ゼア・ウィル・ビー・ブラッド (2007)
»レビュー
ナンパ師オイルマン/流血の十柱戯
2008/07/07
by
くりふ
米文学研究者のアネット・コロドニーによると、植民地〜開拓時代にかけ、米国人男性が残した文献を調査すると、新大陸の自然風景を、女性に例えた言い方がよく登場するのだそうです。それも「母」ではなく「処女」イメージ。未開地を開拓し、征服・支配したいという願望の現れだったのでしょうか。
…などと書いてみたのは、本作の主人公がまず、
プロ(?)のナンパ師のようだ、と思ってしまった言い訳です。
地下から探す「金女」。旨味薄けりゃ、次に狙うは「石油女」。
あらゆるコトを尽くし、モノにしたら、今度はヒモと化し、
どこまでも彼女を吸い尽くす。加州の女は全て、オレのもの。
しかし、ナンパ師でもヒモでも、一流(?)であるためには
努力と研鑽、気配りも、嗅覚も、必要でしょう。
それらの向上を怠たらない彼に、学べる部分もありましたね。
劇中、彼は、現実では女を作らず、セックスもせず、
「穴掘り」に熱中していましたが、妙に納得したのでした。
新たに発掘した、石油女との「初夜の儀式」で、
もう一方の、プラトニックなふりしたナンパ師・イーライに
手を出させず、息子に「筆おろし」させたコトも妙に、納得。
天を仰ぎ、ふわふわ浮こうとする方向のイーライに対し、
Plainviewという名の主人公は足元、地の下を常に凝視し、
曖昧なものは許せない。だからイーライのナンパは大嫌い。
しかし方向は逆でも、やってることは似たようなもの。
ナンパの違いでぶつかる二人の、近親憎悪な大喧嘩が見所!
…アカデミー賞映画にこんな書き方してると、
ボウリングの玉、ぶつけられそうな気もしてきましたが…。
中世ドイツの僧院では、ボウリングは元々、並べた棍棒を
悪魔に見立て、玉をぶつけて倒れた数で信仰心が試される
「ケーゲル倒し」という宗教儀式だったそうですが、
その後、信仰から離れ、娯楽として発展したそれが、
本作の重要舞台となるのが皮肉で面白い。原作にないので、
ロケハンで見つけたのでしょうね。原作のモデルとなった、
石油王エドワード・ドヒニーの屋敷だったそうですが。
信仰が形骸化され、(確か)地下という主人公剥き出しの場で、
信仰心が試されて、かつて悪魔と見立てられたモノが、
あるコトに使われようとする…。プレインビューとしては、
浮ついていたものに楔を打ち込み、地に引きずりおろし、
自分の足を、あるもので浸さないと、ナンパバトルは
終わらないところまで来ていたのだろう、と思いました。
仮にナンパで決着ついても、ヒモの暮らしは続くのですが。
「加州のヒモ」として巨大な財を成した彼でしたが、
掘り続けた穴の先で、果たして何を見つけたのか?
掘り出し、外に捨ててしまったものは、彼自身ではなかったか。
掘った穴はもう単純に、墓穴ではなかったか。
米国石油発掘史の黎明期を描き、壮大なスケールと思わせ、
確かに主人公は壮大なスケールだが、それは彼の心に開く、
巨大な空洞がそう思わせたのでは? と放心したのでした。
あと、音楽が素晴しく、サントラは即購入してしまいました。
「トーン・クラスター」という和音のことは初めて知りましたね。
『シャイニング』を参考にしたそうで。あちらは殆ど、
クラシックの既成曲で構成した所が見事でしたが、
本作では、オリジナルで構成されて、とてもカラフル。
かなり出しゃばる所と、見事にマッチする所が混在し、
BGMというより、活動弁士の語りのようでした。
語りといえば、『チャイナタウン』に出演した
J・ヒューストン監督をモデルにしたというD・D=ルイスの、
地響きのような「口説き」は強烈で、説得力ありましたね。
長々と書いてしまいました…。多面的な魅力を持つ作品で、
こんな駄文じゃまだまだ、お伝えできてないでしょうね…。
もう一度みたいですね。何度かみられる厚みがありそうです。
3人がこのレビューに共感したと評価しています。
※ユーザー登録すると、レビューを評価できるようになります。
-
つるはしからボウリングのピンへ
2008/07/08 by
カイタカケン
こんにちは。くりふさま。
ネタバレ注意して書きますね、前科持ちになってしまったの(涙)西の魔女さま、ごめんなさい。
> 劇中、彼は、現実では女を作らず、セックスもせず、
> 「穴掘り」に熱中していましたが、妙に納得したのでした。
↑あらっ、何だか嬉しい♪
私もボーリング用の錐が、○○○に見えてしまって(笑)
錐が上下するピストン運動なんか…
ダニエルはココぞと見込んだ(惚れ込んだ)土地にキャンプ道具を持ち込んで寝泊りする“同衾”するんですね。
最初の金女、サンデー牧場、パイプラインの為の測量の土地、パンデッド家の所有地。
晩年も床に“寝る”男でした。
> 新たに発掘した、石油女との「初夜の儀式」で、
> もう一方の、プラトニックなふりしたナンパ師・イーライに
> 手を出させず、息子に「筆おろし」させたコトも妙に、納得。
↑あれは筆おろしだったんですか!
