山桜 (2008)
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凛とし、品格ある姿勢
2008/06/25
by
黄金のキツネ
観るチャンスが幾度か急用で潰れてしまい、ようやく3週間たって観れました。
時代劇にしては珍しく女性が主人公です。本人にその気がなくとも、いわゆる運命のイタズラで幸せが薄かった野江(田中麗奈)が、徐々に自分の意思を自覚し、新しい運命に向かっていく物語です。淡々と穏やかにストーリーは進みますが、悩んでいる女性にとっては(そしてたぶん男性にとっても)、ある種の力を与えてくれそうな気がする映画です。
清々しい野江の実家の人たちがいます。品性をないがしろにすることのない父親(篠田三郎)、若々しい正義感を持ちながらも姉の野江を思いやる弟(北条隆博)、そしてなにより野江を温かく見守り励ます母親(壇ふみ)の存在。……いい家庭です。
羨ましく思います。その家庭で育った野江に、嫁ぎ先の下働きの人たちに対する配慮や、凛とした気品があったのは当然でしょう。この親にしてこの子あり、です。日頃の自分の父親としての行いを省みると頬が赤く染まってしまいます。
「あなたは回り道を……(以下ネタバレなので省略)……」、という壇ふみのセリフは、悩んでいる若者にとっては最高のエールです。子どもに対する親からの言葉として、これに勝る愛情と全幅の信頼を表した言葉はないと思います。何気ないシーンでしたが、とても感動的で、その温さに涙がにじみました。それだけの器量と大らかさを本当に持ちたいものだ、そしてそれを子どもに注がなければ、と思い知らされました。
ただ肝心の山桜の樹自体がそれほど堂々としたものではないことと、何よりもカメラアングルのせいでその山桜の梢の後方に、別の白い花の樹が見えているのが残念でした。なぜその後ろの樹を切り倒さなかったんでしょう。「悪りぃっ、ゴメン」、と言って地主には話をつければいいのに。たぶん噂に聞く黒澤明なら迷うことなくそうしたでしょうに。
しかし田中麗奈の演技、自分の芯を決して曲げずに凛としている姿は、女性の美しさの一つの側面を見事に表現していましたし、終盤のわずかな出演でしたが富司純子もすばらしかったと思います。
そして手塚弥一郎役の東山紀之さん。眼差しの演技と殺陣は掛け値なしに見事です。とくに殺陣は今までの藤沢周平の時代劇では、『たそがれ清兵衛』の真田においてすら、小刀と大刀との間合いに違和感があって絶賛はできなかったのですが、本作ではたいへん感激しました。無駄な動きがなく、かつ様式美を保ったという点で絶賛に値する見事なものでした。
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