あるスキャンダルの覚え書き (2006) »レビュー

ケイト・ブランシェットに脱帽!

80点 2007/12/10 by 星空のマリオネット

あるスキャンダルの覚え書き

この映画は、通常であれば陰々滅々とした物語になってしまいそうなテーマを扱っているにもかかわらず、サスペンス感溢れる面白いドラマに仕上がっているのは、流石だなあと思います。
構成の妙や二人の女優さんジュディ・デンチとケイト・ブランシェットの傑出した存在感・演技力の賜物ですね。

オールドミスで一人の友人もおらず、他人に厳格で自己中心的(妄想的)なバーバラを演じるのが、デンチ。
家族を持ってはいるものの、少し年老いた夫と障害児を抱えたどこかいびつな家庭の中で、空洞感(満たされない思い)と隣り合わせのシーバを演じるのが、ブランシェット。

舞台はイギリスの労働者階級のための中学校。二人はともに女教師。
孤独な古参教師のバーバラが、少し崩れた神秘的な美しさを持つけれどどこか所在なげな新任教師のシーバを品定めすることから、この物語は始まります。
バーバラのシーバを追う視線は、獲物を狙う冷徹なハンターのそれです。
観客はバーバラのこの視線と、一見理知的な日誌(覚え書き)の口述に導かれ、シーバの生活を覗き見し、バーバラとともにシーバを追い詰めていくことになります。

しかし、それにしてもケイト・ブランシェットが演じるシーバの堕ちていく様は驚くほど身近で自然。抗いがたい魅力に溢れています。
映画「エリザベス」のエリザベス役、「ロード・オブ・ザ・リング」の王女ガドリエル役、「バベル」のスーザン役と、このオスカー女優の不思議な存在感には脱帽です。

一方で、鎧を身に纏い、人を寄せ付けない冷たいオーラを放っているバーバラ。
彼女の偏執的な思いと行為に怖れを感じると同時に、他人を束縛し支配したいという欲求や子供のような見境のない怒りが、必ずしも他人事ではないことにも気づかされます。

ドラキュラのように人の生血を吸い尽くしては、また次の標的を狙うことでしか生きていけないバーバラ。そこには罪の意識が介在する余地すらありません。バーバラの救いようのない狂気。自らの欲望を追い求めずにはいられない人間の性(さが)でしょうか。

ラストシーンはホラー映画のそれのようでした。
また、子供たちの大人を見抜く鋭い嗅覚にも恐ろしさを感じさせられる映画です。

 

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