これは気付かなかった。。
石油女炎上のシークエンスで、
この光景をとり付かれた様に見ていたのはダニエル、HW(無論作業をしていた労働者もいましたが)と、イーライでした。
石油女は、中々の性悪女振りを発揮していたと思っています。
> しかし方向は逆でも、やってることは似たようなもの。
> ナンパの違いでぶつかる二人の、近親憎悪な大喧嘩が見所!
↑一つだけ聞いてもいい?
『筆おろし』のシークエンスで、
ダニエルが住民に向って演説を打っていましたが、あれって全て実現したんでしょうか?
実現したと分る映像がなかった事、HWとの関係がああなってしまった事を考えると、どこまで実現したのか分からなくなるの。
ココに拘るのは、ナンパ師であり、山師の本懐を全うしたのかどうかが気になっているんです。
> …アカデミー賞映画にこんな書き方してると、
> ボウリングの玉、ぶつけられそうな気もしてきましたが…。
↑このシークエンスの撮影だけで、2日間要したそうですね。
> 中世ドイツの僧院では、ボウリングは元々、並べた棍棒を
> 悪魔に見立て、玉をぶつけて倒れた数で信仰心が試される
> 「ケーゲル倒し」という宗教儀式だったそうですが、
> その後、信仰から離れ、娯楽として発展したそれが、
> 本作の重要舞台となるのが皮肉で面白い。原作にないので、
> ロケハンで見つけたのでしょうね。原作のモデルとなった、
> 石油王エドワード・ドヒニーの屋敷だったそうですが。
↑PTAは象徴主義的というか、換喩を好んで用いる監督というイメージが私の中にはあって、
ボウリングのシークエンスも、2本のレール、2枚のドア等、意味深ですね。
> 「加州のヒモ」として巨大な財を成した彼でしたが、
> 掘り続けた穴の先で、果たして何を見つけたのか?
> 掘り出し、外に捨ててしまったものは、彼自身ではなかったか。
> 掘った穴はもう単純に、墓穴ではなかったか。
プチ・ロックフェラー(←ご存知だと思いますが、ロックフェラーはスタンダード・オイルの創設者です)の瀟洒な屋敷は巨大な墳墓のように思えました。
作品中に表示された最後の年代は1927年でしたが、この2年後の1929年に世界恐慌が起きます。
> あと、音楽が素晴しく、サントラは即購入してしまいました。
> 「トーン・クラスター」という和音のことは初めて知りましたね。
> 『シャイニング』を参考にしたそうで。あちらは殆ど、
> クラシックの既成曲で構成した所が見事でしたが、
> 本作では、オリジナルで構成されて、とてもカラフル。
> かなり出しゃばる所と、見事にマッチする所が混在し、
> BGMというより、活動弁士の語りのようでした。
↑活動弁士の語りという表現はいいですね。
中盤の、パーカッションがドンドコ鳴っている曲が好き♪心臓の鼓動のようで、面白いなぁって思いました。
ブラームスのヴァイオリン協奏曲が使われた意味は、さっぱり分りません(笑) -
カイタカケンさん、メッ!
2008/07/09 by
くりふ
西の魔女さんのレス、読んできましたよー。
ダメでしょ! 酔っ払ってひとんちで「お漏らし」したらもぉ!!
