黒人女 (1966) »レビュー

自己実現

100点 2006/07/11 by アキラ

差別はいかにして起きるか。その言葉に陰惨で暴力的なリンチを連想する人も少なくないだろう。だがリンチにまで至る場合は大抵別の因果が絡んでるものだ。KKK団が黒人青年を去勢するなんて事件はモテない白人男の嫉妬が混じってたりもする。劣等種と認識してる男を親しい女が気まぐれで褒めただけでも卑しい詮索をする男だっているのだから。差別は人を苦しめるが殺す訳じゃない。人を殺すのは高過ぎる理想だ。安易な未来へ手を伸ばそうとする焦りが他人を踏み潰す。マルキズムもマチズムもマオイズムもシオニズムも現実との間が離れ過ぎているから殺人を続けた。この夫妻も使用人により良い仕事を求め、使用人がごく普通に持つ自己実現の夢と食い違っただけだった。

初期短編『ボロムサレット』にしても処女長編である今作にしてもここまでレベルが高いとは驚いた。佐藤忠男氏が云うにはこれよりも『郵便偽替』が有名でこの2作で初めてアフロ系映画が世界に知られたらしいが、個人的にはこっちの方がより鋭く迫った。一般的には差別を描いた作品と呼ばれるが、その差別の壁にぶつかった彼女の向上心や感情こそが重要なテーマに思える。伝統造形によるマスクが象徴するように幼いながらも仮面を被り自己実現を求める女性のドラマが強く訴えかける。このマスクの使い方が絶品だ。子供に担わせるとは過激。末代まで祟るって言葉があるけどそれに似た怨念さえ感じさせる。その声にならない声が静かに激しく噴出す。

 

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