スラヴォイ・ジジェクによる倒錯的映画ガイド (2006) »レビュー

名作サイコアナリシス

80点 2008/05/07 by くりふ

「イメージフォーラム・フェスティバル2008」にて。
『映画を精神分析』するらしい点に惹かれ、みてみました。
いや面白かった!! あくまでガイドとして、ですが。

「映画は、我々が欲情するものを与えはしない。
我らが何に欲情すべきかを教えるものなのだ。」

ラカン派精神分析学を適用したという視点から、
ハリウッド映画を中心に、古今の名作を40本以上、
少し潜った所からザックリと捌き、新たな見方へと導きます。
3部構成の150分。元々はTV向けなのかな?

まな板にのせるのは、やはり心理的な深みを含む作品ですね。
監督としてはヒッチコック、リンチ、タルコフスキー、など。
英語版Wikipediaで取扱作品全リストを見つけました。
ttp://en.wikipedia.org/wiki/The_Pervert's_Guide_to_Cinema
(頭にhをお付けください)

リンチ作品の母親像は以前から面白いと思っていましたが、
父親像には気が行かず、本作での指摘は参考になりました。
例えば「ブルー・ベルベット」で冒頭、父親の権威が失墜した後、
侵食してくる強権的な父親像(D・ホッパー!)、という見立てで、
主人公たち3人の、倒錯的な関係を再考させる部分など、
作品をみる視野をもう一段広く、開いてくれるものでした。

ヒッチコックの分析が、作品数も多く、濃かったですね。
主人公スコティの欲望実現、を中心にサクリと斬ってみせる、
「めまい」分析は中々でした。物語ほとんど明かしてましたが。
当然、作品によっては激しくネタバレ有なので、要注意です。

思想家S・ジジェク氏のことは殆ど、知りませんでしたが、
プレゼンターとしては堂に入ったものでした。公演慣れ?
すこし鬱陶しいけど、面白いオジサンです。
本作で興味が湧いて、彼の著作を覗きはじめました。
ヒッチコックに関しては、単体で研究する本を出してますね。
あれ、ちょっと「ガイド」とは、言ってることにズレがあるぞ?
なんて所も見つけたりして、一筋縄ではいきませんが面白い。
映画をみることがより、楽しくなってしまいました。
クチコミなぞ書いてないで、もっとみなきゃと思ったり(笑)。

疑問を感じる部分はあるものの、
本「ガイド」は、ガイドとして、中々よいと思いました。
但し『倒錯的』に映画を楽しみたい人向けでしょうね。
また当然ですが、ガイドで得たものをどう生かすか、の方が、
より大切ですね。

監督のソフィ・ファインズは、レイフ&ジョゼフ・ファインズの
妹さん、とのことです。グリーナウェイ監督の現場上がりで、
過去には、マイケル・クラークやL・V・トリアー監督に関する
ドキュメンタリーを撮っているようです。

英語版DVDはすでに出ているようですが、日本版はどうだろ?
よく喋る思想家、だから、字幕を追うのが厳しかったので、
できれば吹き替え入れて、日本版出して欲しいです。

 

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  • Re: 名作サイコアナリシス

    2008/05/07 by カイタカケン

    こんにちは、くりふさま。

    ラカン派のS・ジジェクですかぁ、過去に一冊だけ読んで、余りの難解さに放り投げた情けない思い出でがあります(笑)

    ヒッチコックの解説(ご紹介の『めまい』)はそのダイジェスト版のようなものを読んだことがありますが、『見知らぬ乗客』の分析には??でした。
    ハスミン先生は、ジジェク氏、確かお嫌いでしたね、ものすごーい表現されてますもの。。
    でも、D・リンチとは相性が良さそうですね、これは一度見てみたい(聞いてみたい)みたいものです、但し、フツーの頭でも理解出来るならばですが…(涙)

    ご存知かもしれませんが、ジジェク氏の奥様、スーパーモデル並みの美人ですよ♪

  • カイタカケンさん、ドベル・ダン!

