フィクサー (2007) »レビュー

王国と征服

70点 2008/07/09 by のびた

フィクサー

日本でもよく耳にした、薬害問題。
裏に大きな利権が絡み、巨大な権力が介入してくるので、その実態がなかなか見えてこない。いつでも泣くのは、被害にあった、何の罪もない国民だ。

弁護するのが、悪であると知りつつ、自分の利益のために正義を引っ込める弁護士は確かにいるだろう。映画のアーサーは、真実を知ってしまい、農薬会社側を守る立場にいながら、原告側に寝返ろうとする。良心の呵責に耐えきれず、精神に異常をきたしたかのような行動を取る。どうやら、優しい人間に弁護士は務まらないようだ。

アカデミー賞には、ジョージ・クルーニー、トム・ウィルキンソンともノミネートされていたが、結局賞を取ったのは、ティルダ・スウィントン(助演女優賞)だった。マイケルと闘う相手のU・ノース社の法務部本部長カレン・クラウダー役だ。

彼女の演技は、賞にふさわしいものだった。冒頭、脇の下にたっぷりと汗をかいていた洗面所のシーンからして強烈だった。普段は誰の前でも、毅然とした態度をとっているし、スピーチも実にうまい。しかし、裏ではその練習に余念がなく、何度も失敗している様もカットバックされる。彼女は決して鉄の女などではなく、弱いものをたくさん抱えていながらも、それを人前で見せることが許されない立場にいる。彼女は映画の中では悪役ではあるが、とても人間味に溢れている。僕は、一方的に彼女を責める気にはなれなかった。
彼女もまた、会社の被害者であるように感じた。

マイケルもアーサーも、人間としての、良心をたくさん持っていたために、みな苦悩する。
これが本来の人の姿であると信じたい。

そして、エンディングの彼の表情に、観客は何を読みとるのか…。

PS マイケルが見た、三頭の馬は、子供の読んでいた、『王国と征服』という本の中の挿絵のイメージ。アーサーも赤い表紙のこの本のことを子供から聞かされていて、そして、会社の秘密を暴く大量にコピーされた資料の表紙も赤。マイケルは、子供に救われたのだろうか。また、『王国と征服』という本の内容もどんなだったのか、とても興味深い。

 

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