ノーカントリー (2007)
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コインの表裏のエクスタシー
2008/05/01
by
ホワイトファング
映画のストーリーの記憶がそれほどあとまで尾を引くとは思えない。
実際、先週観たばかりだけど、すでに細部についての印象は薄らいできた。
お話のアウトラインは、ドン・シーゲル監督の『突破口!』に原型を見る気がするけど、単純なエンタメとしてみたら、むしろこの古い映画のほうが楽しめる。ウォルター・マッソーのとぼけた演技にも味があるし。
けっきょくこの映画の魅力は、やっぱりこの殺し屋の造型に尽きるんじゃないかな。
既成の殺し屋って、頭の中がどこか壊れてしまっているか、もともとなにも入っちゃいない、っていうタイプが多いし、プロ中のプロを自認するゴルゴ13にしてもジャッカルにしても、なんか非情になりきれないところがある。ような気がする。観客や読者に「媚びている」とあえていってしまったっていいんだけど。
この映画の殺し屋がまったくの「新種」なのかどうかはよくわからないし、まあそんなことはどうでもいいや。でもなんだか目が離せない魅力を感じてしまったことを、この際、正直に告白してしまう。といって、明日からすぐに自転車の空気入れを改造して持ち歩こうと思うほど純情ではないが。
コインの裏と表には、どんなことが刻まれているのか。考えてしまった。
表が「死」で、裏が「狂気」なのか。それとも「全能」と「破壊」?もし「秩序」と「愛」だったりしたらやたらと怖いぞ。
この殺し屋が「死神」なんだとしたら、どこかに「神」がいることになるし、「悪魔」なんだとしたら「天使」もかならずすぐそばにいなければおかしい。でもそんなばかなことはないな。そんなはずはない。どちらでもないんだとしたら、思わせぶりなあのコイン、実ははじめから表も裏もないんじゃないか。二つに一つ、なんていうことは最初からありえない。あるように思うのはただの見せかけ。こんなふうに、世の中に選択の余地なんてないんだ、っていうことを見せ付けられるのはやっぱり怖いよね。こういう追い詰め方をする殺し屋って、かなり性格がよくないと思う。まあ、彼の性格なんて、この際、いちばんどうでもいいことなんだけど。
この映画であとあとまで記憶に残るのは、たぶんそのことだけなんじゃないかなぁ。あとのすべてがきれいさっぱり流れて消えてしまっても。
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