ノーカントリー (2007) »レビュー

普通とは違う世界の眺め方

80点 2008/03/21 by くりふ

ノーカントリー

やっぱりテキサスの地平線は、シネスコ画面で見事に映えるねえ…などと開放感溢れる映像美に見惚れていると、何時の間にか首を絞められたようになり、身動きできなくなりました(笑)。この感覚は、原作にはなかったですね。個人的には「ラスト、コーション」に続き、原作も映画も両輪楽しめる、というおトクな機会となりました。

原作の冒頭、老保安官のモノローグが好きでした。
「この世には普通とは違う世界の眺め方があって
そんな眺め方をする普通とは違う眼があって
この話はそういうところへ行く」という、まるで、
天災殺人者・シガーの眼を指すような、また、
理解できなくなってゆく世界に対する、おののきのような、
呟きがあるのですが、映画ではこれ、なかったですね。
が、そこから既に、映画版ならではの独自配色が、
じわじわ始まったようで、コーエン色に塗られて行きました。
そして結局、着地点は原作と同じだったようです。

心に残った所は幾つもありますが、音の変遷は感心しました。
冒頭付近、荒野を吹き抜ける風の音がとてもよかったですが、
物語が進むにつれ、豊かな自然の音から、気になるのが、
銃撃、屠殺用凶器、盗まれた金をトレースするあの音、等々、
殺伐とした音、ばかりに絞られて来て、みていて段々に、
息苦しくなってくる。BGMを避けた、こんな音の『配色』が、
ひょっとして映像以上に、迫ってくるような思いがしました。
そして、ラストで風の音は帰って来ますが、もう寒々しい。
シーンとしても、一見長閑だが淀む気の中、もはや夢の中に、
一縷の望みを託すしかない、というような後味の悪さ。

人物としては、老保安官の立ち位置が興味深かったですね。
原作と比べると、より『お手上げ感』が強調されていました。
何だか、物語に対して浮遊している感じがするんです。
腰が引けてしまっている感じ。原題が迫ってきますね。
風貌を含め、ちょっと「踊る大捜査線」のいかりや長さんに、
似てるなあ、なんてコトも思いましたケド。

殺伐感ダメ押しは邦題かな。「国、ありません」てオイ。
中途半端に原題を削る相変わらずぶりですが、
今回は、たまたま作品の本質に迫ってしまったような気が、
しないでもありません。

シガーの髪型、なんかデジャヴだなあと思ったら、
ルーク・スカイウォーカーですね、たぶんあれは(オイオイ)。
彼はやはり、銀河の彼方から来たのです、たぶんきっと。

 

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  • Re: 普通とは違う世界の眺め方

    2008/03/30 by カイタカケン

    こんにちは、くりふさま。

    > 原作の冒頭、老保安官のモノローグが好きでした。
    「この世にはがあって
    そんな眺め方をする普通とは違う眼があって
    この話はそういうところへ行く 」という、まるで、 天災殺人者・シガーの眼を指すような、また、理解できなくなってゆく世界に対する、おののきのような、呟きがあるのですが、映画ではこれ、なかったですね。

    ↑理解出来ないものに対しての“お手上げ感”は冒頭のモノローグからありましたね。
    原作読んでいないのですが、
    『普通とは違う世界の眺め方』は面白いですね。
    普通とは違う眺め方をやってる場面、一箇所ありましたね。
    職業上の必然から否応でも付き合わされる内に、老保安官の地獄めぐりの旅と変貌し、その行き着きついた『場所』は…(?)という風に受け取ってました。

    > 殺伐感ダメ押しは邦題かな。「国、ありません」てオイ。
    > 中途半端に原題を削る相変わらずぶりですが、
    > 今回は、たまたま作品の本質に迫ってしまったような気が、
    > しないでもありません。

    ↑あぁ、なるほど!、これはいいですね。
    『国、ありません』は何も老人だけに限った事ではありませんもの。
    国境越えの時に登場する3人の若者と、終盤平凡な住宅地に登場する自転車の少年達。
    このエピソードは、原作通りなのかしら?
    自転車の少年達の行き着く先は想像できますが、『国境』の若者(←ビール発言の子)はちょっと引っ掛かるんですね。
    それと『交通事故』は原作にも登場するのでしょうか?(←信号の色もあのまま?)
    質問ばかりで、ごめんなさい。
    もう少しですっきりしそうなので、ご協力お願いします(笑)

  • カイタカケンさん、こんにシガー

    2008/03/31 by くりふ

    どーもー。とり急ぎ、ご質問のお答えうぉば。

    >このエピソードは、原作通りなのかしら?

