネルラに対する想いがあまりにも一途過ぎるのだ。だからこそ、「決定的なでき事なんか、起こるんじゃない!」と、願わずにいられない。
列車の中を走りながら、「カムパネルラ!」と必死に叫ぶジョバンニ。このシーンはいつ観ても切ない。
また原作にはないが、すべてを知ったジョバンニが川のほとりに佇んで、心に誓う「赤いサソリ」の話は、少年期特有の純粋さにあふれ、いつも涙がにじんでしまう。よくぞこのタイミングでサソリの話をシナリオに入れてくれたものだ。その絶妙さに、監督、脚本家に本当に感謝したい。もちろん声優の田中真弓さん、名演技をありがとう。細野晴臣さんの音楽は、もう素晴らし過ぎて言葉が出ない。
映画の感想は、絵としては「静謐な青」、心情としては「繊細」、「寂寥」、そして「哀切」でした。
映画も原作も、単体だけでも日本の宝ですし、お互いに補完しあっている面もあります。
大好きな作品です。
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