突入せよ!「あさま山荘」事件 (2001)
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剃刀・後藤田の遠望深慮、権謀術数
2008/05/19
by
牧坂満
若松孝二監督の集大成としての「実録連合赤軍・あさま山荘への道程」が公開された中にあって、国家権力側からの視点で眺めた作品です。「実録連合赤軍…」の冒頭は猛吹雪の中を前に突き進む連合赤軍兵士たちが撮影されていましたが、本作品の方は積雪こそ残ってはいるが、長閑な田舎町を警戒するパトカーのシーンから始まります。緊張感の無い地方警察と猛吹雪の中を逆行する革命戦士たちの姿が対照的であり、高度経済成長国家日本における先進国革命が如何に絵空事であったかを象徴する場面です。
映画は「踊る大捜査線」シリーズでも描かれているキャリアとノンキャリアの軋轢。「犯人に告ぐ」で描かれていた東京警視庁と地方道府県警察の縄張り争いが描かれていて、2時間刑事TVドラマとは違ったリアリティが感じられます。更に、機動隊のエリート部隊である4機(大学の体育会系OBで占められ、全員が武道の有段者)別名、殺しの4機、国営暴力団4機を長野県に派遣するか否かを問う場面がありましたが、4機は首都警備に当たるために動かせないという事実も興味深く鑑賞しました。2機も同様のエリート部隊でしたが、新設の9機を長野に派遣します。
連合赤軍メンバーの多くは所謂、一流大学の学生でしたが、そこには超一流大学の東京大学、一橋大学、東京工業大学の学生は一人もいません。全員が旧・国立二期校、或いは早稲田、慶応という、超一流大学の滑り止め校へ進学した挫折感が鬱屈とした感情に構築され、それを満たすためにイデオロギーへ傾斜していったことを「連合赤軍…」でも書きましたが、横浜国立大学の学生が数多く革命戦士になっています。これは「踊る大捜査線」での副警視総監のキャラクター設定が横浜国立大学卒業であることに気付きます。キャリア警察官は、国家公務員上級職甲種試験(※現在はT種)に合格すればエスカレーター式に昇格していきますが、やはり東京大学という学閥は存在しているのです。(※全共闘・中核派の拠点校が横浜国立大学と法政大学)
本作品も「連合赤軍…」もクライマックスは浅間山荘攻防戦ですが、国家権力のエリートの頂点である後藤田正晴警察庁長官(東京大学法学部卒)の遠望深慮、権謀術数“連合赤軍を生きて逮捕せよ、彼らを革命に殉じた英雄にはするな”が、国民の左翼系学生運動自体の不支持という結果に繋がり、国民の敵として白眼視するようになっていくのです。東京警視庁本庁警視正の佐々淳行(東京大学法学部卒)が長野県警本部長の野間警視監(東京大学法学部卒)をはじめ階級に拘泥するシーンは合同組織の指揮命令系統の難しさを描いていて、一種の喜劇に感じてしまいます。
「連合赤軍…」ではあさま山荘内部の状況だけを描いていますが、本作品では国家権力側のモンケン・クレーン機(鋼球・スチールボールともいう)であさま山荘を解体するシーンが登場して、国民の敵を追い詰めたことを映像で見せつけています。また、レビューの中で女優が奇麗過ぎてリアリティが薄らぐと書かれた方もいらっしゃいましたが、TVで拝見した佐々淳行氏の奥さんは絶世の美女であることを付記しておきます。
そして、映画はやはりエンドロールまで鑑賞しましょう。「実録連合赤軍・あさま山荘への道程」でも、人質役の女性に有名女優が起用されていましたが、本作品でも僅かしか登場しない人質女性が誰だったか鮮明に分かります。ヒントは“アンフェア”になるので書きませんけど…。
【ビデオ・マイコレクション】鑑賞
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