上海 (1938) »レビュー

市街戦跡地から見える物

80点 2008/06/03 by アキラ

まだ現場に出ていなかった頃の亀井文夫監督作品。事実上は構成編集って形で作品に関わっているからなのか後の作品に比べると感覚的な細部に触れる情報は少ない。三木茂が撮影して来た素材と軍部からの報告だけで台本を組んだような印象があります。冒頭の字幕で示される通り現場に出ない限り物理的な主導権は軍部にあります。そういった意味ではまだ典型的な戦意高揚プロパガンダ。ただ偽られる部分もあっただろうけど、欺いているようには見えません。支那事変も開戦間もないこの頃は首尾は上々。まんまと蒋介石の術中にハマった日本側は負けてるとは思っていなかったから戦況報告を改ざんする必要はなかったのだろう。戦況を分かり易く伝える構成としても亀井氏は良い仕事をしています。冒頭に日本軍が入る前の上海の情景が映って国際関係が説明されて、地図で日本軍の侵攻過程を大雑把に説明した後、陥落後の上海にカメラは入り平穏を取り戻した日本人街の子供たちや捕虜を映し、その後に廃墟と化した上海を映して細かい作戦内容を説明。

市街戦跡地には様々な戦闘における工夫の跡が見えます。カーチカやクラークや落とし穴。一見派手な人海戦術に見える兵法にも実際には様々な地形を利用した駆け引きがあります。確かスピルバーグの『プライベートライアン』では薄壁が崩れ落ちると敵兵の集団にバッタリなんてシーンがあるが、この戦闘にもそれと似た局面やら建物自体の形を利用して互いに自分側に有利な局面を作ろうと鬩ぎあっていたであろう事は作戦の説明を聞いていると容易に想像がつきます。勿論、速やかに行わねば先手を取られるだろうから必ずしも完璧に作戦通りに進むとは限らないのだろう。クラークの中には大して役に立ちそうにない物も点在します。映像は戦闘が終わってからこの戦闘に備えて日本人街から内地(日本本土)に避難していた一般市民が上海に戻って来るまでの数日間に撮られたようです。こんな姿になった上海を攻撃した側である日本軍の内部から撮っていたという意味で資料映像としても価値はあるけど、やはり映画として見ても正当法でありながら実に巧みな構成。

アテネフランセにて映画の授業

 

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