ダカール リングがつなぐ青春 (2005) »レビュー

フランス風味とは

70点 2008/06/03 by アキラ

今年のシネマアフリカはTICADに伴い横浜で開催。HIVや貧困や内戦や民族紛争など様々な問題を抱えた国々からリアルタイムな問題意識を孕んだ作品が届きました。その中にありながらこのンジャイ監督の作品は表面的な問題提起よりも文化的アプローチに重点を置いているって意味で異質な輝きを放っていました。さすがセネガルは文化的に進んでいます。これは伝統のセネガル相撲について描いた青春映画。監督はセネガル生まれフランス育ちのシネフィルだけあってセンベーヌを連想させるような作風。ヌーベルバーグ以前のフランス映画全盛期みたいな文学的香りを残してくれます。もしかしたら批評に汚染された現在のフランス本土よりもセネガル映画の方がトリュフォー等の批判に断絶された古典フランス映画の伝統に忠実な形で映画文化が育っているのかもしれません。文化を語りながら単純明快な青春映画には落ち着かず社会の暗部にも触れた内容。

恋人のヒモ状態でギャンブルに明け暮れる低所得層の若者。中流階級の若者をカツアゲ。そこに表れたのはセネガル相撲の国民的スター選手。実際にも彼を演じたのはスター選手本人だから撮影時は人払いが大変だったそうだ。彼に助けられた中流階級の若者は彼と付き合う間にセネガル相撲の面白さに目覚める。だが彼の両親は格闘技嫌い。スター選手も街のチンピラ扱い。一方、恋人に諭された低所得層の若者は真面目に働こうと仕事を探し始めるが、彼に紹介されたのは麻薬売買だの強盗だのギャングの下働き。一方で夢を追う若者の姿、もう一方では最低の生活から這い上がろうとする若者の姿が描かれる。このセネガル相撲は代々有名選手の家系があるが文字を使う伝統のないセネガルでは歴史的な試合の内容は造形と口伝えで残る。スター選手のかつての名試合について語られるシーンのインサイダーな見せ方には思わず『エミタイ』を思い出した。セネガルならではの独特な伝統に対する愛着が滲み出るような味わいの濃さで惹き付ける熟成された作品。

横浜情報文化センターにてシネマアフリカ2008

 

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