明日の記憶 (2005)
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フィクションとしては佳作ですが
2006/06/17
by
倉島穂高
うちの亭主もほぼ同じ年回りなので、人ごとではありませぬ……
ひとつの架空の物語としてのみ考えるならば上出来だと思います。私はどんなにメッセージ性が優れていようとも、あるいは実話を忠実に再現しているとしても、映画としての魅力(物語そのものの面白さとか、俳優の卓越した演技とか、映像の美しさとか、音楽とのコラボレーションなどなど)がなければ映画にする意味がないと思っています。しかし映画として魅力的ならそれでよいのかというと、そうではない場合もある。取り上げるテーマによっては、作品としてのクオリティとは別に、世間一般への説明責任を背負う覚悟を決めなければいけないと私は考えています。
まず物語としての出色の点を挙げるなら、主要な脇の人物たちが善玉一辺倒・悪玉一辺倒でないところが素晴らしい! イヤミなクライアントの香川照之(この人の演技力は今の日本の中堅俳優の中でもトップクラスかも)、一見無味乾燥な医者の及川光博、ちょっと情けない部下の田辺誠一、陶芸教室の木梨憲武、陶芸の師匠の大滝秀治、妻の友人の渡辺えり子……いずれもが多面的な奥行きのある人物造形であることに感心しました。映像も音楽も美しく、都会と田舎の対比もよかった。
しかし多少なりとも介護の現実を知る目で見ると、やはりあまりにも美化しすぎというか、介護を担う人間にとっての地獄を描いてなさすぎ。この作品はあくまでも主人公の立場から「自分が自分でなくなっていくことの恐怖」を描いたところが特色だとは思いますが、なまじ樋口可南子の演技が完璧なだけに、世の中の男性一般が自分の妻や嫁に対してもともと持っている幻想をいっそう募らせるかと思うと、「すばらしい夫婦愛に感動」というところに落とされたくはなかったな、と感じてしまいます。ひねくれているかしら。奥多摩からの帰り道が、実は本当の地獄の実質的なスタート地点なんですよね。夫婦の絆を強調するならば、もう少し家族の歴史を説得力のある描き方にしてほしかった。
ただ、私の感じている不満はもしかしたら編集に起因しているのかもしれません。公式サイトを見ると、主要人物の設定が意外に詳しいんですよね。でも映画を見ている間、それぞれのキャラにそんな設定がされているとは全然感じられませんでした。これはどうも役者の芝居や演出の演技のつけ方の問題ではなく、重要なシーンや台詞を編集でカットしてしまったっぽい感じがする。前述のように、各人のアンビバレンツさはよく描かれていましたから。
坂口憲二がなぜ3番目にクレジットされているのか心底理解に苦しみます。『医龍』でもあまりの芝居下手に呆れかえりましたが、本当にとてつもない大根だな。ちょっと前のドラマのチョイ役出演とかCMを観て、さわやか青年としてむしろ好感を持っていたのに……。出演シーンが大幅にカットされているに違いない、と一番感じたのが彼です。観るに耐えない演技なので切られたのかと勘ぐってしまうわ。
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