    基本そうですね。但し、映画と細部比較されると自信なし(笑)。
    ビールは出ません。事故は起きますが、信号は出ません。
    因みに、原作の保安官は、あの子たちもきちんと捜査します。

    映画はかなりのところ、原作に忠実でしたね。
    もちろん変更や削除はあって、個人的に一番気になったのは、
    老保安官の、とある大告白をやらなかったことかな。
    まあ、ネタバレにつながるのは嫌なので、気になりましたら、
    詳細は直接、原作を覗いて見てくださいませ。
    翻訳者の解釈なども面白いですよ。
    シガーは「ギリシア神話のネメシスではないか」と書いてます。

    私は、原作のコクと深みにカナリ、嵌ってしまったクチです。
    『普通とは違う世界の眺め方』という言葉は凄く好きになり、
    映画で出なかったのでありゃ残念、と単純に思った次第。
    映画版で気になっている点は幾つもあるのですが、
    時間を置いて (DVD出る頃?)、まだ心に残っていたら、
    反芻してみるつもり。単に気分と優先度の問題ですね。

    もちろん、面白い議論があれば、参加しまーす。
    あ、そうだ、「夢ふたつ」も原作どおりでしたね。

  • 〜国境越えれば、憧れのエル・パソ〜

    2008/03/31 by カイタカケン

    くりふさま、毎回お世話になっております、早速のお返事、ありがとうございました。

    >ビールは出ません。事故は起きますが、信号は出ません。
    因みに、原作の保安官は、あの子たちもきちんと捜査します。

    ↑なるほど!『ビール』と『信号』は無しなんですね、あぁ、これで悩みが解決しました♪
    『国境』と平凡な住宅地に登場する若者、シャツ(上着)の入手。モスとシガーは対置されていると思うんです。

    >翻訳者の解釈なども面白いですよ。
    シガーは「ギリシア神話のネメシスではないか」と書いてます。

    ↑そうですね、『ネメシス』というのは理解出来ますね、“プチ神様状態”でしたから。
    コイントスから『ホウイール・オブ・フォーチュン』も連想してました。
    でも、信号はあの色だし(笑)

    >私は、原作のコクと深みにカナリ、嵌ってしまったクチです。

    ↑確かに面白そうな原作ですね、2つの夢もちょっと純文学の匂いがする(笑)
    『老保安官の大告白』はとっても気になります、
    近い内に原作読んで確かめてみますね。

    我がままな質問に丁寧に答えて頂き、ありがとうございました、では、また何処かで…

  • カイタカケンさん、オマケでこんにシガー

    2008/04/01 by くりふ

    カイタカケンさんには随分、協力している気がするので、
    そろそろお礼してもらわないとなー。
    勿論、何のことかわかってるよね、奥さん? ふ・ふ・ふッ。

    …とりあえず今度、「帯回し」やらせてください(コラコラ)。

    オヤジギャグはま、置いといて、ケン作長大スレがまた、
    掲示版に立ち上がるのでしょうから、楽しみにしてますね。

    モスとシガーが対置、関連でいうと、モス役J・ブローリンが、
    「モスはシガーに似ている部分さえあると思う」と、
    発言してますね。主観的イメージですが、シガーって、
    モスを追ううち、ちょっと似てきちゃって、いつの間にか、
    以前からモス専属死神だった、みたいに見えてくるような、
    そんな、外部化された悪運に追いつかれそう、みたいな、
    冷たくレール化されてしまったような圧迫感を感じました。

    個人的に、1980年、という舞台設定が気になってます。
    ベトナム戦争終結から5年後。アメリカでの銃所持率は、
    ベトナム戦争を境に大きく伸びてしまったようですね。また、
    反戦活動をしていたJ・レノンが銃殺された年でもあります。

    原作が発表されたのが2005年。
    イラク戦争が、ベトナム戦争を越えて泥沼化するのでは?
    という不安の中で綴られた、その時から25年前の物語でした。

    老いたベル保安官は、25年後では亡くなっているかもですね。
    『二つめの夢』で託された○を引き継げる人物が、
    ベル保安官にはいたのだろうか? お手上げ感が染みてきます。

    …なんてしょーもないこと、ブツブツ思ったりしてます(笑)。

    あ、そうそう、別に「帯回し」させる気がなくても、
    レス付けはお気軽に、回してくださいませね。

    ではまた。

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