シンドラーのリスト (1993) »レビュー

故・淀川先生に同感

0点 2007/08/11 by 未登録ユーザ 月踊り

スピルバーグは映画技巧の天才です。
見せる事に関してだけは抜群に巧いです。

でも彼の作品からは作家としての息吹きが全く感じられないんですね。傑作『激突』や『JAWS』『レイダース』のような作品ならまだいいんですが、この作品や『カラーパープル』のような題材になると、“仏作って魂入れず”の悪癖を露呈してしまうんです。いや、癖ではない、こういう人なんでしょう。

故・淀川長治さんがこの映画について「映画とは心の芸術、心をソロバンで見せられてウンザリした」と評していましたが、全く同感です。ボクは淀川さんでさえ評価していた『E.T』にたいしてもそれを感じていました。

彼の手法はこうです。
主人公はいつも健気でいい人です。その健気さを引き立てるために、必ず敵役を設けます。『E.T』では無理解な親、大人たちでした。この作品では誰がそうだったかを言う必要はないでしょうが、近代史に於ける、実存した最大の悪役なワケですから、その設定は非常に簡単だったはずです。

スピルバーグと同じユダヤ人映画作家にウッディ・アレンがいます。一般的にはアレンの作風はユダヤ的な諧謔心がジョークとして散りばめられているために、アクが強すぎるとして嫌う人も多いようです。しかしアレンの諧謔心は極めてパーソナルな、殆どが内側にむいたベクトルです。歴史への民族的な恨み節は大概がワーグナーの悪口を言う程度のもので抑えられています。この映画を作った、そしてオスカー選考の直前に公開したスピルバーグのしたたかさ、というよりも、えげつなさの方が、ユダヤ的な臭みを漂わせていますね。

この映画を高く評価した人はきっと、『大いなる幻影』や『かくも長き不在』『シベールの日曜日』などは観ていないのでしょう。観ておられていたら、この作品に対する評価は少なくとも星1つか2つは減らすと思いますから。

 

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