靖国 YASUKUNI (2007) »レビュー

ドキュメンタリーとして出来はよくない。

40点 2008/07/13 by odyss

靖国 YASUKUNI

ドキュメンタリー映画として、不出来だというしかない。

8月15日の靖国神社の様相は、まあ捉えられているだろう。いささか騒々しいが、左右両派のそれぞれに異物的なしぐさや表情や言説が羅列されているのはそれなりだ。ここはプラス評価。

ただし、靖国神社には8月15日の顔だけがあるわけではない。靖国神社は第二次大戦で犠牲になった兵士だけを祀っているわけではないからだし、1年365日の顔だってあるはず。ところがそうした表情はいささかも捉えられていない。例えば政治的人間であっても、政治的ならざる顔が必ずある。それを押さえないドキュメンタリーは物事の一面だけを描く半端な存在に過ぎない。ここでマイナス評価。

そして刀匠を映し出す部分は、まるでうまくいっていない。李監督の繰り出す質問に刀匠はまともに答えていないが、それも当然だろう。李監督はたぶん刀匠をまったく理解できていない。自分の質問が中国の或る時代の教育によって仕込まれたものであるがゆえに、普通の日本人には答えてもらえないものだということも分かっていない(例えば、文革期の用語や言葉遣いで質問されてまともに答えられる日本人は、毛沢東崇拝者だけである)。これは、李監督が日本に来ていささかも日本を学ばなかった何よりの証拠だろう。質問とは、自分と相手の位相の違いを映し出す鏡だ。せめてその違いを認識していることが分かればまだしもだが、ここにあるのは徹底的なすれ違いなのである。むろん李監督に肯定的な見方をするなら、李監督はこうしたダメな質問を続けることによって、過去の世代の日本人に肉薄し得ない自分の限界をあえて描いたのだと見ることもできようが、はたしてそれほどの深謀遠慮が李監督にあったかどうか。ここは大きなマイナス。

さらに、最後近くでの「南京虐殺」を含む怪しげな写真の列挙は明らかにイデオロギー的と批判されても仕方がないし、李監督がこの神社について総体的に勉強していないことは明白だ。(ここの掲示板でも指摘されているように、日本刀がご神体だという説明は間違っている。)近代とは戦争の歴史であった。日本が明治以降に数々の戦争を経験したのは、近代がまさにそういう時代だったからだ。だからこそ戦争の犠牲者を国民(の少なくとも一定数は)は静かに(ここが大事)祀る必要を感じてきたのである。戦争は犠牲者をともない、その犠牲者を祀るという作業も、近代化の一部分だということを知らないで、どうしてこの種の映画が作れようか。ここでもマイナス。

合計してマイナスが多いので、この点数。

 

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