プリティ・ベビー (1978) »レビュー

少女という価値

80点 2008/05/14 by くりふ

最近DVD化されたのですね。1978年のルイ・マル監督作品。
1917年、アメリカが参戦を決める時期のニューオリンズ。
歓楽街ストーリーヴィルの娼館で、12歳で娼婦となる少女。
超美少女映画史、があれば必ずそこに名を刻むはずの、
ブルック・シールズがみごとに輝きますが、それが危険です。
そして妖しいけれど、エロティックより痛みが先に走る作品。
このシーン必要? 等、冗長な点もあり、全体に少々素気なく、
ツンデレぽい仕上りですが、噛むほどに苦味が沁みてきます。

S・サランドン扮する娼婦の母から産まれ、娼館で育ち、
恋を知らず、迷いも知らずに「仕事」を先に覚えてしまう、
ブルック扮するバイオレットと、K・キャラダイン扮する、
ストーリーヴィルに実在し、密かに娼婦たちを撮り続けた
写真家E.J.ベロックがモデルの男、が接近してゆく物語。

全篇でまず、問われるのは、大人社会の中での、
少女という価値、ということだと思いました。
勿論この時代・場所によるものですが、昔のことだから…
と切って捨てられないものでもあると思います。

娼館では商品。そして、写真家は芸術的価値を見出しますね。
少女は賞賛もされますが、男の思い込みや搾取も目立ちます。
男の性欲についてはあまり踏み込んでいませんね。
バイオレットを買う男は、ペドフィリアというより、
征服欲・支配欲からの行動に見えました。札束使った暴行。
そして写真家は、彼女を少女という「価値」で見るのを止め、
生身の女として受け入れようとした、ある種ドンキホーテな
挑戦者だったのだと思います。だからかっこ悪くも見えます。
彼ら二人の「愛のギャップ」が痛々しい。

しかし、少女は少女に過ぎない単純な側面もあるわけで、
そこから物語は一見、ホッとする方向に転がっていきますね。
アレコレ背負っても、少女にしか見えないのも、残酷ですが。

買われる自分にまったく疑いを持たないバイオレット。
逆に大人たちは、彼女を鏡として自身を見ているようでした。
バイオレットは鏡を覗いても、見えるのはまだ、未来だけ。
ブルックが輝くほど、「大人の暗部」が浮き出すようでした。

本作は、ストーリーヴィルの歴史を追った書籍が元ネタで、
そこにあった少女娼婦の話と、E.J.ベロックを組み合わせて、
企画されたようす。バイオレットにはモデルがいるんですね。
興味本位の視線で終わらないのは、そんな背景もあるからか。

味わえたポイント、他にもたくさんあるのですが、
このへんで止めておきます。まだまだ長くなりそうで…。

メモ的にいくつか。
肉感的なS・サランドンもお見事。ブルックと母娘って最強!
S・ニクヴィストの、場の空気を醸す撮影もすばらしいので、
なるべく良好な再生環境で楽しむのがよろしいかと思います。
DVDジャケットの『不思議な国のアリス』風写真も、
本編をみた後だと、幾つかの意味を感じられて印象的。
手にした人形は、バイオレット自身なのでしょうかね。

 

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