戦場のアリア (2005)
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戦争の愚かしさを描いた悲喜劇
2008/05/19
by
牧坂満
第一次世界大戦下のフランス最前線で、クリスマスイブの日に実際に起こった出来事を基にした感動のドラマです。小学生に敵国を罵らせる冒頭のシーンから、画面は空撮された湖沼、平原を描きながら、教会へ自転車で向かう青年を鳥瞰する戦争前の平和なひとときの場面が見事です。
最前線にはスコットランド軍、フランス軍の同盟国に対してドイツ軍の塹壕がそれぞれ構築されいるが、最前線での戦いに傷つき疲れ果てた戦士たちの心情が痛感されます。三つの国全てがキリスト教国家でありながら、殺し合わなければならない不条理。お互いの戦士に厭戦感も起きてくることも推察出来ましたが、これがキリスト教VSイスラム教といった異なる宗教であれば、このような奇跡は起きなかったのではないかとも思ってしまいました。
荒廃した戦場に戦士でありながら、オペラ歌手でもあるドイツ兵が「清しこの夜」をテノール(※ロランド・ヴィラゾンの吹き替え)で歌い始めると、それに呼応するようにスコットランド兵がバグパイプを奏でる。奇跡の始まりを感じさせる見事なシーンです。
三国の指揮官たちは誰ともなくクリスマス休戦を提案します。半信半疑ながらも塹壕から出て来た戦士たちは、相手国の言葉で挨拶を交わし、相手国の名所旧跡を褒め合う。妻子の写真を見せ合い、チョコレートやワインを交換し合ったりして二日間の平和なひと時を過ごすのです。国民性や文化の違いに戸惑う描写も自然で、思わず笑みがこぼれました。言葉の疎通がなくても触れ合える人間の優しさに心が洗われるのです。雪景色の中で国境・宗派を超越して行われるミサとダイアン・クルーガーが演じるドイツ人ソプラノ歌手(※ナタリー・デッセーの吹き替え)の澄み切った歌声は、荒廃した各国戦士たちの心を癒し、荒廃した筈の戦場は幻想的なまでに美しく感じられるのです。
ヒューマニズムに目覚めた戦士たちは最早、敵兵とはいえども殺すことが出来なくなります。映画は遠くの砲火を無常に描いて戦争の現実を知らしめます。しかし、厭戦感を抱いた指揮官たちは更なる悲喜劇を演じてしまうのです。戦争の愚かしさと、各国の指揮官たちを待ち受ける苛酷な運命に感情を揺さぶられ、涙が溢れて止まらなくなる名画でした。
【BS朝日放送】鑑賞
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