キサラギ (2007) »レビュー

平成の怪物脚本!

90点 2008/01/20 by 百舌鳥【mozu】

キサラギ

一幕モノ、少人数の群像劇。
この種の映画は古今東西、もう出尽くしているわけで、レビューの点数の高さに首を傾げていた。
まずこういうティーン狙ってます!感大嫌いなんです。下妻物語しかり電車男しかり。
しかも大好きな、『十二人の怒れる男』のパロディの『12人の優しい日本人』のパロディみたいな映画つくって。
「どうせまた、旬の俳優集めただけで、貧乏学生劇団みたいなせこい舞台で、ねちっこく言葉をこねくりまわしてんじゃねーのか?」ってな具合で、インネンでもつけて、仰々しく並ぶ5つ星の行列のど真ん中に、強烈な嫌がらせでもブチかましてやろうと、姿勢を斜め350度に構えながら観た。

結果は…
超すげぇじゃん!!鬼アツなんですけど〜!
とティーン語で感嘆が漏れたよ!

少ない制作費を逆手にとる。私はそういう映画が好きだ。しかし、前述したように、古今東西の天才たちによって、そういう映画は、ほぼ型が出尽くした感が否めない。しかし、本作の新機軸。私は思いもよらなかった。『12の優しい日本人』では、討論される対象が、討論により二転三転する。
本作は逆である。5人の討論主体側が二転三転するのである。その小気味よさダイナミズム&出し惜しみしないテンポ!
なんという脚本!「優れている」なんてもんじゃない。

本作には、数十に登る伏線とどんでん返しが含まれている。
その一つ一つが、他の佳作映画のオチのように洗練されている。通常の映画なら一本に一つの必殺の勝負ネタ(ここぞという見所)。
そういう勝負ネタクラスばかりの仕掛けが、1作品の中に数十も詰めこまれているなんて。
まるで大量に仕掛けられた地雷のように。ストーリーが展開していくなかで、次から次へと誘爆していく。
驚くべきことは、それでいて、ネタの寄せ集めのパッチワークのごとき、散漫さが皆無なことだ。
全体としての統一感を失わないまま、一枚岩の力強く骨太な感動ストーリーとしてまとまっているのだ。

そんな芸当が可能なのか?
野球でもサッカーでも、スタープレイヤーばかり集めたら、全体としての調和が乱れて、強いチームにはならない。

「ターミネーター」「ゴットファーザー」「パイレーツオブカリビアン」
映画と言うのは3作目で、この失態を犯す。
すなわち、気負いが強すぎて一気にネタを盛り込みすぎて、全体としては散漫としてパッとしないものになる。
これらの製作者の力量が不足しているわけではない。
仕方ないのだ。不可抗力なのだ。
だって、続編に対する世間の期待は半端ではない。当然製作側もそれに応えようようとする。
前作より、もっと面白いものにしようとする。
それで、「あれもこれも」で面白いネタの数を増やす。

結果、できあがるものは「部分部分は凄いんだけど。何でだろう?何かが物足らない」という、気負いの勢いに反して、中途半端な品質の超大作である。
これは、なるべくしてなる結果なのだ。

なのにこの『キサラギ』。
多数の勝負ネタを一挙に一作品に盛り込みつつ、すべてを同一ベクトルに乗せ、超巨大パワーを生むという奇跡の所業を成し遂げた。
ハリウッドの超メジャーも、日本野球界の独裁キング巨人軍も、誰もできないことをやってのけた。
モンスター?
そう!まさにモンスター脚本である。
『12の優しい日本人』すらピョンと飛び越えて、私の中での邦画No.1作な感じ。完全に邦画コンプレックスを覆されたね。

ただ、あのラストのあれははない!
如月ミキはアイドルなのだろう!?あそこまで引っ張るなら偶像にするべき!
更に…というか宍戸開!あのシーンはなんで??本当に分からない。あの点さえなければ完璧に近い仕上がりだ。
脚本がが良すぎた…できれば最後の5分とエンディングは目をつぶりたい。

レンタル開始するらしいから、絶対借りてみてください。

 

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