モンゴル (2007) »レビュー

良き妻に選ばれたハーン

60点 2008/04/15 by アキラ

モンゴル

2002年の氷山崩落事故で息子を失って以来、沈黙していたボドロフがめげずに再び映画を撮った事を嬉しく思います。その上、今回は全国ロードショー。元々ペレストロイカ以後に世界市場進出したロシア人監督の中では比較的早い時期に商業色に染まった人ではあったが、ここまで派手な作品で戻って来るとは少し意外でした。合戦シーンありヴァイオレンス描写ありで特機やCGやスコアも多用。ただ絵的な面では空の深い青や木々の滲んだイエローオーカーなど『自由はパラダイス』から変らないプイリエフ映画の色彩を連想させられるようなセンスの情景ショットも混じる。それでもロシア映画史に裏打ちされた中央アジアならではの重さを感じさせないほど商業色に染まってます。昔のホドロフ作品に比べると絵も芝居も流れる所が多く素っ気ない。

物語はチンギスハーンのサクセスストーリーに焦点を当てたものではなく夫婦のドラマが中心。家族単位の部族同士で争う若き日のエピソードから当時としては進歩的な対等な夫婦の関係が描き出されています。策略結婚に甘んじず、相手と同意の上で夫婦となり、妻子を置き去りにして逃げたりせず、妻子の為に合戦を起こし、時には妻の助けにより窮地を抜け出す。これらは欧米では当たり前の価値観だが、当時のモンゴルの道徳からは外れています。誰もが知る英雄を家族の為に概在の道徳観念を打ち破る男として描き出しています。だから武勇伝の方は背景として扱われます。理想を追う気持ちよりも家族の絆を描きたかったのでしょう。これが夫婦でなく親子のドラマだったら、もっと染み入ったかもしれません。父の意図に反した嫁を選んだ息子に困りながらも自分の意志で嫁を選べたのだから一人前だと認めてくれたというモノローグに思わず役者を志したJrに反対しながらも彼を主演に使って共に映画製作を続けたボドロフ自身の過去を重ねて見ていました。

 

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