手紙 (2006)
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自分のために赦しを乞うな、自分のために誰かを憎むな
2006/12/09
by
理屈屋
「手紙」、素晴らしい作品でした。
強盗殺人の罪で無期懲役の刑を受けている兄を持つ、弟が主人公の物語です。
心優しく、真面目で頭も良いこの主人公は、強盗殺人犯の弟というレッテルのために人生を台無しにされてしまいます。
強盗殺人なんかした兄が悪い。
本人の人柄を見ないで、殺人犯の弟というレッテルを貼る世間が悪い。
差別なんて醜い行為をする、人間というものがそもそも醜すぎる…。
主人公の青年も、観客である私も、絶望的にいろいろなことを考えさせられます。
でも、作者は「そうじゃない」と言ってきますね。
加害者は、被害者や遺族のためでなく、自分のために謝っている。
被害者の遺族は、被害者のためでなく自分のために犯人を憎んでいる。
主人公の青年も、自分のために世間を憎み、兄を憎み、被害者に謝っている。
被害者の息子を演じた吹越満さんのセリフが感動的でしたね。
「もう、いいじゃないですか。終わりにしましょう」
知らず流れる涙に気づきませんでした。
人間はそもそも、愚かで貪欲で無知で不合理な存在です。
合理的に考えて、それらの欠点をなくそうとしたり、改善しようという努力は必要だと思いますが、
実際の問題はそれでは解決しない、と作者は言ってきます。
悲劇が起こってしまったら、加害者であろうと被害者であろうと、結局、関わった人の全てが、傷ついているのではないですか?と言ってきます。
自らの愚かさと、人間や世間の愚かさを受け入れるのだ、そして忘れなさい。
加害者が自らが起こしたその悲劇を受け入れて、誰かに何かを訴えるのではなく自らの罪をただ自ら見つめ認める事だけが、被害者への最高の謝罪ですよ。
そして被害者も、その悲劇そのものを忘れてあげることが、自らのためでもあり、加害者への最大の赦しですよ。
自らのために人を憎んではいけない。
自らのために人に許しを請うてもいけない。
愚かな人間というものを受け入れ、そして赦し、悲劇そのものを忘れなさい。
それが自分自身や、何より愛する人や子や子孫にしてあげられる唯一のことではないですか?
そういうメッセージを強く感じます。
知らない間に感動の涙が溢れ流れていた、素晴らしい作品でありました。
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