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完全な家族なんてない。

70点 2008/07/16 by 黄金のキツネ

歩いても 歩いても

何気ない会話。ポロッと出る本音。笑い話になるのもあれば、時にはゾクリとする怨念のこもったひと言もあったりします。それにまたズケズケとものを言う娘。それをあしらう母親のエゴ。両親の前では率直に物事を言うのをためらう息子。窮屈な思いをすることが分かっているだけに、実家へはあまり行きたがらないその息子の心情と打算。

どこにでもいる当たり前の家族です。しかしその表面のみならず裏面の見せ方が実に巧みです。

その裏面がわたしにはイヤになるほど分かります。映画よりももっと生々しい形で笑顔の底に沈潜していた冷たさや、消え去ることのない怨念を直接耳にもしたことがあったので。ですから触れられたくはない過去、そして現在を見せつけられた思いがして、その分だけ不愉快になりました。

風呂場の壊れたタイルや新しい手すり、階段を一段一段と足を揃えなければ降りることが難しくなった父親役の原田さんの姿に、いやおうなく過ぎ去っていった歳月が感じられます。それは自然で当たり前なことなのですが、「老い」が露わになった日々でもあります。日常の積み重ねの果てには直視したくはない現実があることを感じさせます。

でも辛く苦しい映画ではありません。そこかしこに会話の明るさと面白さがあります。劇場にいた他の方々も私自身も笑っていたので、基本的には楽しい映画です。また役者さんたちの演技は素晴らしく、樹木希林さん、YOUさんが特に光っていたと思います。

印象に残るシーンもありました。墓参の帰り道にデジャ・ブのように現れる黄色い蝶。そして発せられた言葉。そういうものが家族の思い出となり受け継がれていくんでしょう。いいシーンでした。

さらに、「いつもちょっとだけ間に合わない」という言葉―――これも印象に残りました。けっして後悔の言葉ではありません。人を納得させてくれる素敵なフレーズだと思います。なぜなら「いつも間に合う」ような完璧な子どもになるなんて、どだい無理なんですから。反発しながらも不完全さを補い助け合いながら、絆を緩くしたり強めあったりするのが家族なんだろなぁと思いました。

 

5人がこのレビューに共感したと評価しています。
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  • 完全な家族なんてない。

    2008/07/24 by こんぶ

    黄金のキツネさんのタイトルを見て、レビューを読んでみる気になりました。
    そしたら、鋭くも的確な分析と賞賛。そして情景描写の再現に、もう一度本作品を見たような気持になりました。
    私的には90点以上の点数を上げたい映画でしたので、黄金のキツネさんの得点にあれっと思ったのですが、読んで納得。絶対基準のある方なんですね。私の場合は「良かったなぁ」と思うと90点以上、「ダメだこりゃ」と思うと0点基準。極端すぎて、参考にもならない配点です。反省。(でもこれからもそうしちゃうと思いますが)

    『「いつもちょっとだけ間に合わない」』
    黄金のきつねさんが抜き出したこのセリフに私ははっとしました。

    本作の感想ではなく、レビューのレビューになってしまってスイマセン。とにかくいいレビューでした。

  • Re: 完全な家族なんてない。

    2008/07/24 by 黄金のキツネ

    こんぶさん、今晩は。どうかよろしく御願いします。
    レスしてくださった上に、感想文をお褒めいただいてありがとうございます。率直に嬉しいです。

    この作品はいい映画なんですが、ちょっと思い出したことが・・・・・・だったのでこの点数としました。ご理解いただけたようでホッとしました。

    なお私の採点基準ですが、このサイトに参加したての時は、〔投稿ルール〕の「採点の目安」を参考にしていたのですが、そのうちに自分には合わないなと思うようになり、まったくの主観で次のようにしています。

     普通から悪い方へかけてまず述べてみます。

    50点。ふつうの作品。可もあれば不可もある。もう一回くらいはレンタルで観るかもしれない。
    40点。つまらない。しかし入場料にしろ、レンタル料にしろ、お金を払ったことに対する後悔はない。たまに再見するときがある。
    30点。少しイラッとする。お金に対する後悔もちょっと生まれる。他の作品との比較のために再見するときがたまにある。
    20点。明らかにつまらない作品。イライラした上にお金を払ったことに対しても後悔する。まず再見することはない。
    10点。イライラを通り越し、明かな怒りを感じる。しかし全部が全部ダメと言うわけでもなく、どこかにいいところもある。
    0点。全くダメ。見終わって数日経っても憤りを感じている。絶対に再見しない。

     今度はいい方です。

    100点。とてもとても、とーっっても素晴らしい映画。それに加えて、とてつもなく嬉しい衝撃か、稀にみるほどの感動を与えてくれた作品。
    90点。とても素晴らしい映画。感動して絶賛できる映画。
    80点。素晴らしい映画。誰にでも勧める作品。
    70点。かなーり面白い。ソフトは買ってもいいかも。
    60点。面白い映画。人に勧めるときもある。でもたぶんソフトは買わない。

    だいたいこんなところです。基本的に映画のいい面をみるつもりなので加点法主義です。なお90点と100点との間は、自分的にはかなりはっきりと峻別しています。また不愉快な衝撃があったり、そういう思い出が喚起された作品は、その分だけマイナスするときがあります。
    この作品は上記の基準からすると85点くらいの素晴らしかった映画なのですが、そんなわけで結局70点としました。

    繰り返しになりますが、採点は全くの主観です。文芸作品に対する評価というものは、どんなに優れた評論家でも、他の作品との比較や技術的な面、製作当時の思想や映画史との関連などではある程度客観的な論評もできるとは思いますが、それでも最終的には主観が入ってしまうものだと思っています。
    ですから、こんぶさんも他の人に参考になる、ならないなんてことはあまり考えなくて、ご自分の方針のままでいいと思います。

    ではでは。

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