    2008/05/08 by くりふ

    私も本作に、アカデミックな物言いは殆どできねっす(笑)。
    自分好みの作品が次々登場して、そこに斜めからの光が
    当たってゆく様が、まずエンタメとして面白かったのですね。
    しかし本数が多く、個々の深い作品論には行かないし、
    ジジェクの著作から受けるイメージとは随分違う気がします。
    あくまで、映画の見方のガイドなんですね。
    分析としては、油田採掘に比べれば、潮干狩りに近い気が。
    カイタカケンさんには、物足りないかもしれません。
    私にとっては、この先は自分で掘ってみ、という
    自由度がよかったのですけどね。やる気出ちゃった(笑)。

    企画の成立ちは知らないのですが、ジジェクの著作と違い、
    観客を意識し、そうとう敷居を低くしてあると思います。
    他に監督を立てた映像表現、という影響もあるのでしょうが。

    例えば本映画(?)では、「サイコ」における、ベイツ家の構造を、
    1F/ノーマンの自我、2F/超自我、地下/エス、とざっくり捌き、
    論を進めますが、著作「ヒッチコックによるラカン」を読むと、
    「このような解読で、深層心理のシンボルを嗅ぎあてることは、
    本質をそれているように思える。無効ではないが」などと、
    あまりお勧めできない、というふうな書き方がされてますね。
    間違いではないがターゲットが違う、ということでしょうか。
    (映画では、150分、素早く語り続ける字幕から、
    私が何か見落とした可能性もありますので。念のため)

    「めまい」の分析も、「ヒッチコックによるラカン」とは、
    ずいぶんアプローチが違いますね。根っこは同じようですが、
    見てとりあえずすぐわかる、という作りにしているんですね。
    (「ヒッチコック×ジジェク」は読んでません)

    ハスミン先生の評価は知らないのですが、勿論、
    ジジェクの仕事そのものに対する評価に賛否あるでしょうし、
    本作をみていても、いいの? と疑問に感じる所もありますね。
    その辺含めて、自分で掘ってみるか、と私は思いましたけど。
    ま、『ジジェク素人』の戯言でございます。

    ちなみに、東京での上映は終わりましたが、今後、
    京都、福岡、名古屋、横浜の順で続くそうです。
    「イメージフォーラム・フェスティバル2008・公式サイト」
    (特集:ドリーム・マシーンの1プログラムです)
    <リンクURL>

  • 幻の女、マデリン

    2008/05/08 by カイタカケン

    >分析としては、油田採掘に比べれば、潮干狩りに近い気が。
    私にとっては、この先は自分で掘ってみ、という
    自由度がよかったのですけどね。やる気出ちゃった(笑)。

    ↑以前、くりふさんが書いておられた『めまい』のレビュー、とても面白かったのですが、
    それを読んでいて、チラッと頭を過ぎったのがジジェク氏の分析だったの。
    やる気出たみたいなので(笑)、今後のレビュー、期待してます♪
    プレッシャー掛けてるんじゃありませんからね、どうか、気楽に書いて下さいまし。
    私も何かの作品で『潮干狩り』やってみます、と言っても、単なる水遊びになってしまいそうだけど。。

    では、また何処かで…ありがとうございました。

  • カイタカケンさん、お礼と注釈

    2008/05/09 by くりふ

    >以前、くりふさんが書いておられた『めまい』のレビュー、
    >とても面白かったのですが、

    一年近く前に書いたと思いますが、覚えていていただける、
    というのはとても嬉しいものです。感謝感激にございます。
    面白がっていただけたようで幸いです。

    >それを読んでいて、チラッと頭を過ぎったのが
    >ジジェク氏の分析だったの。

    ジジェク分析に比べたら、私のなどはプーですが、
    視点や切り口で共感できるところは幾つもありますね。
    男側ファンタスムの一方通行であることとか。
    「ガイド」でも、スコティにとっては辛辣な物言いをしてます。
    幻の女は、女にとっちゃいい迷惑ですよね(笑)。
    勿論「めまい」は大変よい作品で、私は今でも大好きですが。

    >やる気出たみたいなので(笑)、今後のレビュー、
    >期待してます♪ プレッシャー掛けてるんじゃ
    >ありませんからね、どうか、気楽に書いて下さいまし。

    やる気とは、より深く映画を楽しむ、ということでして、
    書くことより先に、そちらが目的でございます。
    書くものは大して変わんないと思いますので、
    期待せずに、テキトーにほっぽっといてくださいまし。
    あ、別にプレッシャーもないので気にせんでください。
    ここは遊び場ですしね。

    >私も何かの作品で『潮干狩り』やってみます、と言っても、
    >単なる水遊びになってしまいそうだけど。

    カイタカケンさんのが水遊びなら、
    私のはトイレで水を流す行為の如きでございます。
    小でなく大である自負はありますが…ってなんの自慢だ。

    ではでは、またまた。

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