ゲティスバーグの戦い/南北戦争運命の三日間 (1993)
»レビュー
見応えのある合戦映画だが
2008/04/08
by
じょりちょこ
ピューリッツァー賞を授賞したマイケル・シャーラの「Killer Angel」を原作とする本作「ゲティスバーグの戦い/南北戦争運命の三日間」は、南北戦争マニアなテッド・ターナーが金にモノを言わせて完成させた合戦映画です。
R・E・リー将軍にマーティン・シーン、
ロングストリート将軍にトム・ベレンジャー、
ピケット将軍にスティーヴン・ラング、
チェンバレン大佐にジェフ・ダニエルズ、
その弟にC・トーマス・ハウエル、
ビュフォード将軍にサム・エリオット
といったキャストです。
リー将軍にマーティン・シーンはミスキャストだと思いますが(というのはリー将軍は長身で優雅な物腰の人物なのですが、マーティン・シーンは背が低く、また優雅とは言えません)、他はまずまずです。
戦闘シーンは極めてリアルでありながら、全体の流れもわかりやすく、非常に優れた仕上りだと思います。まずは観客の期待は裏切られないものと思います。
(特にリトルラウンドトップにおけるチェンバレン大佐の連隊の奮闘と、ピケットの突撃は涙なくしては見れません。)
しかし、全体としてはいくつか課題が残ります。
ゲティスバーグの戦いは「もしも...」という瞬間がいくつもあるのですが、そこがことごとくさらりと描かれています。そういうポリシーもあるののかな、と思いますが、もったいないと思えてなりません。
たとえば、スチュアートの騎兵隊が大幅に遅れて到着したことは南軍の情報収集を大いに制限し、問題となりました。たしかにスチュアートが遅れて到着してリー将軍に激怒されるシーンはあるのですが(このシーンは、リー将軍が珍しく人前で他人を叱責したシーンとして有名なシーンなのですが、その点も強調されていません)、スチュアートがそれまで何をしていたのか描かれていないので、スチュアートの心境はつかめないままです。もっというとリー将軍が、スチュアートの不在で困っているシーンも皆無なので、ますますなんでリー将軍が激怒したのかわからない作りになってしまっています。
第1日の日没においてユーエルの軍団で、さらに前進してセメタリーヒルを落とすべきだと部下が進言するシーンも強調されていません。このときユーエルと対峙していたハワードの軍団はチャンセラーズヴィルの戦いで屈辱的な大敗を喫しており、そのために戦意が非常に低下していたのですが、その点も描けていません。
第2日の布陣においてシクルズが突出してしまっていたくだりもほとんど描かれませんし、ロングストリートがわざと戦闘開始を遅らせたくだりもどうとでも解釈できる描き方で不満が残ります。
つまり、この映画はもっぱら戦闘シーンの描写が目的の映画になってしまっています。まあ、そこさえしっかりしていれば、下手な歴史考証は無用だというような観客がターゲットなのかも知れませんが。
テッド・ターナーは本作の仕上りを大いに気に入り、同じスタッフに「Gods and Generals」(2003)を作らせます。こちらはさらに長大な作品になっており、いまいちピントが定まらない作風にも拍車がかかっています。
なお、この映画の制作当時、テッド・ターナーはジェーン・フォンダと結婚していました。本作とは何の関係もありませんが、豆知識として。
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先を越されましたが見事な寸評です
2008/04/08 by
牧坂満
> ピューリッツァー賞を授賞したマイケル・シャーラの「Killer Angel」を原作とする本作「ゲティスバーグの戦い/南北戦争運命の三日間」は、南北戦争マニアなテッド・ターナーが金にモノを言わせて完成させた合戦映画です。・・・ビデオを持っているので休日にでも再度見直して寸評しようと考えていたところですが、流石です。
レビュー評価をPUSHしておきます。 -
Re: 見応えのある合戦映画だが
2008/04/08 by
Day
じょりちょこさん、初めまして。 『ゲティスバーグの戦い』をご覧になられたのですか。良いですね。 2003年ぐらいに、ツ○ヤさんで、リクエスト100%応えます、とあったので、リクエストをお願いしたのですが、見つける事が出来なかった、という返事が返ってきました・・・。
今では、『ゲティスバーグの戦い』『ゴッド・アンド・ジェネラルズ』のUS版を持っていますが、英語字幕で長時間見ないとダメなので、今のところ全然見る事が出来ない、もしくは、見る気がおこりません・・・。
牧坂満さん、良いですね。ビデオお持ちなんて。羨ましいです。
日本未公開なのに、『ゴッド・アンド・ジェネラルズ』のサントラが豪華2枚組み(PVとかカットされたシーンとか付いてます)でありますよ、豆知識として。 -
Re: 見応えのある合戦映画だが
2008/04/09 by
じょりちょこ
誰にも相手にされないと思っていたので、うれしい驚きです。(僕は南北戦争マニアなのです。)
「Gods and Generals」は劇場公開時にはカットされた「アンティータムの戦い」がDVDでは収録されると聞いておりまして、もしそうだとすれば「とうもろこし畑」で銃弾がとうもろこしを刈り取っていくシーンが観れるのかも知れない...とか妄想しています。
「Gods and Generals」では「フレデリックスバーグの戦い」が圧巻でした。この戦いでは南北両軍にアイルランド連隊があり、彼らが涙を流しながら銃を撃ち合うシーンがあります。アイルランド移民はアメリカの港につくや、そのまま軍隊に送り込まれたケースもあったと言います。ひどい話です。
僕自身はさらに続編を作ってもらって、コールドハーバーの戦いとピータースバーグ包囲を是非とも描いてほしいです。
20年近く前の話になりますが、NHK教育で放映された「シリーズ南北戦争」のピータースバーグ包囲のくだりで、複雑な塹壕陣地を構築して防衛する南軍に対し、何ヶ月も攻撃に失敗してきた北軍がついに塹壕に突入すると、そこには老人と少年の死体ばかりが転がっていたという話が出てきます。つまり、南軍にはもはや人的資源が枯渇しており、老人や少年を動員せざるを得なくなっていたのです。北軍の兵士は、どうして同じ国の人間がここまで殺し合わなければならないのか?と泣き出してしまいます。アメリカ人にとって、南北戦争を戦わなければならなかったということが、言わば十字架を背負わされるように、重くのしかかっているということを思わせるエピソードです。
ピータースバーグで老人や少年が動員されていたことの背景には、シャーマン将軍がアトランタからサヴァンナまで徹底した破壊工作を行ったことがあります(アトランタ炎上のシーンは「風と共に去りぬ」で有名ですね)。このシャーマンの破壊工作のために南部の経済はズタズタにされ、リッチモンドやピータースバーグに補給も増援も送られてこないようになってしまったのです。
シェリダン将軍もまた、シェナンドア峡谷で同様の破壊工作を行い、リッチモンドに立てこもる南軍の補給は完全に絶たれてしまいます。グラント、シャーマン、シェリダンのトリオはたとえ個々の合戦では負けようと、絶対に諦めず、リー将軍に休む間を与えないことを決めていました。そして南部の資源を荒廃させることが、戦争を早期に終結させるための最良の方法であり、戦争を早期に終結させるためにはどのような破壊行為も人道にかなうと考えていたのです。
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