麦の穂をゆらす風 (2006) »レビュー

「悪くない」を超えず

70点 2006/12/04 by 未登録ユーザ odys

麦の穂をゆらす風

どういう点数を付けるか、迷った。75点といったところで、普通こういう時は繰り上げるのだけれど、今回に限り繰り下げて付けることにした。

いや、悪い映画ではない。日本人にはIRA問題は遠くてよく分からないところがあるし、加えて変な英国幻想――英国は紳士の国だとか、英国人は日本人より大人だとか、英国の植民地支配は理性的だったとか――がないでもない日本においては十二分に見る価値のある映画だと思う。

映画の進行も過不足なく、運命のアイロニー(最初は武装闘争に懐疑的だった主人公が最後には原則論者として悲劇的な最期を迎えるなど)を初めてとして、過度にお涙頂戴的にならずにある意味淡々としており(例えば主人公が年少の裏切り者を処刑するところなど、そのつもりになればもっと情感的に描けるだろうが、敢えてそれを避けているところが素晴らしい)、制作側の力量を感じさせられた。

パンフによれば、英国の高級紙「タイムズ」はケン・ローチ監督のこの作品を「反英国映画」とクサしたそうで、高級紙といえば自国の悪口を書くのが商売みたいに思っている日本人には、このあたりに第二次大戦勝利者の根強い自己正当化の論理を見て取るのがいいのだろう。

だから、繰り返すが悪くない映画なのだが、悪くないと言うところを超える映画的な感興を感じられる作品になっているか、というと、どうも疑問なのだ。ペーパーテストの設問に答えるのならこれで「良くできました」なのだけれど、映画がそれだけでいいのかどうか、考え込んでしまうのである。

 

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