パンズ・ラビリンス (2006) »レビュー

万人向けではない秀作

90点 2007/10/15 by 未登録ユーザ 蒼月城

パンズ・ラビリンス

ファンタジーとは本来、不安で残酷な現実に絶望し追い詰められそれでも生きるしかない人々が、一粒の安心と心のよりどころを見出そうとしてすがる思いで作り上げた希望であると同時に、慰めでもあります。
例えば、誰かの死に直面したとき、実は人間世界のほかにこういう別の世界があり、あの人はその世界に行ったんだ、あの人の生前の行動にはこういう理由があったんだ等と思わなければ、残された人々は哀しくてとてもやりきれないから、後に残った人達が自分自身を慰めるために作り上げた物語があり、それこそ本来のファンタジーだと聞いたことがあります。
これはまさに、それを雄弁に物語る作品と言えるでしょう。
幸せ100%な社会にファンタジーは生まれません。その必要がないからです。

これほどに哀しい映画を久しく観ません。
これほどに打ちひしがれる映画を久しく観ません。
これほどに恐ろしくも美しい映画を久しく観ません。
加えて、あの子守唄の旋律が耳に残って離れません。

スペイン・メキシコの映画ということもあり、フランコ政権時代初期の圧制への反駁と捉える向きもあるかもしれませんが、あえて政治的な側面と結びつける必要はないと思います。
思わず目を背けたくなるシーンが沢山登場しますし、全体的に重い雰囲気が漂う映画なので、万人向けの映画ではありませんが、ファンタジーの本質を見事に見抜いた秀作と言えるでしょう。

 

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