ストレンヂア 無皇刃譚 (2007)
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道楽
2007/10/18
by
りんぼ
この映画の見所はぶっちゃけ「動き」です。純粋にアニメとして優れているものです。よく「映像だけで中身の無い映画」と言われる作品がありますが、この映画は寧ろ「映像」が主体にある。これは作り手が最もやりたいことであり、それがこの映画で発揮されている。
冒頭の野党との戦いからして鳥肌が立つ。これは実写では不可能な映像だ。最近はCGで可能な領域も広がっただろうが、それでもアニメの表現は極めて高い位置にある。
多くの戦闘シーンにおいて、登場人物が等身大の視点で描かれている。当然、腕力や跳躍力の誇張表現はあるとして、皆、人としての制約があるままに描かれている。アニメは簡単にその制約を取り払うのだが、この映画はそれを抱えたまま戦っていく。それがこの映画の主旨でもあるだろうし、だからこそ「凄い」と思えるシーンがある。ラストの決闘のシーンの迫力は人対人だからこそ出来たもののように思う。また、この「見せ場」だけでもこの映画は十分に見る価値があります。
この脚本はある意味派手さが無いとも言える。例えば女っ気が少ないし、号泣させるでもない。また、ライバルとの因縁も決して深いとは言えない。そういう部分で全体的に抑えられた感はあるが、逆にそこに真実味を感じる。
主張したいことを台詞で言うのは簡単だが、時としてその言葉のため薄っぺらになってしまうことがある。それよりは極力語らずに、例えば行動でそれを示す。その方がより登場人物の心情がわかる場合がある。この映画の脚本は必要なものを選び、それ以外を省き、この映画の世界観に適した間というものを保っている。逆に話が先行していたら、主体であるチャンバラが霞んでしまったかもしれない。必要なのは名無しの因縁と小太郎との絆であり、なかなか上手いバランスで成り立っている。
実はこの映画を見る前にこの映画のトークショーに参加したのだが、そこでプロデューサーの話で、この映画に対し「道楽」と評していたのが印象的だった。その場では冗談で言ったようなものだが、ある意味的を射ていると思う。何より作り手が作りたい作品が出来ることが重要だろう。こういう作品が定期的に作られることは、映画が元気な証拠でもある。こういう映画を見られることは観客にとっても幸運なことなのだ。
これが市場優先の作品ばかりになったら、どんどん活力を失っていくだろう。数年前にアニメの大作と呼ばれるものが勢揃いした時があったが、軒並み不作だったことがあった。それに比べ、今年はなかなか良質な作品が多くて喜ばしい。アニメにせよ実写映画にせよ、大衆化しない方が良いことも沢山ある。
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