シンドラーのリスト (1993)
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天国と地獄
2008/03/31
by
牧坂満
ハリウッドは世界の動向に敏感なところであることを再認識させられました。映画公開時期は、旧・ユーゴーの“民族浄化”にドイツの“ネオ・ナチズム”やフランスの“極右活動”、合衆国内が抱える“民族問題”等々の“人種差別主義者”達の蠢動を危惧させる危険な兆候がありました。
こんな時期にあって、ナチスのユダヤ人虐殺の“ホローコースト”は、実にタイミングのよい世界に対する警鐘となりました。
ポーランドのナチスの強制収容所に送り込まれるユダヤ人を自分の工場従業員として採用して、千人余りの生命を救ったシンドラーというドイツ人実業家をヒューマニズムで描いていますが、日本人外交官の日本という国家の命令に背いてまで、ユダヤ人たちにビザを発行した思いとは違っているように思われます。シンドラーの工場で働いたユダヤ人労働者たちは低賃金労働者であり、実業者シンドラーは彼らの滅私奉公により、巨万の富を獲得しています。
映画はモノクロ画面なのですが、黒澤明監督を師と仰ぐスピルバーグだけあって、ある一人のユダヤ人少女の洋服だけに、赤い色をつけて少女の動きをカメラで追っていきます。無事に逃げ遂せて欲しいと観客たちは感情移入してしまいますが、少女を含めたユダヤ人たちの無念さを代弁するようにナチスの残虐な反人間的行為を客観的な視点で暴きだした演出手法は見事です。
しかし、スピルバーグのしたたかさはシンドラーをヒューマニストとして描いて、犯罪行為をドイツ人論一般にはエスカレートさせなかった政治的計算に見て取れます。モノクロ映画がカラー画面に変わる、大戦後のシーンはシンドラーの墓参りをする生き延びたユダヤ人たちを感動的に描いていることが、それを証明しています。
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