私たちの幸せな時間 (2006)
»レビュー
材料とテーマの重さに作りが追いつかない。
2007/11/02
by
odys
非常に意欲的な材料とテーマを持つ映画であることは、まず強調しておく必要があるでしょう。
その上で、残念ながら材料をこなしていないし、テーマも追い切れていない、と言うしかありません。
たとえば、娘を殺された老婦人の「赦し」。どうも簡略すぎる。人は自分の娘を殺した相手をあんなに簡単に赦せるものなのでしょうか。また逆に、殺人犯のユンスのほうにしても、それまでシスターなどにはシニカルで突っ慳貪な態度をとってきたのに、あの老婦人に対しては最初から謝罪モードです。かりに謝罪したい気持ちがあったとしても、それを素直に出すような性格だという描写がそれまでなされているとは思えない。明らかに脚本の練りが不足しています。
ユンスの経歴についてもそうです。恋人が子宮外妊娠したことが犯罪に手を染める動機になっているわけですが、その後恋人はどうなったのでしょうか。恋人は過去の自分を語るユンスの話の中だけに登場し、彼女のことを今でも気づかっているのかどうかよく分からない。もう思っていないなら、なぜそうなのかも分からない。
つまり、韓国映画の弱点がモロに出ているのです。主役二人の感情の描写だけでは足りず、脚本を精緻に作ることによって観客を説得しなければならないのに、それを怠っている。或いは、描くべきものが多すぎた、と言うべきかも知れません。主役二人の過去が二人の現在に大きな影を投げかけているのだから、過去の描写にはもっと時間をかけないといけないのに、死刑執行官の気持ちなど、死刑に関係する他のテーマも盛り込もうとしたりして、メインの部分が説明不足になっているのは、本当に残念なことです。
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