小説家を見つけたら (2000) »レビュー

深いお話の表層だけお見せしましたって感じ

60点 2005/07/22 by 理屈屋

悪い作品ではないと思いますが、踏み込みが全然足りないと思います。
文学を志す、パスケの達人でもある黒人少年が、白人の超一流進学校に通う事の不自然さ、ここに居て良いの?感が、あまり感じられません。幼馴染やガールフレンドとのシーンで申し訳程度に時々見せるくらいです。
少年生まれ育った町は、一体どんな町なのか?
16歳まで無事に生きられただけでも幸運なのか?
家はどれほど貧しいのか?
父親はどんな父親で母親はどんな苦労をして来たか?
なぜ少年は文学の才能があるのか?
などなどなど、今の少年を形作ってきた今日に至る背景が、ほとんど感じられません。描かれているのは隣の家から悩ましい声が聞こえて来るということだけです。しかもそのシーンは2度も入っています。
一方、小説家の方はと言えば、こちらも何かいわく有りげな存在であるにもかかわらず、ほとんどその説明がされていません。物語の主題の一つが「なぜ彼は1冊しか書かなかったか?」であるので、後半当然この話で盛り上がるのだろうと思っていたのに、思いっきり肩透かしを食いました。ラストシーンに少しだけ、申し訳のようにこの点に対する回答が見えていますが、余りに手抜き、不親切としか言い様がありません。
小説家の兄の話や人ごみを恐怖するようになった経緯など、描かなければならない事はたくさんあるのに、こちらもほぼ手付かずに放置されています。
国語の先生もまた然り。小説家の口からなぜ先生がそうなったか、言葉で説明していましたが、彼の悔しさ、嫉妬、そしてなぜ彼があのようになってしまったかなどは、充分物語の核心に触れる部分であるので、独自の回想シーンなどを入れて描くべきだったのでは?と思います。先生と小説家の回想する記憶が、微妙に違っていたりすると、観客は人生の皮肉や、主観世界と客観世界の二つが同時に、しかも異なって確かに存在することや、成功・失敗の原因とは何か?を感じて、物語に引き込まれたのではないかと思うと、とても残念です。
とにかく、時間を問題にしなければ、この作品には描きたい事がいくらでもあるように思います。
それをおそらくは時間の関係で、少年と作家のみに焦点を当て、白人の老人と黒人の少年の友情物語としてしまったのであろうことが非常に残念です。
練りに練って、多少時間が長くなっても、少年と小説家と国語の先生の3人の、文学への想いと人生での挫折と成功を描こうとしたなら、不朽の名作となったかもしれません。
繰り返し非常に残念に思う作品です。

 

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