太陽 (2005) »レビュー

カリスマとカリスマ性

70点 2007/08/13 by 理屈屋

太陽

う〜ん、不思議な映画でした。
DVDをレンタルして見ましたが、全編夢を見ているような映像だったのが、強く印象に残りました。

昭和天皇ヒロヒトが、ポツダム宣言を受諾する決意を表明した御前会議から、人間宣言を行うに至るまでの数日を、「人間ヒロヒト」というテーマで天皇にフォーカスを当てて、淡々とその生活ぶりを見せていきます。

まず、この作品の特徴として挙げねばならないのが、軟らかく、しっとりとしていて、そしてとても不思議な印象を受ける映像で、見る者はきっと、非常に現実感に乏しい感じがして来るのでは?と思わされるところでしょうか。敗戦直後の瓦礫と化した街中を映し出したりもするのですが、悲惨さとか生々しさのようなものが感じられないんです。「はぁ〜、天皇が見てる世界って、こんな感じ?」ってーのが、だんだん飲み込めて来るように思うのが不思議です。

で、次にそれにも絡みますけれど、「面白いなぁ〜ッ」って思ったのが「カリスマ」と「カリスマ性」ってことですね。
あの当時の天皇ってのはたぶん「カリスマ性を持ったヒト」ではくて、「カリスマそのもの」だったんでしょうなぁ。ヒトラーとかとは根本的に違うんですな、カリスマ性という点において。
「カリスマ性を持つヒト」が、何らかの目的のために求めてそれを得たのとは違うんでしょう、たぶん。
天皇ヒロヒトは生まれながらに「カリスマそのもの」なんですよ。で、本人の望み通り、やっと「人間宣言」によってそれから解放されるのか?ってことに喜びを感じているようなんですね、むしろ。
いや、その辺りの苦悩なり違和感なりに、月並みではありますが、グッと来るものはありますよ。

がしかし、が、しかし。
このお話はとても悲しく切なく苦しい感じを受けて終る事になり、天皇ヒロヒトが感じたであろうその哀しみこそが、まさに彼の人間宣言そのものであったろうにも関わらず、その哀しみを、まるで当然のことのように背負ってしまって疑わないこと自体が、実は人間ヒロヒトに与えられた宿命である「カリスマであること」の証明になっているとさえ思わされてしまい、カリスマならぬ身でカリスマとしての宿命を負わねばならない、何とも言えない「天皇」って存在の在り方に、愕然として見終えるのでありました。

「うるせー、バカヤロー。そんなこと知るか−ッ、俺とはかんけーねー!」っとは絶対に叫ばない、叫べない、悲しきヒロヒトでありました。


面白い作品でした。
実を申しますと、私は天皇制不要論者なのでありますが、「支配者階級たるに相応しい「高貴な血」というものが“確かにある”」と、説得されてしまいそうであります。

 

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