私も細部を書きたくなるタチで、これでも毎度苦労してます。
投稿後に修正したりとかも。でもまだボカシ技、甘いですね。
なので日々、モザイク入り映像のその部分を凝視しながら、
ボカシを学ぶようにしております(何の言い訳だ)。
カイタカケンさんとのやりとりは毎回とても楽しいのですが、
ネタバレに関しては毎回、ヒヤヒヤしてます(爆笑)。
思い入れある作品は、ご自分でスレ建てて存分に書いた方が、
「漏れ」が減ると思いますよ。で「飲酒投稿」は今後禁止ッ!(笑)
レスいただくこと自体は大歓迎ですので、今後もよろしくー。
>私もボーリング用の錐が、○○○に見えてしまって(笑)
>錐が上下するピストン運動なんか…
○○○に入るのは「シガー」ですよね?
先端部の丸みとかスジの浮き方とかほーら見えてきた。
そしてピストンしても、あのヘアは全く変化しないのです。
>あれは筆おろしだったんですか!
>石油女は、中々の性悪女振りを発揮していたと思っています。
石油女は初め、HWの足を捕えて誘惑してましたからねー。
それも踏まえて、父は息子にああさせたのですよ、きっと。
>ダニエルが住民に向って演説を打っていましたが、
>あれって全て実現したんでしょうか?
すみませんここ、ピストンに目を奪われ(本当は娘を見てた)、
公約の記憶おぼろげです。生きててすみません役立たずで。
もうソフトが来月発売なので(はえー! 客入り悪かったか?)、
その際に見てみます。全うしたかは私も気になります。
>瀟洒な屋敷は巨大な墳墓のように思えました。
ご存知と思いますが、あのロケ地屋敷は石油王ドヒニーが
息子のために建てたのに、彼は一度も暮らさず死んだとか。
主が永久に現れないその場所は、元々、
遺体のない墓地のようなもの、だったのでしょうかねえ。
>中盤の、パーカッションがドンドコ鳴っている曲が好き♪
>心臓の鼓動のようで、面白いなぁって思いました。
proven land(証明された土地)という曲のことかな?
サントラだと、打楽器メインで入ってるのはそれだけみたい。
私は、弦楽器が素早くうねる曲が好きですね。
ちょっとマイケル・ナイマンも思わせたりして。
音楽担当J・グリーンウッドの「Popcorn Superhet Receiver」
という昔の、長い曲がまたスゴそうですね…。
本作サントラの濃厚版、という風なオーケストラ曲。
ネットでそれらしきものを見つけて、
長いのでまだ、全部聞いてないんですが。 -
アルコールは止めて、ミルクセーキにします
2008/07/10 by
カイタカケン
>思い入れある作品は、ご自分でスレ建てて存分に書いた方が、
「漏れ」が減ると思いますよ。で「飲酒投稿」は今後禁止ッ!(笑)
↑酒豪の家系なので、大抵の男性よりアルコールに強いんです(←週末しか飲まないんですが)
殆ど顔に出ないし…でも、サクっと書いてしまうのは、判断力が鈍ってしまうんでしょうね、反省してます。
アルコールの代わりにミルクセーキにしておきます、でも、あんなに長いストロー持っていない(笑)
気に入った作品なので、書くつもりで準備していたんですが(←歴史やスタンダードオイルに関して下調べをしていたんです)ナンパ師の本懐で、壁にぶち当たってしまったの。
>もうソフトが来月発売なので(はえー! 客入り悪かったか?)
↑え〜っ!、来月発売されるんですか、ホンとに早い。
PTA十八番のワンシーン、ワンカットのロングテイクも素晴らしかったんですが、海のシークエンスがとても好きだったの。あそこはヘビーローテーションして見るつもり。
>音楽担当J・グリーンウッドの「Popcorn Superhet Receiver」
という昔の、長い曲がまたスゴそうですね…。
本作サントラの濃厚版、という風なオーケストラ曲。
↑自慢じゃないけど『レディオヘッド』も知りませんでした(笑)
タイトルはproven land(証明された土地)なんですね。CDの視聴出来る所探してみます、感謝。
再度気に入れば買おうかな〜。
もし再見する機会があれば、ウィスキーのショットグラスの数に注目してみてね。
ココも謎なんです。
では、またどこかで…ありがとうございました。
返信を投稿
Copyright©2008 USEN GROUP All Rights Reserved.








