鉄コン筋クリート (2006)
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空の色が黒くなるとき
2007/04/21
by
根無し葛
すごい映画だなあと思います。
観終えてからかなりたちますけど、日増しにその思いが強まってきます。
冒頭、シロとクロの二人を支え、包み込み、育み、ときとして牙を剥く「町」、その「町」が極彩色の圧倒的な存在感を持って迫ってきます。
どこにでもあるようようでいてどこにも存在しない世界。
猥雑でエネルギッシュ、萩原朔太郎が『浅草公園雷門、カフェ、劇場、音楽、理髪師、淫売、家主、学生、大人に子供、ああ愉快なるメリイゴーラウンド、廻転木馬の上の東京大幻想楽』とうたったような町。
この町の総天然色が鮮やかに見えれば見えるほど、次第に、空間に潜む闇の部分が、カラスの黒が、ふとした物陰の暗さが、際立って見えてきます。
そしてすべてを黒く闇に包みこむ夜。
夜の闇を前にしてシロがクロに語りかける言葉が印象に残ります。
「夜って悲しい気持ちなのね。きっと死んじゃうこととか考えちゃうからだな」
限りなくせつなくて儚くて、それでいて心優しいつぶやき。
なんだか、これから夜の空をふと見上げるたび、イメージの中に蘇ってきてしまいそうです。
かって「銀河鉄道の夜」に初めて接したとき、同じような気分にさせられてしまったことを思い出します。
みんなの幸せのためならあの"蠍座のさそり"のように、自分のからだなんか「百ぺん灼いてもかまわない」とカンパネルラにいうジョバンニ。
夜の黒さに向かい合うとき、"少年たち"は、自分を放り出し、空のずっと奥の奥まで見通してしまうことができるのかもしれません。
「この自分だってかっては」と思いたいけれど、長い年月の間に心にこびりついてしまった殻の多さと重さに、ただ戸惑ってしまうばかりです。
ついでに今の自分の心から「損なわれてしまった」ネジの多さにも。
そんなネジを、誰かが、シロのような誰かが、自分の代わりに持ってくれていると思えたら、「人の世で生きていく」っていうことも捨てたものではないんだけどなあ、という気がします。
4人がこのレビューに共感したと評価しています。
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Re: 空の色が黒くなるとき
2007/02/12 by
黄金のキツネ
> すごい映画だなあと思います。
> 観終えてからかなりたちますけど、日増しにその思いが強まってきます。
ああ本当にそう思います。実は私はリピートしに映画館まで行ったのに、前日で公開終了と告げられたときには愕然としましたっけ。
> 冒頭、シロとクロの二人を支え、包み込み、育み、ときとして牙を剥く「町」、その「町」が極彩色の圧倒的な存在感を持って迫ってきます。
うんうん、本当にそうでした。「目の前に宝町がある!」と思えてくる存在感でした。私もグイグイと引きこまれていました。
> 「夜って悲しい気持ちなのね。きっと死んじゃうこととか考えちゃうからだな」
> 限りなくせつなくて儚くて、それでいて心優しいつぶやき。
こんなセリフがあったんですねえ。忘れてました。ほとんど何も考えられないくらいに、断片的な記憶しか残らない程度までに映画の中に没頭していました。今おぼろげに思い出しつつあります。
> かって「銀河鉄道の夜」に初めて接したとき、同じような気分にさせられてしまったことを思い出します。
> みんなの幸せのためならあの"蠍座のさそり"のように、自分のからだなんか「百ぺん灼いてもかまわない」とカンパネルラにいうジョバンニ。
あのシジョバンニとシロとを。うーーん、なっとく、なっとく。
> 夜の黒さに向かい合うとき、"少年たち"は、自分を放り出し、空のずっと奥の奥まで見通してしまうことができるのかもしれません。
"少年たち"はそれを理性ではなく、生来の性質でするんでしょうね……。それにしても根無し葛さんの言葉のイメージはすごいですね。感心を通り越し感動しました。
> 「この自分だってかっては」と思いたいけれど、長い年月の間に心にこびりついてしまった殻の多さと重さに、ただ戸惑ってしまうばかりです。
> ついでに今の自分の心から「損なわれてしまった」ネジの多さにも。
自分の中で増大し肥え太り続ける“クロ”の部分。それに反してやせ細ってしまう“シロ”の部分。それを自覚してしまうと辛いですよね。それを感じないですむ性格に生まれつきたかったなぁ、なんて思っちまいます。
> そんなネジを、誰かが、シロのような誰かが、自分の代わりに持ってくれていると思えたら、「人の世で生きていく」っていうことも捨てたものではないんだけどなあ、という気がします。
ええ、周りにはきっとそんなネジを持っていてくれる人がいるんだと思いますし、自分の中にもまだそんなネジが残っているんだと信じたいですね。
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3,4年前からいろいろな方の映画感想文を読むようになりましたが、一番心を動かされた文章でした。ありがとう。 -
Re: 空の色が黒くなるとき
2007/02/14 by
根無し葛
黄金のキツネさん
丁寧なレスをいただき、ありがとうございます。
映画を観て心を揺さぶられる体験をしたとき、"言葉"なんて無力だなあと思うことがしばしばです。
映像による衝撃や感動を言葉に置き換えようとすることがむなしい営みのように思えてしまって。
それでも、言葉にしないと見えてこないものもきっとあるんですよね。
言葉にしてはじめて分かってくることも。
冒頭で、「すごい映画」だと思うと書きました。
すこしだけあらためます。
すごくて、そして「愛おしい」映画だなあと思います。
>周りにはきっとそんなネジを持っていてくれる人がいるんだと思いますし、自分の中にもまだそんなネジが残っているんだと信じたいですね。
ほんとうにそう思います。
気が付いたら索漠とした荒野にひとり立ち尽くしている(取り残されている)なんていうのは、あまりいい気持ちのするものではないです。
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