大いなる陰謀 (2007)
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自意識しか描けないアメリカ人の限界
2008/04/23
by
odys
「地獄の黙示録」をちょっと思い起こさせられた(と言ってもだいぶ前に見たのでうろ覚えだが)。つまり、現地人の姿があくまで暗黒であって、アメリカ人の自意識だけが表に出ている、というところがである。それが、アメリカ・リベラル派の自意識であるだけに、いっそう問題は根深いような気がする。なぜ彼らは他者を描けないのか。これはかなり重要なことだと思う。
トム・クルーズ演じる共和党タカ派議員とメリル・ストリープ演じる新聞記者は、類型的ではあるがそれなりに造型もできているし、二人の対話=対決が緊張感を生み出していて、まあ悪くない。
しかし、レッドフォード演じる大学教授はいただけない。学生にお説教するというやり方では、問題の所在を浮かび上がらせることはできないだろう。思うに、ここでもむしろ新聞記者とレッドフォードの対話=対決にすべきだったのではないか。「リベラル派としてかつてはヴェトナム反戦運動を闘ったはずの、そして日頃から平和主義やリベラリズムを説いているはずのあなたが、なぜ教え子をアフガンに送り出したのか? 信条に反する行為ではないか?」と記者に問いつめられて、そこから自分の抱えている矛盾、そしてアメリカ社会の抱えている矛盾が浮き彫りになる、という形をとっていたら、もっと緊迫感が生まれたのではないか。
ちなみに、この映画でも多少言及されているが、アメリカでは学費が高いために並みの家庭の子弟が大学に進むと借金を背負わざるを得ず、なおかつ昔なら高学歴を獲得すればその後の高給が約束されたが、最近は学歴インフレで高学歴が必ずしも高給に結びつかないため、高学歴を獲得しても借金だけが残るケースが増えている。また、学費が出せない貧しい階層を狙って兵役勧誘がなされているという実態もある。最近ベストセラーになっている『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)を読むと、この映画の背景が理解しやすくなるだろう。
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