ボーン・アルティメイタム (2007)
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IQ共和国とのインサイドワーク合戦
2008/05/01
by
牧坂満
シリーズ第三作目にして漸く完結しましたが、CIA(Central Intelligence Agency 中央情報局)のケースオフィサー(海外秘密情報・工作部員)の頭脳プレイによるインサイドワークのキレのよさを痛感させてくれる映画となりました。CIAは“IQ共和国”の異名があるように、CIAに勤務する人々のIQは一般的アメリカ人の平均値を20ポイント以上上回っているそうです。映画で描かれているような息詰まるような虚々実々の駆け引き、攻防戦は肉体を使ったアクション以上の痛快さがあるのは当たり前なのでしょう。
映画の冒頭はロシアのモスクワのキエフ駅が舞台になっていますが、暗い画面と寒々とした風景で社会主義国家を上手く表現しています。画面は6ヶ月後、アメリカ合衆国ヴァージニア州ラングレーにある政府のスパイ機関CIAへ移行します。年間40億ドルの予算。管理局・諜報局・工作局・科学技術局の4局から構成されていて、スパイを実際に抱え、超秘密の活動をしている工作局の内部が映し出されます。
映画でのセリフは申し訳程度に出てくるだけで、あとはアクションによって物語が進行していくのです。これこそが、アーネスト・ヘミングウェイが生み出した“ハードボイルド”の文体そのものであり、心理小説の常道である“内面の声”を一切省いているのです。それは、後に“非情な文体”と命名されましたが、人間の行動を客観的に描写し、そこにあらわれる微細な陰翳の表現に執着したのです。
その後は“非情な文体”そのモノのアクションの連続がジェットコースター・ムービーのように描かれていますが、日本の深作欣二監督が考案したハンディカムによる揺れるぶん回し撮影のカメラワークとカット割りの多さが大いに貢献しています。ジェイソン・ボーンは「ジャンパー」のように、イタリア・トリノ、フランス・パリ、イギリス・ロンドンのヒースロー空港、スペイン・マドリード、モロッコ・タンジール、そしてニューヨークを駆け巡りますが、ゲーム「バイハザード」のラクーンシティのように入り組み迷路のような家並みをしたモロッコ・タンジールでのアクションが強烈な印象を与えてくれました。特に狭い場所での格闘は無駄な動きが一切ない本物であり迫真の肉弾戦となっています。
CIAの工作資金は海外の文化団体や学術研究にもばらまかれ、日本にも及んでいたことが問題とされ、また多数の外国首脳に秘密資金を手渡していたことが暴露されて、その行き過ぎに対する批判が高まりました。東西冷戦は終結しましたが、旧・東ドイツの国民を監視する諜報活動を描いた「善き人のためのソナタ」以上に凄まじい監視国家を思い知らされました。
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