ミュンヘン
(2005)
»レビュー
ミュンヘン〜愛のテーマ
2006/02/20
by
ペンギン
オープニング間もなく「今度はこう来たか」と思いました。
スピルバーグの映画はいつも何か他の映画にはない仕掛けが用意されているので、先ずはそれを見つける事が楽しみになっています。
私は「ALWAYS三丁目の夕日」のクチコミで「ある時代を再現するには小道具や時代考証の他に、映画に於いてはその時代の映画の演出や台詞をまねる事も効果的だと思う」と書いたのですが、この映画ではまさに1972〜1973年を再現するに当たって実に丁寧にその時代の映画をなぞらえて作られていたので「我が意を得たり」と、ほくそ笑んでいました。
この映画では演技の演出よりもカメラアングルやライティング、構図の取り方、編集のリズムなどに随所に当時の手法が使われていましたね。
BGMにもそれが感じられ、ジョンウイリアムスも器用な職人やなぁと思ったのでした。
パレスチナ、イスラエル紛争というデリケートな題材を、「仁義なき戦い」や「ゴッドファーザー」などの暴力映画の手法を使って、イスラエル、パレスチナ、そしてフランスの情報屋一家を交える事で、国家間の紛争をまるでマフィアのファミリーの抗争ような描き方で見せて行きます。
フィルムの質感自体も深夜のテレビで昔の映画を観るような赤く変色し、ざらついた感じに仕上げていて、あたかも70年代の古い映画を観ているような錯覚を起こさせようとしています。
1974年のコッポラの名作「カンバセーション〜盗聴」を思わせるシーンもあったりして、凝りに凝っています。
ここではすでに、スピルバーグ自身がユダヤ系であると言う事は、さほど意味を持たないのではないかと思いますが、とはいえ、職人技を見せつける彼お得意の「なんちゃって映画」と、くくってしまうのはあまりにも不謹慎だとも思います。手法は別にしてテーマにはまじめに取り組んでいるのだと思いたい。でないとあの重厚感はやはり出ないと思うし。むしろ重いテーマをなんとかエンターテインメントに仕上げるために選ばれた手法だったのでしょう。
ひとつ、日本語字幕で不満がありました。
台詞の中の「チャールズブロンソン」を、若い観客を考慮してか「無頼漢」と訳していましたが、ここはこの映画のテイストや、スピルバーグの意図を汲めば「チャールズブロンソン」のままで行くべきだったでしょう。映画の印象が全然違ってきます。
「それって誰?」と言うような若い人は大人に尋ねるなり自分で調べるなりすればいいのです。
あと、ネクタイの結び目はもう少し大きい方が良かったかな?
数年に一本の超大作を撮る監督から、ここ数年、コンスタントに中距離ヒットを狙うアベレージヒッターにシフトしてきた感のあるスピルバーグですが、本当に地味な職人監督になる気があるのか、それとも「こんなのもあんなのも撮れるんだよ」というアクロバチックな「なんちゃって映画」を撮って行くのか、あと数本観なければ答えは解らない。
依然、目が離せない憎い人ではあります。天才はやっかいですね。
ところで、主人公の奥さんが妊娠している時の体、あれって特殊メイク?
すっごくリアルだったんですが。わざわざ妊娠している女優を使ったの?まさか映画のために妊娠出産したなんて事無いですよね。
これが一番のスピルバーグマジックでした。
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