武士の一分 (2006)
»レビュー
一編の童話のように
2007/01/20
by
根無し葛
見終わった刹那、オー・ヘンリーの「賢者の贈り物」という短編小説をなんとなく思い出していました。
「喜びも悲しみも幾年月」的なものとも、「植村直己物語」的なものとも、「グレン・ミラー物語」的なものとも違う、どこかほのぼのとした夫婦愛。それを衒うことなく、こういうカタチで真っ直ぐに描いてみせてくれる映画って、意外と例が少ないような気がします。きっと私の見聞が狭いだけかもしれないけど。
それはともかく、主人公を見舞う試練はかくも重苦しいものなのに、こんなにも「ほのぼの感」を漂わせてくれるその後味のよさに、なんだか嬉しくなってしまいました。
夫婦といっても所詮は他人といわんばかりに、仲違いが臨界点を越してしまったあげくの事件が世間をにぎあわせています。そこまではいかなくても、深刻なDVによるトラブルは底辺がずいぶんと広がっているみたいだし・・。
一方、高齢の(あるいは高齢を迎えつつある)夫婦にとっては、配偶者に対する介護は、まさに「いまそこにある」問題の場合が多いでしょう。反面、自分自身が「要介護」な状態となった場合についての漠然とした不安を感じているひとも多いかもしれない。
夫婦で助け合って生きていくっていうのはなかなか綺麗事ではいかないことだし、かといってひとりで生きていくことは、それはそれで大変だろうし・・。
でも、この映画を観終わると、なんだか束の間、ふんわりとした気分にさせられます。夫婦が夫婦として当たり前に添い遂げる。それは格別難しいことでもなんでもないんだ。そんな幸福な気分に包まれます。
それって、所詮、現実から目を背けた幻想なんでしょうか。まあ、幻想でもいいじゃないか、と思います。あさき夢みし酔いもせず。幻想も与えてくれない映画なんて味気ない。
そんなわけで、やっぱりこの映画、とっても好きです。
1人がこのレビューに共感したと評価しています。
※ユーザー登録すると、レビューを評価できるようになります。
-
根無し葛さんへ。あなたの背筋に感動・・・
2007/07/23 by
Black-Pandola
シナリオ制作の現場に居るものとして、観客の方々の反応には、でき得る限り眼を通すよう心がけていたところ、思いがけず一服の清涼剤のようなあなたの投稿に出会い、PCに向かってしまいました。
寝食を惜しまぬ作り手の情熱と、金銭で娯楽を買う立場の観客の方々との間には、埋められぬ温度差が生じるのはいたし方ありません。
しかし今日、そんな温度差になど眼もくれず、真っ直ぐな視線で、純粋に作品を楽しんでくださる、あなたのような"鑑賞者"がいらっしゃることを知りました。
根無し葛さんは、まるで気に入った茶碗を愛でるように、映画を楽しんでおられる。
あなたはきっと芸術も娯楽も、日常の人間関係も、下世話な批評などなさらず、ゆったりと観察し、観照し、人生観を通した自分のものの見方や考え方をご自身で"楽しむ"方なのでしょう。
「武士の一分」全てのレビューの中でも、傑出して知性的なお人柄を感じたため、思わずこのような返信をしてしまいました。これからの仕事は、あなたのような真っ直ぐな鑑賞者を念頭に、心楽しく七転八倒していけそうです。ありがとうございました。 -
Re: 一編の童話のように
2007/07/23 by
水差し観音
褒めてくれたら誰でもうれしいのは分かるけど、いやしくもプロなら客の資質を(良くも悪くも)あれこれ言うべきではないと思うけどなー
-
Black-Pandolaさん
2007/07/24 by
根無し葛
Black-Pandolaさん、こんにちは。
たいへん丁寧なレスをいただき、ありがとうございます。恐縮してしまいます。
映画を「作る」立場におられるんですね。形のあるものを作り出すって、大変なんだろうなあと、なんとなくは想像できます。先日、「料理を趣味に」と思い立ち、和風パスタを作ってみました。なのに家人一同、迷惑顔。ちょっとしょっぱかったみたい。「隠し味」の「柚子」に気付いてもくれません。ぷんぷんしてしまいました。まさに作り手と受け手の「温度差」というものなのかもしれません(ちょっと違うような気もするけど)。でも、いいです。どんまいです。
「日常の人間関係」って、日々生起するあれこれの積み重ねなんでしょうね。ここでも「温度差」にやけどしてしまいそうなことばかり。「まったくもう、やってられないよー」っていう感じで、ひとり、グチをこぼす毎日です。修行が足りない我が身です。滝に打たれに山奥に籠もる代わりに映画を観にいきます。映画館は涼しいし、ぼおっとしていても誰にも叱られない、貴重な空間です。その上、ときには心の中を攪拌してくれます。攪拌して、底の方に澱んでいたものを浮かび上がらせてくれたりします。そしてそれだけのことが嬉しかったりします。がんばってください。 -
Re: 一編の童話のように
2007/07/24 by
プロの一分
根無し葛さんの好意的な感想は素晴らしいがそれを作り手の側の人間が作り手の視点で絶賛することは間接的に自分褒めにしかならず見苦しいし、まして作り手と観客に温度差があるなどの言及は明らかにお金を払って見てくれている観客を見下しているようにしか受け取れない。非公開の往復書簡ならともかくこの映画に批判的なコメントもある公開のサイトでそれを表明することはプロとしては厳に慎むべきことだと思う。これでは批判的な客を作り手が批判し返しているのと同じことで、読んでいて気持ちの良いものではない。昨夜プロフェッショナルという番組の再放送で帝国ホテルの田中料理長を取り上げているのを見たが、田中料理長は客に注文をつけるような発言は一切されなかった。そんなのは普通は当たり前のことなのだが、こうやって臆面もなく作り手自らが嬉々として観客の品定めをしているかのような書き込みを見るとプロの資質とはその当たり前のことがしっかり遵守できるかどうかなのだということを改めて考えさせられる。
-
暖かなお人柄に感謝。
2007/07/24 by
Black-Pandola
ご返信ありがとうございました。
私は相変わらず、自己の価値観や知識、ものの見方考え方を、あらゆる角度から徹底的に問い詰めてなお、納得のいく結論に到達できない修行不足のわが身を嘆く毎日です。そんな創作現場から、時折逃げ出したくなるときもありますが。
自分で選んだ道、弱音は吐きません(笑)
これからも根無し葛さんのような温かい鑑賞者だけでなく、厳しい批評精神を持つ方々の期待を裏切らないよう、わが身にムチ打って、山積する資料や、一文字、一行、一頁と戦ってまいります。
根無し葛さんの精魂込めたパスタも、家族のみなさんに100パーセント喜んでもらえる日はなかなか来ないでしょうけれど、他の人を喜ばせたいというその気持ちはきっと伝わっていると思います。
余談ですが、私はいま、トマトとモツァレラ・チーズとルッコラを、バルサミコ・ソースで和えた冷製パスタに凝っております。一度お試しになっては、とお奨めしつつ・・・ではまたいつか。 -
Re: 一編の童話のように
2007/07/28 by
傍目五目
まあ本当に使える脚本家だったら忙しくて
こんなところに書き込んでいられないから、
Black-Pandolaさんは・・・まあそういうことなのだろう。
ここでスタッフとか作り手を名乗るのはあんまりオススメできません。
返信を投稿
Copyright©2008 USEN GROUP All Rights Reserved.










