亀は意外と速く泳ぐ (2005)
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既成のコメディ映画では絶対に予測不可能ギャグ
2008/04/15
by
牧坂満
定型化されてしまったコメディ映画に慣れ親しんできた世代にとっては予測不可能なナンセンスなギャグを盛り込んだ傑作です。それは、男が女に抱く恋愛感情の勘違いの面白さに、古典落語のエッセンスを交えた「男はつらいよ」シリーズでもなく、東宝映画の「駅前・シリーズ」や「社長・シリーズ」でもなく、東映映画が描く下ネタ風・ベタなギャグでもないのですから、見始めてから私の思考回路はショート寸前に陥ってしまったのです。
冒頭は団地の一室での色彩感覚の“妙”です。一世を風靡した旧・日活映画の鈴木清順監督の画面を彷彿とさせる色遣いに、三木聡監督の才能が伺えます。出演者は「スウィングガールズ」でファンになった上野樹里と「花とアリス」の蒼井優という若手屈指の芸達者二人の脇を固めるように、演劇界の鬼才、個性派性格俳優が総動員されています。そんな芸達者たちが各人の個性・資質を発揮して見事なギャグのコラボレーションを完成しています。ネタばれになるので書きませんが、帰郷したヒロインの上野樹里を迎える父親の岡本信人がとった行動などは、既成のコメディ映画では絶対に予測不可能です。
映画の題名「亀は意外と速く泳ぐ」は“知っている筈の日常生活の中にも未知の世界があり、それを知ることで少し幸せになる”という意味が込められているようですが、生ぬるく脱力したヒロインの上野樹里そのものを形容しているのではないでしょうか。映画画面全体に漂う洒落たセンスと絶妙な脱力感がとても心地よく、脱力系映画作家・三木聡監督の登場を大歓迎します。
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