夜になるまえに (2000) »レビュー

ひとつの執念が完結したんだ

100点 2007/05/31 by 嬉野桂花

なんて綺麗な映像。なんと哀愁帯びた音楽。
キューバの激しく悲しい革命史を生き抜いた一人のキューバ人の人生。
亡命作家の、かくも作家であり続けた男の人生。

オープニングの映像からいきなり引き込まれます。キューバの熱帯雨林を這うように、キューバの土を恋い慕うかのように、カメラは地をとらえる。
アメリカでレイナルドが恋い焦がれたであろう祖国の土壌。このオープニング映像はレオナルドの、そして亡命キューバ人すべての恋慕の情景に見えました。
それほどまでにすべての映像が、失った過去の一瞬一瞬を丁寧に掘り起こして(多分亡命人が幾度も祖国を想って頭の中で再生したであろう映像を)揺れるフィルムに焼き付けている。
本当に心の底から、人の心や拠り所や祖国や人生や全てをひっくるめて、人間の生き方というものに向き合った映画でした。

作家が作家であり続けること、社会的異端者としての同性愛者の息苦しさ、キューバ革命とはなんだったのか、レイナルドがレイナルドとして戦う様は、あまりにも美しいキューバの風景とキューバ人の明るさに反比例して、ただもう息をのむばかりです。

ラストのラサロとのやりとりは涙が流れてしようがなかった。
カメラは最初から最後まで天から撮ったような鳥瞰図で、まるで天からレオナルドの手が監督に直接触れているよう、そう、憑依したみたいに。
彼の生温かい呼吸とキューバの湿った空気が映像に折り重なり、そこに一つの執念が完結したのでした。
「夜になるまえに」タイトルを繰り返しつつ…本当に素晴らしい映画でした。

蛇足ながら、日本のポスター?というか使用されるジャケット?はジョニー・デップのボンボンメインで…このイメージが先行したせいで、私事ながらずっと「ラスベガスをやっつけろ!」系のジョニーデップの映画だと思ってました。
こういうのは配給会社の意向なの??

 

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