勇者たちの戦場 (2006) »レビュー

アメリカはいつから傲慢な国になった

70点 2008/05/01 by 牧坂満

勇者たちの戦場

 原題の“HOME OF THE BRAVE”に対して、日本公開用の邦題の方が作品の内容を上手く伝えているいい例です。映画の冒頭はイラク駐留軍と民兵との激烈な銃撃戦が描かれていますので、近代戦の映画かと思いましたが、本作品はイラクから帰還したアメリカ兵たちの心を病んだ姿を描写した群像人間ドラマでした。勇者たちの戦場はイラクであり、それ以上に帰還したアメリカ合衆国だったのです。

 軍医のウィル(サミュエル・L・ジャクソン)も負傷した大勢のアメリカ兵たちの命を救えなかったことがトラウマとなってアル中に陥ってしまい、女性兵士ヴァネッサ(ジェシカ・ビール)は民兵が仕掛けたブービートラップによって重傷を負ったことから、身内は勿論のこと他人に心を開くことが出来なくなってしまうのです。

 映画は、アメリカが絶対正義を描いている訳ではなく、ウィルの息子に“アメリカはいつから傲慢な国になった!”と叫ばせます。しかし、親子の断絶は深く、“歴史を学べ”と諭す父親に対して“新聞を読め”と返答する息子がそれを物語っています。

 家族や親しい友人たちと疎遠になっていく過程が物悲しいのですが、偶然出会ったイラク駐留の戦友をフーア(同志)と呼び合うシーンに感情移入していきます。精神安定剤のレクサプロを題材に如何に自分たちが病んでいるかを語り合うのですが、悲しくて笑える場面でもあります。

 群像劇は十人十色の人生を歩き始めた帰還兵があるキッカケで立ち直って行きます。それは家族の愛情であり、恋愛であり、再び戦火の中に身を置くことによって戦死した戦友への償いをしようとする勇気によってなのです。

 “戦争はいつでも始められるが、簡単には止められない”マキャベリーの言葉がそれを物語っています。

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