マンデラの名もなき看守 (2007) »レビュー

凡人にもできることを教えてくれる映画

80点 2008/06/20 by odyss

マンデラの名もなき看守

実際にあった話をもとにしている映画だそうですが、味わい深い佳品と言える出来栄えです。

人種差別が当然視されていた南アフリカで、政治犯として刑務所に入れられていたマンデラを扱う係になった軍曹。刑務官と囚人ではあっても、そこに一種の人間関係が成立するのは必然です。そしてそれは刑務官に改めて人種差別や人権について考えさせる契機を与えるのです。

学校で習う「平等」や「人権」には、どこか建前的な匂いがつきまといます。きれいごと、といった印象から逃れられないのです。ここでは、具体的な人間関係のなかから刑務官が少しずつ「平等」を考え、行動に移して行くところが説得的だと思う。むろん、彼の行動には限界があるし、上司の命令に露骨に逆らうことはできません。自分が上司に出した情報によって人が殺されたのでは、という罪悪感にも悩まされます。

しかし、凡人が平等や人権のためにできることとは、こうしたことではないでしょうか。圧倒的なスーパーマンや正義の味方であることはできなくても、ちょっとした何かはできるのです。一方で殺人につながる罪を犯しながら、他方で囚人やその家族のためにささやかな善をなすことはできるのです。この映画はそうしたメッセージを、政治臭くならないように自然に送り出していると言えます。

家族の描写にも時間をさいているところが、また優れています。凡人は妻や子供のためにカネをかせがなくてはならないし、上司のいいなりになることで昇進もしなくてはならない。しかし家族のためにと良心の声を押さえつけて昇進することが、逆に囚人の家族への想像力をもはぐくんでしまう。空理空論の人権理論を訴えるのではなく、きわめて実践的な映画だと評したくなる所以です。

ダイアン・クルーガー演じる妻も――軍曹の妻にはちょっと美人すぎるけど――なかなか示唆的。最初は平気で人種差別的な言葉を吐いていたのに、マンデラが釈放される頃になると、言うことが変わっている。これまた、凡人の実態をさりげなく描いてすぐれた箇所だと思います。

 

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